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番?そんなもの信じられません  作者: はるくうきなこ


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29リリーシェ思い出す


 すべての力を注ぎ込んでユーリの身体がぐらりと傾いだ。

 ベッドからどさっと落ちてユーリは意識を失った。

 「ユーリ!しっかりしろ。おい、ユーリ!」

 「ユーリしっかりして…ジェスもしかしてリリーシェの呪いが移ってユーリまで仮死状態になったんじゃ?」

 「ばかな!」

 「だって、最初の呪いは解かれたわけじゃないわ!無理やり…」

 「ああ、そうだった」

 ふたりは慌てふためいてユーリにすがる。


 「うっ、うぅん…」

 リリーシェが声を漏らした。上掛が揺れてリリーシェの身体が動く。

 「リリーシェ?気づいたの?」

 セリーシアがリリーシェの様子を見る。

 リリーシェは薄っすらと目を開けていた。 

 「私…どうしてここに?」

 「あなたは『番もどき』って言う薬を盛られたの。アリーネがワインに仕込んでいたのよ。ウルムとあなたはふたりともその薬を飲んで番だって勘違いしてそれで呪いが発動して意識を失って…ああ、もう!」

 セリーシアは苛立たし気に癇癪を起す。

 「そのせいでユーリが…ユーリが死ぬかもしれないのよ」


 リリーシェはまだ朦朧とする身体をやっと起こす。まだ頭がぼぅとしている。

 床にはユーリが倒れていてジェスがその身体を抱きかかえているのが見えた。

 「呪いって?ユーリは大丈夫なんですか?」

 「いいからリリーシェは休んでろ。とにかくユーリを部屋に連れて行く。医者を呼べ!今すぐに!」

 ジェスがユーリを抱きかかえて出て行く。


 ふわりと香るユーリの匂いにリリーシェが反応する。

 「これは?番の匂い。待って!ユーリは私の番なんですか?」

 感じたこともない感覚。激しく惹きつけられるそのかぐわしい香り。

 (私の番。私の唯一。私の…)

 全身を歓喜が包み込む。さっきまで意識がなかったとは思えないほどの高揚感がリリーシェの身体を包み込む。

 心臓はバクバクと脈打ち近くにユーリがいるだけで何とも言えない充足感に襲われて…

 だが、そんなユーリは今にも死にそうになっている。

 「ああ、だが詳しい事は後にしてくれ、今はユーリの手当てが先だ」

 「ああ‥そんなやっと出会えた私の唯一なのに…お願いですユーリを助けて、私にできることはどんな事でもしますから」

 リリーシェは今にもユーリを奪ってどこかに行ってしまいそうなほどで思わずセリーシアが間に入る。

 「ええ、もちろんリリーシェの気持ちは痛いほどわかるわ。でも、今はあなたもまだ薬が切れたわけじゃない。ウルムの事もあるしユーリには手当てが必要なの。だからもう少し休んでちょうだい。いいわね。ユーリはジェスに任せるの」

 セリーシアは医者に頼んでリリーシェに鎮静剤を投与させた。

 リリーシェは少し落ち着いてやっとベッドに横になった。

 ユーリは別室に運ばれて手当てを受けるが、さっきのリリーシェと同じような仮死状態のようだと医者が話して様子を見るしかないと言った。

 ジェスもセリーシアもただ頷く事しか出来なかった。

 ウルムは強力な眠り薬を与えられぐっすり眠っていた。



 リリーシェは簡単に呪いの話を聞かされた。ユーリとは4年前に知り合っていた事。番だってわかってふたりが思い合っていた事も聞いた。そして呪いが発動したことも。

 リリーシェはひとりベッドに横たわって大きなため息をついた。

 ユーリと出会ってからの記憶が洪水のように押し寄せていた。

 (最初はリスロート帝国の学園に入ってすぐだったわね。ユーリが私の番だって言った時は驚いた。でも私はそんな事ちっともわからなくて信じなかった。

 そしたらユーリが学園に転入してきて同じクラスに入って来た時がさすがに驚いたわ。

 私はピュアリータ国の推薦入学生だったけど、身なりは質素だったし、自由になるお金も限られていたからすごく倹約していた。リスロート帝国も学園に通えるのはかなりのお金持ちや官僚などのエリートの子供たちらしくて、私ははっきり言って浮いていたらしい。

 それで物を隠されたり、着ている服をけなされたり、一番嫌だったのはランチの時間。

 私は学園の寮に入っていたので朝食と夕食は寮で食べることが出来たのだが昼食はどうしても学生食堂で食べるかランチを持参するしかなくて、いつも固いパン一つとかの昼食になって、それを食べるのが恥ずかしくて学園の隅っこにある憩いの森って言うところなんかで食べることにしてたんだけど、どこからかそれが知られてからかいの対象になった。

 でも、ユーリがクラスに入ってからはいつもユーリが一緒に昼食を食べてくれて‥おまけに私の分まで持って来てくれるようになって、それで仲良くなってユーリがどんなに優しくて頼りになるかって少しずつ知って行った。

 あっ!ダチミューって…そうだった。ユーリと一緒に見に行ったんだ。

 あの晩餐会の時ユーリってば気づいてたなら教えてくれればよかったのに…ああ、そうか。ユーリも記憶を失っていたんだ。

 それに確か私がユーリに何かしたんじゃないかって酷い取り調べを受けた。でもその後…あっ!それで私もユーリとの事全て忘れさせられた。

 ああ~何てこと。全部思い出したわ。ユーリあなたがどんなに大切な人かって事を。私の命よりも大切な人。だからユーリあなたも私を助けてくれたんでしょう?今度は私があなたを助けるから、待ってて必ずあなたを助けて見せるから)


 ヴェネリオ家の呪いならヴェネリオ家に行けば何かわかるかもしれない。

 リリーシェは母から祖母のメリーナがヴェネリオの血筋を引いていると聞いた事があった。祖母とは死に別れているので面識はないがきっと親戚がいるに違いない。

 どうにかしてユーリの呪いを解かなきゃ!リリーシェはひとりそう心に誓った。






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