炎帝、水帝、風帝、闇帝、光帝をワンパンはテンプレです
リリーは表示された結果を見て、ますます自身の立てた推論に確信を深める様子だった。リリーは感極まって俺に抱きついた。
「やっぱり、将暉さんは小説の世界から私を守るために現れたナイトなのですね!」
俺は660年の修行帰りだった。今までの修行期間の中で最長の660年と言う数字はもはやどちらの世界が俺の転生した世界なのか分からなくなるほどだった。意識の中の深い混乱から無意識に閉じ込められた俺の自我を救い出すのは常にリリーの歓声だった。
俺は死ぬ気の背伸びでリリーに応える。
「そうだ。リリー。俺が、いや俺だけが君のナイトだ」
俺は抱きついてきたリリーとその甘い匂いに頭をくらくらさせながら、夢現にそう言った。青い髪色のギルドマスターは鑑定石に表示されている結果を見て、目を見開いた。
「魔力量、四十京!?基本五属性に加えて、創造、重力、破壊、毒、空間ですって!?」
ギルドマスターは美しいその顔を歪めながら俺に告げる。
「貴方ほどの実力者が今まで無名だったとは考えにくいわ…おそらく先日滅びたフルール王国の関係者ね」
ギルドマスターはリリーの全身を見た。リリーは内心、ギルドマスターに対する警戒のレベルを上げる。俺はリリーを隠すかのように前に出た。
「それで俺らがもしフルール王国の関係者として、ギルドは俺らを受け入れるのか」
「ええ、もちろんよ。ここは自由で中立の国、スメリ共和国よ。たとえどんな身分のものでも歓迎するわ。ただしマサキ君、貴方にはテストを受けてもらう。地下室に来なさい」
ギルドマスターはどこか挑発的な笑みを浮かべて、水色のマントを翻し、部屋を出た。
俺とリリーは目を見合わせる。リリーが興奮を抑えきれない様子で俺に詰め寄った。
「これは、炎帝、水帝、風帝、闇帝、光帝が地下室で待ってるパターンですよね!」
俺は頷いた。
「ギルドマスターは相当な実力者だった。同レベルの帝たちが束になって襲いかかってくるとなると厳しい戦いになるだろう」
「今回は小指だけで勝つのは厳しいですか?」
(なんでリリーは小指で勝つことに異常なこだわりがあるんだ?)
俺はあえて暗い顔してリリーに向き合う。
「ああ、厳しいだろう」
リリーの顔が曇る。俺が言葉を繋いだ。
「リリーの応援なしではな」
リリーの顔が一気に晴れ渡った。俺がリリーに手を差し伸べる。リリーは笑顔でその手を取った。二人は手を繋いで階段を降りる。
ギルドの地下室は上にあるギルドの建物よりも数倍の広さがあった。その空間の真ん中に色とりどりのマントを羽織った五人の帝達がいた。
燃えるような赤い色のマントを羽織った男が声を張り上げる。
「マサキ!今からお前のXランク昇格試験を行う!担うのはSSSランク炎帝!」
ギルドマスターが手を上げた。
「SSSランク水帝、SSSランク風帝、SSSランク闇帝、SSSランク光帝、スメリ共和国最高戦力で貴方に挑むわ!」
俺はいつの間にか五指につけていた指輪を全て外した。俺の抑えられていた魔力量が放たれる。五帝は跳ね上がった俺の魔力量に気圧される。
リリーが目を輝かせて、俺が外した指輪を分析した。
「あれは将暉さんが創造魔法で作った魔力抑圧の指輪ね!いきなり全部取るなんて。油断は全くしてないようだわ…」
炎帝がスタートの合図も待たずに人差し指を俺に向けた。
「ピストルファイア!」
俺は防御の姿勢すら取らず、五帝に躙り寄る。超スピードで放たれた炎の球は俺に命中したかと思いきや、俺に当たる直前に消えてしまった。闇帝がその様子を見て空間魔法の痕跡を感じ取る。
炎帝は構わず魔法を連打する。
「マシンガンファイア!」
俺は煌めく炎をうざそうに手で払う。風帝が次に仕掛けた。
「龍谷の峡谷風」
激しい風が俺に吹き荒ぶが俺に俺に効いている様子は無い。淡々と五帝に近づいていく。それを嫌い水帝が津波を放った。
「ウォーターウェーブ」
地下室に大量の水が流れ込む。しかし俺の側だけ不自然に水が消えていく。
闇帝が確信を得たかのように言う。
「あいつ…空間魔法で…攻撃を吸収してる」
光帝はその身に光を溜めている。
「光帝…僕の闇で…空間魔法をレジストする…その隙に最大火力を」
光帝は苦しそうに頷きながら答える。
「初めっからそのつもりだよ。ラヴィ!」
リリーが固唾を飲み込む。俺はあることを考えていた。
(リリーはきっと今、最後の仲間も殺されたばかりで、故郷もなくし、精神的にかなり危うい状態にある)
(そんなリリーを本当に守りたいならギリギリの戦いなんてしてたらダメだ。俺がリリーの絶対的な庇護者になるんだ!)
