22アリーネを計画変更する
リオンを寝かせたままアリーネは店主のドニーと一緒に店の応接室に移動する。
ドニーは中年ででっぷり太っている。少し偉そうな態度でアリーネを部屋に通す。
そこには用心棒らしいいかつい顔をした目つきの悪い男がふたりいた。
アリーネは幼いころから母が連れて来る男達を見て来た。今ここにいる柄の悪そうな破落戸もたくさん見知っている。
だからそんなに怖いとさえ思わない。
それに母はいつもいいように男を操りあしらっていた。色気で、薬でとだからアリーネは男たちをあしらう自信がある程度あったのだ。
ドニーは椅子にふんぞり返ると聞いた。
「それでお前はナージャ様のなんなんだ?」
「私はナージャの娘のアリーネよ。よろしくね。ところでここにはエドおじさまはいらっしゃらないの?」
エドと親し気に呼んだのは彼と故意にしていると思わせるため。
「か、会長がこんな所に来るはずがないだろう。それで用はなんだ?」
ドニーの顔色が変わる。
アリーネはドニーの座った前の机にお尻を乗せる。
「ええ、さっきの話で頼んでいた仕事がどうやらうまくいかなかったみたいね。どういう事?」
ちらっとドニーに流し目を送る。
ドニーはちらりをアリーネを見るとすぐに視線を反らし説明を始めた。
「どういう事って…昨日あの女をおびき出したまでは良かった。アンナがおびき出してリリーシェが来た。だが、あいつおかしな力で俺達が近付けなくしやがっておまけに竜人が一緒に来ていて…あんなのがいたんじゃリリーシェには近づけない。それにあの竜人が宮殿に連れて行ったらしいしな」
アリーネは尻を乗せていた机から立ち上がるとドニーに向かって指さす。
「まったく、アンナもあなた達も役に立たないわね。そんな事がエドに知れたらどうする気?もういいわ、リリーシェにそんな才能があるなら考えが変わったわ。リリーシェはピュアリータ国に帰ってもらう事にするわ。頼んでいた殺しはもういいわ。その代り私がこの国に残るから」
「アリーネさん。あんたにも何か力があるのかい?」
ドニーは瞳を輝かせる。
「あるわけないじゃない。いいからドニー、薬を調達して『番もどき』って薬があるはずよ。それを二人分、いいから急いでリオンが目を覚ます前に欲しいから、急いで!」
アリーネは手をパンと打って急かす。
『番もどき』はアリーネが今リオンに飲ませている『番騙し』の数倍威力のある番と勘違いさせる薬だ。
飲んだ相手が最初に触れた相手を自分の番だと思ってしまうのだが、強力な薬だけに効き目があるのは24時間。それ以上は飲んだ本人が正気に戻ってしまう。
ただ予期せぬ副作用があるらしい薬なのであまり使う人間はいないらしいのだが…
リリーシェにその薬を飲ませたら薬の効いている間にリオンと一緒にピュアリータ国に帰らせなければならない。
後はどうなろうとアリーネの知った事ではない。
それにもう一つの薬はユーリと言う竜人に飲ませるつもりだ。
アリーネはユーリを見た途端この男が欲しいと思ったのだ。
考えてみればリスロート帝国はすばらしい大国でピュアリータ国など比べ物にならない。
ユーリは竜帝の孫だと聞いたし、あの麗しい容姿はそう滅多にお前にかかれるものではない。
そんな男が自分にはふさわしいはずとアリーネは思ったのだ。
「何を偉そうに、そんなに欲しけりゃ自分で何とかしな!」
さすがのドニーも怒って怒鳴ると椅子から立ち上がりアリーネに近づく。
アリーネはうっとりしそうな妄想を断ち切られて切れる。
「あらいいの?リリーシェを捕まえる事に失敗したくせに…エドおじさんに言いつけるわよ。それより私が計画を変えたって思わせた方がいいんじゃない?」
アリーネは自信たっぷりにドニーに言い寄り睨みつけてやる。
ドニーは後ずさりして口ごもる。
「わ、わかった。薬はすぐに何とかする」
「わかればいいのよ。リリーシェの事はこっちで何とかするから、あとでエドおじさんにアリーネがもういいって言ってたって伝えてくれればいいから」
「会長に何か言われたらあんた責任は問ってくれよ。俺は知らないからな」
「ええ、任せて」
アリーネはそう言うとエドが急いで破落戸の男達に指示を飛ばす。
「おい、お前ら『番もどき』を手に入れて来い!」
「へぇ、すぐに」
こうやってアリーネはリオンがぐっすり寝ている間に『番もどき』を手に入れた。




