表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/3

ギルドで絡まれるのと鑑定石破壊はテンプレです

 街に辿り着いた。門番が告げる。


「お前ら奇妙な組み合わせだな。何者だ」


「私はこの町のパール子爵との知り合いですわ。野党に襲われて、生き残ったのがこの者と私だけだったの」


 リリーは胸元の宝石が散りばめられたネックレスをチラリと見せながら言う。


「それはそれは貴い方。よくぞご無事で、よろしければパール子爵とお繋ぎしますが」


「いえ、それは大丈夫ですわ」


「え?襲われたのですよね?」


 俺がフォローに入る。


「このお方にボロボロの姿のまま、子爵に会わせるおつもりか?」


「そ、それはそれは失礼しました。どうぞお入りください」


 門番の横を通りすぎる時、リリーがパチリとウインクをした。俺は胸を貫かれる。


(かっ、可愛い)


「パ、パール子爵と知り合いっていうのは...」


「もちろん、嘘です。なんなら敵国の子爵なので、見つかってしまったら打首になってしまうかも」


 リリーが目を伏せる。俺が声を張り上げる。


「り、リリーは俺が守る!」


「うふ、それは嬉しいわ」


 リリーはにっこりと笑った。俺は慌てて目をそらした。そんな俺をリリーは余裕のある態度で受け流す。


 リリーは一直線にギルドを目指した。ギルド【妖精と勇士達】に辿り着くと、リリーは目を輝かせていった。


「王城の本で見たのと一緒です!さぁ入りましょう!」


リリーが俺の背中を押して、ギルドの扉を開ける。ギィと音を立てて中に入ると、ギルドメンバーの視線が俺とリリーに集まる。


「兄ちゃん、女連れでギルドに来るとは羨ましいね」


 俺に向けてヤジが飛ぶ。どっと笑い声が上がる。リリーがあからさまにムッとした。ヤジを飛ばしているギルドメンバーが俺からリリーに目の焦点を合わせるとその美貌に気づいた。筋骨隆々の男がテーブルを蹴飛ばし俺の前に立ちはだかる。


「おい、嬢ちゃん。この年で一目惚れしちまったよ。こんなガキ捨てて、俺と共に来ないか?」


「残念ながら、あなたのような教養のなさそうな男は将暉様の魅力の百分の一にも勝りません」


 リリーが凛とした態度でそう告げると、リリーは俺の服の袖を掴み思い出したかのように言い放った。


「あっ!将暉様、絡まれたからと言って、小指一本でこの男を倒したらいけませんよ!彼にもプライドがありますから」


「へぇ?一体誰が俺を小指一本で倒すって?」


 男は青筋を立てて、指をポキポキと鳴らす。


(ええ?武術は極めても、小指一本で大の男を倒すには小指で目を抉るくらいしかないぞ。でもそんなことしたらドン引きされるし...)


 俺はリリーの期待に満ち溢れた眼差しから思わず目を逸らした。リリーがその様子を見て下を向きながら言う。


「そうですよね…いくらなんでも小指は無理ーー「ちょっと待った!」」


 俺は意を決してリリーの言葉を遮った。


「なんだよ?怖気ついたか?」


 筋骨隆々の男はニタニタと下品な笑顔を浮かべて俺を挑発した。彼の頭の中では既に俺を倒しリリーをどうやって手篭めにするかを考えているようだ。


 俺が言った。


「リリーの顔が疲れている。その粗末な椅子でいいから彼女を休ませてくれ」


 椅子を指差して、一瞬衆目の視線から俺が外れる。その瞬間に【百万倍精神と時の部屋】に俺は入った。0.1秒後俺は再びギルドに訪れた。瞬きの間に消えて現れたので、誰も俺が点滅したことに気がつかなかった。


 リリーが俺の申し出に喜んで、椅子に座った。


「さて、かかってきな」


「ミンチにしてやるよ!」


 そう言って殴りかかってきた男のパンチを俺は小指一本で受け止めた。


「なっ!なに!?」


 男は連続でパンチを繰り出すが、俺はそれを全て小指で抑える。


「その程度か...」


 俺はパンチを避けて男に肉薄すると、デコピンで男の額を打った。


バッコォーーーン!