炎、水、風、その全てを体に纏った俺の空間魔法で防ぐ。俺の視界は混濁したものとなった。それでも俺の歩みは止まらない。炎帝、水帝、風帝が懸命に魔法を放つ。それは一見無駄な行動に見えて、俺から闇帝と光帝を隠すための行動だった。
闇帝が腕を勢いよく下ろした。
「ダークイベージョン!」
俺の視界が闇に包まれた。それと同時に空間魔法が解除されていく。光帝が膨大な魔力をその身に秘めて俺の前に躍り出た。
「デスティニーフラッシュ!!!!」
俺は容赦ない光線に身を晒された。極太光線は俺の体を包み込みその背後の壁に大穴を開ける。リリーが息を呑んだ。光線が途切れ始めたその時にはそこに俺の姿はなかった。
「終わりだ」
そう告げたのは最大出力を放った光帝ーーではなくその背後から光帝をデコピンした俺だった。俺は空間魔法を使って光帝の背後に転移していたのだ。
「なっ!馬鹿な!空間魔法で転移するなんて聞いた事がない!」
俺は帝達から集中砲火を喰らっていた数秒間の間、この展開を予想して空間魔法で転移する術を編み出していたのだ。転移は膨大な魔力を使う上に短距離しか飛べないので、そう易々と使えないが、リリーを驚かすには一番良いだろうと判断した。
数秒間、いや数十年間修行した俺にとって660年の修行に比べたらこの程度の修行は楽勝だったと思っていた。リリーは、空間魔法を使ったが、本当に小指一本で相手をのしてしまった俺に万雷の拍手を送っていた。
俺は満足げな顔でそれを受け取る。五帝たちは一斉にへたり込んだ。唯一少し余裕のあった闇帝が俺に告げる。
「君は…今日から…Xランクだ…この国を滅ぼすなら…滅ぼせばいいし…居たいなら…居ればいい」
リリーが慎ましい胸を張る。
「将暉様にとっては当然の結果です!」
そんな様子のリリーに俺は安堵し、リリーの手を取った。
「リリー、クエストを受けに行こう。今のままじゃ一文なしだ」
俺たちが階段を登ると、ざわつく人の波に俺たちは襲われた。
「Xランク昇格試験が今行われてるらしいぞ!」
「XランクってSSS達の更に上って事だよな…どんな化け物なんだ」
俺たちはそんな様子のギルドの合間を縫って、クエストボードに向かった。リリーが二階を担当して俺が一階のクエストボードを担当した。
俺がそこそこ金になりそうなAランクの依頼を持って、二階に上がるとリリーが背伸びしてクエストボードの上の方にある依頼書を取ろうとしていた。
そんな姿を愛らしく思いながら俺がその依頼書を取ってやると、リリーは笑顔でお礼を言った。チラッとその依頼書に目を落とすと、それはXXXランクのクエストだった。
読んでくださりありがとうございます。
「面白い!」と少しでも思ってくれたら↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
ブックマークもお願いします!
よろしくお願いします!