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神様土下座と姫様救出はテンプレです


 神宮寺将暉こと俺は死んだ。高速道路でのトラックの玉突き事故が原因だったらしい。


 ふわふわと浮かぶ俺の魂のようなものは空へと吸い込まれるように消えていく...かと思われたその時、誰かが俺の魂をシュバッと掴み取り、雲の上に乗せた。


 魂が二十一年生きた俺の体を再生させる。視界がはっきりして一番に目に飛び込んだのは神々しい光を放つ女性が土下座しているところだった。その手にはプラカードが握られており、「申し訳ございませんでしたぁ!」と書かれていた。


 俺はこの状況にデジャビュのような物を感じていた。


「大変申し訳ございませんでしたぁ!あなたが死んだのは女神である私の手違いですぅ!」


(あ、これ小さい頃携帯小説サイトで見たやつだ)


 俺はひとまず、土下座している女性を立たせると事情を聞いた。推定、ドジっ子女神はどこからかちゃぶ台と座布団を持ってきて、話し始めた。


「実は今日、あなたが死んだのは私のミスなんです。謝っても許されないことですが許してください」


 ペタンとちゃぶ台に額をつけた女神は流石と言って良いほどの美形で、目尻から垂れる水滴が彼女をいじらしく見せていた。俺は敢えて強気に出ることにした。


「それでどう責任とるつもりなんだ?」


「ひっ、ごめんなさい!怖いから強い言葉使わないでください!」


「あ、ああ、すまない」


 意外と強気な女神のようだ。


「こちらとしましては異世界転移、あるいは異世界転生で補償させてもらえたらなって思ってますけど...いかがですか?」


「異世界転移が良いが補償としては足りないな。チートをくれ」


「えぇ!まぁ、分かりました...」


 そう言うと女神は白いファイルを持ち出した。


「この中のどれかから、選んでください」


 白いファイルを開くと、様々なチート?が載っていた。【火属性】【時魔法】【剣術】【棍棒術】【空間魔法】...etc。


「おい、これじゃあ満足できないよ」


「えぇ!そんなこと言われても、お一人様お一つまでってマニュアルには書いてあるし...」


「なんか全てのチートを得られるチートはないのか?」


「あ!それならありますよ!」


(あるんかい!)


「はい、じゃあこれをお渡ししますね」


 そう言って女神は光の玉を将暉の胸に押し込んだ。それは【百万倍精神と時の部屋】というチートだった。頭にハテナが浮かんだ俺を置き去りにして、女神は捲し立てた。


「それじゃあチート持ちの方なんで空からのダイブ式で大丈夫ですよね」


「え?、そんな無理にきまって———」


「じゃあ、いってらっしゃーい!」

 

 そう女神が言うと将暉の座っていた床がパカッと開いて俺は空に投げ出された。


「うそだろぉぉぉぉ!」


 雲ひとつない青空に、地平線が見える。どうやら遠くには街があるようだ。パラシュートなしでのスカイダイビングを強制させられた俺は体中から汗という汗を流し、必死に打開策を見つけようとしていた。


「そうだ!【百万倍精神と時の部屋】!」


 そう叫ぶと時空が裂けてその先に空間が見えた。将暉は臆する自分を律して、時空の裂け目に入っていった。


 「いやぁぁぁぁぁ!」


 真っ白い空間に将暉は転がりこんだ。そこには何も物はなく、あるのは平坦な床だけだった。


「ここが【百万倍精神と時の部屋】?」


 首を振って辺りを見回しても何もなかった。そして空から落ち続けているという状況にも変わりはなかった。


「一体どうしたらいいんだよ...」


 異世界生活一歩目で詰んだのは俺くらいじゃないだろうか。とりあえず五体接地の練習だけするか。


〜三日後〜


 この部屋で生活してから三日が経った。ある程度分かったことを共有すると、この部屋では修行したい内容を頭の中で選択すると、それに沿って部屋が変わる。


 例えば五体接地の練習をしようと頭で思い浮かべると、体を床から数メートル上に転移させることができる。


 また、この空間での怪我は一瞬で治る。一度限界まで上に転移した時、おそらく頭から地面についたが、怪我すると同時に身体が治っていく感触があった。この空間で死ぬことはないだろう。


 そしてこれはあくまで推測でしかないが、ヒゲの伸びが止まっていることから、この空間でいる限り不老なのではないかと考えている。


「確かに、全部のチートを取得できるかもしれないけど、流石にハードモードすぎるだろ...」


 将暉は女神にそう悪態つきながら、時空の裂け目を作り出して、スカイダイビングに戻った。


「おぉぉぉぉぉ!」


 大気が将暉の身体を打つ。踵を上空に向け、膝を軽く曲げる。両手は広く取り、空気抵抗を極力受ける体勢になる。三日間で身につけた空中姿勢だ。


 眼下に広がる青々とした森の中で一番背の高そうな木を目指して身体を突っ込んだ。


 バキバキッバキバキッ!


