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真夏のシャングリラ  作者: マサタカ
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池袋平日

なんの特別な意味もない金曜日の14時、池袋の大通りを歩いていて思う。道ゆく人に手を振っているアイドルや芸人の卵たちは、誰に対して手を振っているのだろう。平日の昼間っからステージに呼び込めるほど世間は暇じゃないだろうし、多くの社会人は仕事でそれどころじゃあるまい。彼らに注目されてしまっては困る。私が彼らの意中の人物だと世間にバレてしまうではないか。平日の落伍者とは実に良く言ったものだ。金になりそうなモノを持って、今日もこの街に来た。


物品買取センターには行列ができていた。平日の昼間っから割りに合わぬ時間をかけてまで、不要になったものを売って現金を手にしたい者たちか。であれば私は彼らと同じ理由で、人生の貴重な時間を行列の最後尾から消費している。特別なスキルもなければ、働く意欲もない、何らかの事情があるから、いまこの世界に、確かにこの行列が作られている。


何もせずただ時間を消費すれば、必ず私の順番が来る。そうすれば、家から持ってきたモノにひとつずつ値段がつけられていく。清算が終われば少しだけ財布が太る。寝床に帰るまでの交通費と、明日の生活費くらいはこれで賄える。それでいて自室にある不要なモノを片付けられるのだから、こんなにも割りの良い作業は無いと思う。行列をつくる人々に対して、世間の目は少しだけ厳しい。道端に作られた雑な行列を通り過ぎるスーツ姿の人々は、稀だ有な眼差しをこちらに向ける。何年も整備されてない歩道の白線が彼らと私たちの世界を隔てている。彼らはこちらの世界を知らない。私もまた、白線の外側に広がる彼らの世界を知らない。けれど、彼らがこの世界を回しているということは良くわかる。こんな時間の使い方をする私たちを彼らは理解できないのだろう。

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