20ビレリアン工房に向かう
執務室を出たリオンとアリーネは早速馬車で散策に出かけることにした。
もちろん護衛も一緒にいる。
「リオン様、私、リスロートに来たらエイダールシュトールに行ってみたいと思ってたんです」
「なんだそれは?」
「知らないんですか?もぉ!リスロートのエイダールシュトールって言ったら貴金属の工房が通りにずらっとある場所ですよ。ネックレスや髪飾りなんてピュアには絶対ないものがたくさんあるはずなんですよぉ~」
「なんだアリーネ。それはおねだりか?」
「だってぇ~」
アリーネは馬車の中でリオンに抱きつく。
「わかったよ。アリーネが気に入った物を買ってやる」
「きゃぁリオン様。ありがとう。大好き~」もちろんリオンの唇にキスをする。
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やって来たのはもちろんビレリアン商会がやっている工房だ。
(もう、計画が狂ってるからどうなってるのか確かめなきゃならなくなったじゃない。ここにくればきっとどうなってるかわかるはずだし、ついでにリオン殿下におねだりもしてと…)
アリーネはビレリアン工房の前でひとり今後の段取りを脳内で考える。
「リオン様こっちです」
アリーネは馬車から下りると待ちきれないとばかりにはしゃぐ。
「アリーネ、そんなにはしゃぐな。危ないだろう。ったく…」
リオンがアリーネの手を取って彼女を抱き留める。
「うふぅ、だってぇ。優しいんですねリオン様」
アリーネは彼の腕に肌を擦り合わせる。
(まったく、いらいらするのよ。私一人ならすぐにでも情報を問いただして今後の指示を出すことだって出来るのに…ああ~番って勘違いさせてるから仕方ないけど。それよりリリーシェお姉さまはぴんぴんしてたじゃない。一体どうなってるのよ。お母様の話ではビレリアン商会の手の者がリリーシェを殺してるはずだと思ってたのに…すぐにどうなってるのか確かめなきゃ。ってその前にリオンをどう誤魔化そうか…あっ、しばらく眠らせればいいわね)
ふたりはビレリアン工房の中に入って行く。
リオンは店の販売員に命令する。
「すまないが一番最高級の品物を見せてくれないか?」
「申し訳ありませんがお客様は、この店は初めてのお方だと存じます。失礼ですがどちらの?」
「私はピュアリータ国の王太子。リオンだ」
リオンは腕にはめたピュアリータ国の紋章の入ったそれを見せる。
腕輪には翼を広げた竜の紋章が輝く。先祖が竜人の血を引くピュアリータ国ならではの紋章だ。
店員が奥の店主らしい人を呼びそれを確認する。
「これは失礼しました。リオン殿下どうぞ奥の部屋に」
「ああ、さあ、アリーネ中に」
リオンは満足そうに微笑みアリーネに手を差し出す。
「殿下さすがですわ。私に最高級の宝石を買って下さるおつもりなんですか?」
「もちろんだ。お前たちは店の外で待機していろ!」
リオンは護衛騎士たちにそう命令する。
そして奥の部屋に通される。すぐにアリーネが声をかける。
「すみません。少し喉が渇きましたの、何か飲み物をいただけます?」
「ただいま」
アリーネが店員に走り寄って耳元で話をする。
「後でナージャの知り合いが店主に話があるって伝えて」
店員は声を出さずに頷く。
「アリーネどうした?」
リオンが尋ねる。
「やだぁ殿下。私、殿下とお揃いのものを用意してもらえないかと思ってお願いしてみたんです」
アリーネははにかんでリオンにすり寄る。
「アリーネとお揃いか?いいな。アリーネとは瞳の色も一緒だしエメラルドの指輪なんかいいかもな」
「ああ、それいいですぅ。リオン殿下優しいぃ。大好きですぅ」
リオンの鼻の下が伸びた気がする。