 男はデコピンを喰らって地面に頭を打ちつけた。白目を剥いている様子からどうやら気絶しているらしいことがわかった。


 俺はつまらなさそうな目で気絶した男を見つめる。


(この程度の男のために、一年も修行したのか)


 0.1秒それは【百万倍精神と時の部屋】では1年に値する。俺は一年間、ひたすら小指を鍛え続けたのだった。


「もう!将暉様ったら!小指で倒したらダメって言ったじゃないですか!」 


「大丈夫だ。リリー、デコピンは人差し指使ったからな」


 俺はできる限りのキメ顔でそう言った。


「将暉様。流石です」


 リリーが花のような笑顔を返した。俺はこの笑顔を受け取るだけで一年間の修行が報われたと感じた。


「さっさと、ギルドに登録しようか。リリー」


 颯爽とギルドを歩いていく俺に衆目は一致した。


「あ、あいつ何者なんだ?」


「Bランクのゴレーヌが小指で倒されただと?」


「一体あいつの魔力量はいくつなんだ?」


「億は超えてるだろうな」


 ギルドメンバーは新星の登場に沸いていた。俺はリリーが言っていたことを思い返した。


(やべぇ!これから魔力量測られんじゃん。俺このままだと魔力量ゼロだぞ)


 リリーはぐいぐいと前に行く。俺は魔力について考えていた。

(魔力なんてもの、どうやったら修行できるんだ...)


「受付嬢様、こんにちは。ギルドの登録に来ました」


「ええ、ようこそ【妖精と勇士達】へ。歓迎するわ。ゴレーヌの非行にはギルドも手を焼いていたの。お灸をすえてくれたようで助かったわ」


「あ、ああ。問題ない」


「あら、Bランクのゴレーヌをして問題ないだなんて一体どれほどの魔力量なんでしょう」


「いや、それほどでもないんだ。これが実は」


 俺は慌てて誤解を修正しようとする。しかし、そこにリリーがとどめの一撃をさす。


「将暉様の魔力量は控えめに言って京は超えてると思いますよ」


(京って億の次だよな。そんなの無理に決まってるじゃないか)


 俺は内心べそかいて泣いた。リリーが早速鑑定石を使った。


「いきますよ!ふんっ!」


 鑑定石が赤色に染まる。結果は以下の通りだった。


名前 リリー

魔力量 一千万

属性 火


 ギルドが騒めく。


「あのお嬢ちゃん何者だ!?」


「魔力量一千万なんて聞いたことがない」


「どこかの王族じゃないのか?」


 リリーは観衆の声を聞いてしまったという顔をした。どうやら本気を出してしまい、正体がバレかけているようだ。リリーがすがるような瞳で俺を見る。


(これはリリーを圧倒する魔力量をだして、誤魔化すしかない!)


 俺は呟く。


「いや、なんか暑いな」


「え?そうですか?」


「うん、暑いよ。俺ちょっとインナー脱ごうかな」


「え、ええ。暑いのならそうした方がいいかもしれませんね」


「じゃあちょっとリリー待っててね」


 そう言って、俺は【百万倍精神と時の部屋】に入っていった。リリーは退屈そうに毛先を弄る。なんと、俺が部屋に入ってから五秒が経過した。それでも俺はまだ帰ってこない。そしてが十秒が過ぎようとしたその時、俺は戻ってきた。


 戻ってきた俺の目は達観していた。部屋の中で人間性を喪ってきたような様子だった。リリーが俺の肩を触る。俺はドキッとして人間性を取り戻した。


「将暉様、ボーッとされてるようですけど大丈夫ですか?」


 俺は急速に色を取り戻していく世界に驚きながらも、確かに摩耗してた人間性がリリーに触れたことで回復したことに気づいた。


「ああ、なんの問題もない。魔力量を測ろうか」


 そう言って俺が鑑定石に手をやると、鑑定石は虹色に光ってピシッと亀裂が入り、割れた。割れた水晶の破片から測定結果が出た。


名前 神宮寺俺

魔力量 測定不能

属性 火 水 風 光 闇


(よっしゃああ!鑑定石割ってやったぜ!)


