24策略
まずは竜帝が乾杯をして晩さん会は順調に進んだ。
和やかに出される食事をそれぞれが堪能していたが何しろ会話がない。
ジェスとセリーシアだけは互いに目くばせして楽しそうだ。
リリーシェは緊張とドレスのせいで喉の奥に食べ物を流し込んでいるだけのような食事で気分が悪くなりそうだった。
ふいにユーリ様がいきなり尋ねて来る。
「これはリスロートでは有名な料理なんだ。何だと思うリリーシェ?」
「これですか?」
見た目はハンバーグのような肉をミンチ状にして焼いたみたいだが…
「ミートローフのようなものでしょうか?」
「まあ、見た目はな。何の肉?」
「はぁ、羊とか」
「ぶぶー。残念。これはダチミューと言う飛べない鳥の肉だ」
「ダチミュー?鳥なのに飛べないんですか?」
「ああ、すごく体が大きいんだ。それで飛べないんだろうな」
「すごく面白い鳥ですね。見てみたいですね」
「今度行ってみるか?」
「その鳥を見に?」
「ああ、ヴァイアナには植物園や動物園があってダチミューもいる」
「動物園ですか?うわ、すごいです」
(前世の頃の動物園を想像する。でも、ここは異世界一体どんな動物がいるのだろう)
「あの、リリーシェ、それはそうと今日、指輪を買いに行ったら君がデザインしたという指輪を見せてもらった。本当にリリーシェがデザインしたのか?」
リオン殿下が気まずそうに口をはさむ。
アリーネが指を出して指輪を見せた。
「ああ、ええ、そうなんです。私なんかまだまだなのに皆さんに喜んでいただいてうれしい事です」
「ピュアリータにいた頃にはそんなことしてなかったじゃないか」
「はい、私には仕事がたくさんありましたから…」
「今後はそう言うことも考えるつもりだ。だから」
「リオン殿下、今はお食事中ですよ」アリーネがそれ以上は無粋だと止める。
「ああ、すまない。何しろ気がせいて…いいんだ。食事を続けてくれ」
それからみんなはしばらく静かに食事をつけた。
「きゃっ!」
いきなり静寂が破られた。
アリーネがワインのグラスを倒してしまったらしい。
「まあ、大変。ドレスは?」
リリーシェも慌ててこぼれたワインにナプキンを当てる。
アリーネは何とかドレスに被害はなかったが自分の侍女に命じてワインを持って来させた。
「お騒がせして申し訳ありません。お詫びに新しいワインをいかがです?」
「ああ、いいね。アリーネみなさんにワインを」
リオンがせっかくだからとアリーネにワインを注いでまわるように言う。
アリーネはワインのボトルを持つと竜帝のグラスからワインを注ぎ始める。
そうやってみんなのグラスにワインを注いで回った。
「では、乾杯」
アリーネ自らワインのグラスを持って乾杯をした。
すぐにリリーシェとウルムの様子がおかしくなった。
アリーネが仕込んだ『番もどき』が効いてきたらしい。この薬は即効性があり酔ったような感覚になる。
「リリーシェ大丈夫?酔ったんじゃない?」
アリーネがわざとらしく声をかける。
「ええ、そうかも。ドレスで締め付けてるからかもしれないわ。陛下、皆さんすみませんが先に部屋に戻ります」
リリーシェは断りを入れて席を立った。
「リオン殿下。リリーシェを送って差し上げたらどうかしら?」アリーネが言う。
リオンもリリーシェを説得するチャンスと席を立つ。
「ああ、そうだな。リリーシェ大丈夫か」
リオンが席を立って回り込もうとしたその時。
「リリーシェは僕が送ろう。さあ、リリーシェ僕に縋っていいから」
リオンよりいち早くリリーシェに手を差し伸ばしたものがいた。
「ウルム様ありがとうございます」
リリーシェはためらいもなくウルムの手を取っておまけにふらついてそのままウルムに抱きかかえてもらう格好になった。
その瞬間『番もどき』が発動した。
「リリーシェ」
「ウルム様」
見つめ合うふたりの瞳は見開かれたと思ったら蕩けるような甘さを出していた。
「もう、どうしてリリーシェが。それにあれはユーリ様じゃないの?!」
アリーネは悔しそうに唇を噛んだ。
(まあ、私に取ったらどちらでも構わないんだけど…それにしてもどうしてあのふたりなのよ!)




