26ユーリ真実を知る
ジェスはいたって平然としている。
「父上。どういうことです?」
ユーリだけが不思議な顔でみんなを見る。
「ユーリ、お前は何も思い出さないのか?」
「何をです?」
「こうなっては仕方がないな。リリーシェはお前の番だ」
「嘘ですね。それなら俺にだってすぐにわかるはずです。いくら父上だってひどい嘘ですよ」
ユーリは口角を上げてジェスを睨む。
ジェスはそんなユーリをしかめっ面で見つめる。
「ああ、そうだな。だが、4年前リリーシェが現れた途端お前はすぐに気づいた」
「また、冗談を」
「冗談で言えるか?リリーシェはヴェネリオ家の血が流れている。ユーリお前も聞いた事があるだろう。キャリス家とヴェネリオ家の呪いの事を、お前たちにはあの呪いが発動したんだ。いいかユーリ。お前は死ぬところだったんだぞ。何とか一命をとりとめたが…」
ジェスはあの時の事を思い出してぐっと唇を噛んだ。
だが、ユーリはいたって平気な顔で言う。
「でも、記憶にありません」
「だろうな…」
ジェスの顔が歪む。
「ああ、ユーリ。最後の手段として『番殺し』を使った。リリーシェの事を忘れさせたんだ。お前には4年前の記憶がないだろう。あれはそのせいだ。リリーシェと過ごした期間の記憶が消えたんだ」
今度はユーリの顔が歪んで顔色が青くなる。
「じゃあ、本当にリリーシェが俺の番?でも、『番殺し』を飲んだならもう二度と番を認識できないという事ですか?」
「さあ、それはわからん。普通は番が亡くなって狂ってしまう竜人の為に作られた薬だ。ユーリお前の番は生きている。だから俺達も気をつけてはいたんだが…アリーネが余計なことをしたみたいだ。きっと番と誤認させる薬でも使ったんだろう。まあ、それなら一時的な物だろうが…今はふたりを離して監視するしかないだろう」
「ええ、そうですね。でも、リリーシェが俺の番だったなんて…俺は…だからあんなにリリーシェが気になったのかも知れません。まだ、俺の中の本能がくすぶっているからでしょか?」
その声は酷く弱く小さかった。
(リリーシェが俺の番。番を望まない竜人はいない。唯一の番。求めてやまない番を認識出来ないなんて…これほど不幸なことがあるのだろうか)
ユーリはがっくり肩を落とした。
そこに護衛が飛び込んで来た。
「大変です。リリーシェ様の意識がなくなりました」
「リリーシェが?どういうことだ。アリーネが何かしたのか?いや、まさか呪いが?」
「いいからすぐに医者を呼べ」
ジェスが大声で指示を飛ばす。