 俺は10秒の修行、【百万倍精神と時の部屋】で換算すると110年の修行を経て、膨大な魔力量を手にすることができた。


 リリーは笑い、鑑定石を壊されて唖然としているギルドメンバーに向かって勝ち誇った。そして落ちている鑑定石を見つけると、とある疑問を持った。


「あれ?属性の欄に空間魔法がない」


「え、ええ。その鑑定石は特殊属性には対応してないの。ちょ、ちょっとギルドマスター呼んでくるから待っててちょうだい」 


 そう言って受付嬢はバタバタと二階に上がっていった。リリーは俺の手を取り微笑みかける。


「将暉様、流石ですね」


「いや、それほどでもない」


(リ、リリーが俺の手を握った!?)


 俺はリリーに手を取られ、微笑みかけられて有天頂になった。百十年間孤独に修行していた甲斐があったと思い、俺はリリーに隠れて涙を飲んだ。


 ギルドマスターが二階から顔を出して俺達を呼ぶ。


「ちょっと!新人達こっち来なさい!」


俺はリリーの手を取り、二階に上がる。ノックしてギルドマスターの部屋に入るとそこには青筋を立てた青い髪色の涙袋がはっきりと主張していて美しい女性がいた。


「あんた達、少しは自重しなさい。あの鑑定石いくらすると思ってるの」


「お言葉ですが、簡単に壊れる鑑定石を置いてるのがいけないのではなくて?」


 リリーが飄々とした顔で言い返すと、ウグッとギルドマスターは黙った。そして机の上に水晶玉を置くとこう告げた。


「これは特殊属性と大幅な魔力量も測定できる水晶だから、これを使って測りなさい」


「将暉様、よかったですね!これで俺様が持ってる創造とか重力とかも測れますね!」


「え?リリー、俺そんなことひとこともーーー」


「あれ!?私が王城で読んだ本にはそう書いてあったのですが...」


「ちょっと待って、さっきから言ってるその本って何?」


 俺は耐えかねてリリーの発言に口を挟んだ。


「私が十歳くらいの頃王城で流行っていた小説です」


「ちなみに、本の名前は?」


「エブ○スタです」


「エ○リスタじゃん」


「私は特に2012年辺りのエブリス○が好みです」


「俺と一緒じゃん...」


 リリーは目を輝かせて言う。


「今のところ、その小説通りなので、あの本は予言の書だと思ったのですが、違うのですか?」


 リリーは純真無垢な瞳で俺を見つめると、俺はその眩しさを直視出来なくなった。リリーは国を追いやられて、精神的にギリギリだった。そんな中で俺に助けられて、リリーは昔読んだ本に一種の幼児退行で傾倒してしまった。そんな危うさを孕んだ声を俺は感じ取って、思わず答えてしまう。


「いや、きっとそれは予言の書だよ。だって今まで俺がリリーの期待を裏切るようなことしなかっただろう」


「そうですよね!俺様は将暉様から創造とか重力とか頂いてるんですよね!」


「ああ、そうだよ。さて、その前にトイレはどこかな」


 ギルドマスターが答える。


「扉出て、右よ」


「じゃあちょっとトイレ行ってくるから待っててくれリリー」


「分かりました!」


 トイレから帰ってきた俺は水晶に手を当てて、魔力量、四十京。属性、創造、重力、破壊、毒、空間

という脅威の数値を叩き出した。彼がトイレに行くふりをして、俺は60秒の修行、【百万倍精神と時の部屋】で換算すると660年の修行を経て、特殊属性を手にすることができた。

読んでくださりありがとうございます。


「面白い!」と少しでも思ってくれたら↓の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!

ブックマークもお願いします!

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