 両手を顔の前でクロスし、枝が目に刺さらないようガードする。木の枝が身体に刺さる。しかし木の枝のお陰でだいぶ速度がゆっくりになった。


 目を見開いて練習してきた五体接地を行う。三日間の成果として、滑らか動きで行われた五体接地は衝撃の吸収を和らげて、地面に着地する。


「ッハァ!」


 成功したのか?殆ど無意識に動いた一連の行動で将暉はどうやら生き残れたらしい。それでも身体は傷だらけだ。将暉は次あの女神にあったらコークスクリューブローを打ち込むと心に決めた。


 森をかき分けて街道のような物を見つけると道に沿って歩き出した。空からの景色だと確か東の方に町があったはずだ。


 俺は枝で怪我した身体を庇いながら、鬱蒼とした森を抜けようとしたその時、遠くから悲鳴を聞きつけた。


「キャーーーーー!」


(この展開は...まさか?)


 走って悲鳴の元へと駆けつけるとそこには黒いローブ姿の集団が壊れた馬車を囲んでいた。馬車を守護する騎士たちが懸命に戦うが、黒いローブの集団は瞬く間に騎士たちを殺していった。


(なっ!人が死んでる)


 俺は初めて見る死体に驚愕していたが、次の展開を予想して絶望した。


 一人のドレスを着た女が馬車から出てくる。ローブ姿の集団は女を取り囲んだ。


「アースガリア帝国第一皇女フルール・ド・リリーで間違い無いな」


「はい、間違いありませんわ」


 将暉は焦って倒れている騎士たちを見渡す。しかし軒並み殺されているようで俺以外に女を助けられる者はいなかった。


(くそっ!こちとら五体接地が得意な一般人だぞ)


「その命頂戴する!」


「ちょっと待った!」


 俺は冷や汗をかきながら黒いローブの集団の前に躍り出る。殺気を伴った視線が集まる。俺は言葉を詰まらせた。女の目に光が灯る。


「貴様何者だ」


「ただの通りすがりの一般人だ」


 黒いローブの集団は問答無用でこちらに襲いかかる。


「本当にちょっと待った!」


 そう言うと黒いローブの集団は動きを止めた。


「一体なんなんだ」


「ちょいと失礼して...開け!【百万倍精神と時の部屋】」


 そして俺は時空の裂け目に足を踏み入れた。そして五秒後に出てきた。


 黒いローブの集団は珍妙な俺の行動にポカンと口を開けている。


「あれ、なんだっけ。あぁ、もうかかってきていいぞ」


 そう言うと黒いローブの集団は青筋をたてながらこちらに襲いかかってくる。俺の動きにはそれがスローモーションに見えた。短剣を突き刺そうとしてくる奴に手を絡ませて短剣を奪い、顎から突き刺す。


 その動きを見た黒いローブの集団が警戒度を一気に引き上げた。


「どうした?早く来いよ」


 二人の黒いローブの男が連携して短剣を突き立てようとしてくる。それを蹴りで弾いて、髪を掴む。思いっきりこちらに短剣を刺そうとしているもう一人に掴んでいた頭をぶつけた。


 集団のリーダーと思わしき男が叫ぶ。


「あいつを殺せ!」


 何人来ようが俺にとっては敵ではなかった。黒いローブの集団を打ちのめし、残すはリーダーと思わしき男のみになった。


「なっ!何者なんだ!貴様」


「あれ、俺言ったよな。ただの通りすがりの者だって」


 そう言って襲いかかってくる男に短剣を刺して殺した。


(初めての人殺しはこんなもんか)


「あ、あの!助けてくださったんですよね」


 ドレスを着た女が歩み寄ってくる。その顔は超がつくほどの美形だった。アメジストのような瞳に鼻筋が通っていて、少し分厚い唇がセクシーだった。女神と比較しても遜色ない顔立ちにドギマギする。


(やっ、やばい。超可愛い)


「あ、ああそうだ。怪我はないか」


「お陰様でありません。あのどこかで修行なさったんですか?」


「ああ、修行はしたぞ。五秒だけな」


 【百万倍精神と時の部屋】は外の世界での1秒は部屋での3600000000秒となる。つまり、俺にとって五秒の修行とは五十五年の修行に匹敵するのだ。


「あら、冗談がお上手ですね」


 フフッと笑いながら女は受け流す。将暉は冗談じゃないんだけどなと頬を掻いた。


「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」


「神宮寺将暉だ。そちらは?」


「フルール・ド・リリー。いえ、ただのリリーです」


「そうか、これからどうするんだ?」


「神宮寺さんがよろしければ一緒に町まで行きませんか?」


 神宮寺さんも戦闘で服がボロボロのようですし。そう呟いてリリーは将暉の服を見た。


(戦闘では無傷だったんだけどな。木の枝恐るべし)


「もちろん、同行させて貰おう」


 それから俺たちは様々なことを話し合った。将暉が異世界から来たこと、リリーが亡国のプリンセスであること。お互い事情を抱えた者同士、二人で協力して生きていくことにした。


 俺も正直言ってリリーに一目惚れしていたから、リリーからの提案は舞い上がりそうなほど嬉しかった。


「街についたらギルドに行きましょう。きっと将暉さんなら全属性持ちで鑑定石なんて破壊しちゃうかもしれませんね」


「お、おう!そうだな」


(やべぇ、修行して全属性獲得しないと...)

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