27呪い返しでは?
ジェスたちはすぐにリリーシェの所に向かう。
リリーシェは意識がなく仮死に近い状態にあった。
「先生どういうことです?キャリス家とヴェネリオ家の呪いの事は知ってますよね?ウルムとリリーシェに薬が盛られたらしいんです。でも、2人は番じゃないはずで…」
ジェスは頭を掻きむしる。
ユーリはリリーシェの手をしっかり握ったままそばに付き添って父の言う事に耳を傾けている。
「まあ、詳しいことはわかりませんが…もしかして呪い返しのようなものではないかと…」
「「呪い返し?」」
「なんだそれは?」
「はい、そもそも呪いの発動は番同士であろうとなかろうとあるのではないでしょうか。ウルム様とリリーシェ様。お互いキャリス家とヴェネリオ家の子孫です。そしてリリーシェ様に取ったら呪いの発動はこれが二度目になるわけで、それだけキャリス家の者と離れがたいのだと、とらえられ今度はヴェネリオ家の子孫に呪いが変わったのではないかと」
「どういうことだ?」
「まあ、これは一つの仮説ですが…最初にキャリス家の者が呪いにあいますが助かったわけで。お互いに呪いを乗り越えてもまだなお離れられないほどの想いがあるとなれば、今度はその片割れヴェネリオ家の者が呪いを受けたとすればどうなると思います?」
「ああ、それこそキャリス側の想い人は狂うほど苦しむだろうな…そうか!それでリリーシェが?」
医師はうなずく。
「どうして?どうしてリリーシェがこんな目に合わなきゃならないんです?彼女は被害者でしょう?」
ユーリが我慢できないとばかりに声を震わせる。
そこにアリーネを取り調べていた護衛の男が入って来る。
「失礼します。取り急ぎアリーネが白状したことを報告します」
「ああ、話してくれ」ジェスが応える。
「はい、彼女はエド・ビレリアンと通じてましてアンナと言うものにリリーシェの見張りと殺害の手助けを頼んでいたようで、ヴァイアナに着いたら殺害する予定だったようです。ですがリリーシェに思わぬ才能があると分かってビレリアン工房の者は連れ去って宝石彫刻師として使おうと思ったらしく殺害に失敗。それで『番もどき』を使ってリオン殿下を番と誤認させる計画だったようです」
「やっぱりな。でも、ウルムがああなったのはなぜだ?」
「アリーネ自身がウルム様かユーリ様の番になるつもりだったようで」
「だが、しょせん薬は一時的なものだろう?その後はどうするつもりだったんだ?」
「番と誤認している間に関係を持ってしまえば何とかなると思っていたようです」
「っクソ!あの女最初から胡散臭いと思ってたんだ」ユーリが履き捨てるように口をはさんだ。
「ああ、まったく。だがそうなるとリオン殿下は?」
「はい、取り調べには同席されると言われてすべてを聞かれました。アリーネが『番騙し』を使ってリオン殿下を騙していたことも白状しましたので婚約は破棄されるそうです」
「だろうな。アリーネはウルム、リリーシェ殺害未遂で裁判を受けることになるだろう。牢に連れて行け。リオン殿下は部屋に通しておけ」
「はい、ですがリオン殿下がウルム様とリリーシェ様の容体を気にしておられますが」
「今は何も言うな。まだ昏睡状態だ。薬が切れるまではどうにも出来んと伝えろ!」
「薬は24時間で効果がなくなるそうです。ウルム様にはもうしばらくのご辛抱かと」
「そうか。これでウルムの方は何とかなりそうだな。ご苦労」
護衛は敬礼をすると部屋を出て行った。
「ユーリ。すぐにヴェネリオ家のレックスの呪いについて解決方法がないか調べてくれ。私もヴェネリオ家の関係者に当たって見る」
「はい、すぐに!」
ユーリの身体からは抑えられない竜力が沸き上がり、彼の身体は青白い炎に包まれるとユーリはその場にうずくまった。
「ユーリしっかいしろ!いいからパワーを制御しろ。聞こえるかユーリ!」




