25ふたりが番のはずがない
「リリーシェ。俺の最愛。君が番だったなんてどうして今まで俺は気づけなかったんだろう?リリーシェもう二度と離さないからな」
ウルムの紺碧色の瞳は眦が下がり今や溶けかかったかき氷のようにとろっとろっになっている。
「ウルム様、それは私のセリフです。ああ~ウルム様、私の唯一。こんなに愛しいなんて、私の胸はウルム様でいっぱいです。私の番。ウルム様ぁぁぁぁ」
さっきまでのリリーシェはどこに行ったというほどリリーシェは我を忘れウルムに縋りつき上目遣いで彼を見つめている。
その背中をぎゅっと抱き込みウルムはその場でリリーシェに口づけた。
「やめろ!ウルム!おい、どうなってるんだ?誰かふたりを引き離せ」
狂ったように声を荒げるユーリ。顔は怒りで真っ赤になりウルムとリリーシェを引き離そうと食べ物の乗ったテーブルの上に上がって反対側に飛び込んで来る。
そしてふたりの身体の間に割って入りぐっと引きはがす。
「おい、ウルムしっかりしろ!?」
「ユーリ邪魔するな。リリーシェは俺の番だ。そこをどけ!」
「まさか?ほんとに番なのか?」
ユーリはウルムのあまりの変わりようにひょっとしたらと思い始めるが。
そんなふたりに違和感を覚えたのは言うまでもないそこにいたジェスたちだ。
ほんとに番なのはユーリとリリーシェだと知っている。
竜人の嗅覚は鋭い。ジェスがすぐに異臭に気づいてあちこち嗅ぎまわる。
「なんだ?…おかしいぞ。…ははん、原因はこのワインか?誰かがワインに薬を盛ったらしい。おい、ここから誰も出すな!」
そう声を荒げたのはジェスだ。
「そんな事誰が?私じゃありませんよ」
アリーネがばかな事を言う。
「お前か?おい、こいつを捕まえろ。いいか、どんな薬を使ったかすぐに吐かせろ。連れて行け!」
アリーネはすぐに疑いを掛けられ護衛に別室に連れ出される。
「アリーネはそんな事をするはずがない。何かの間違いだ。おい、失礼だぞ。俺達は客人だろう?」
リオン殿下も慌ててアリーネについて部屋を出て行く。
目の前では、間に入ったユーリが放り出されウルムとリリーシェがひしと抱き合いうっとり見つめ合っている真っ最中だが…
「誰か、ウルムを連れて行け。何なら拘束して部屋から出られないようにしておけ!リリーシェも部屋に連れて行って部屋から出すな!」
「やめろ!この!リリーシェ。放したくない。頼む俺の番なんだ。お願いだ。リリーシェと離さないでくれ。頼む、父さんどうして?おい、放せ。くそ!止めろ!おい……」
ウルムは無理やりリリーシェと離されて連れて行かれる。
「あっ、いや!ウルム様助けて~いやだ。もぉ、放してよ~」
リリーシェも部屋に無理やり連れて行かれる。




