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雷撃の聖女ちゃん  作者: Shutin
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第二話『金色のばんぐる』

 あと少しだけ。ほんの数分だけで良いから扉を壊さないでくれ・・・・


 壊さんばかりの勢いで誰かが私の部屋を叩く。誰かは分かっていた、魔術学校での恩師にして堅物教師 マギア・チョルクだ。


「フィアス・キトリノ!! 今すぐ出てきなさいもう時間がありません!!」


「分かってますから! あと30秒だけ!!」


 必死の叫び虚しく、部屋の扉が押し倒される。


 バフン!


 と倒れた扉の風圧が重なった書類の山を空へと舞い上げた。


「前代未聞ですよ、上級魔術師の任命式に遅れるなど!!」


「あともうちょっとでこの魔術が理解できるんです!」


 私が手に持つ魔導書をマギアは取り上げ、部屋の角へとぶん投げた。そのまま二人の男が部屋の中へと入り、私の身体を担ぎ上げる。


「急いで!! あと30分で授与式が始まります。それまでにドレスアップと化粧!!!!!」



 身長150センチほどしかない私を担ぎ廊下を駆け回る、屈強な男。それを怪訝な目で見つめる皆はどんなことを思っているのだろう。


「さっさと終わらせましょう。閉まる前に図書館に行きたいので」



 王座・・・に座っているのはもちろんこの国の王、ガリウス・アテオン。その横に座る妃は女神のような笑顔で私達を見つめる。


「中級魔術師フィアス・キトリノ、そして・・・・」


「中級魔術師エンラ・ゴルフォス。これより上級魔術師としてルアック大陸の発展と未来のため働くことをここに約束します」



 頭を下げる私と男に王は満足気に頷く。


 王の横から兵士が近づいてくる。手に持つ座布団のようなものに置かれた二つの物が煌めき光っている。


 ・・・バングルと指輪。これが『贈り物』。


 上級魔術師に任命されると大陸の魔術協会から『贈り物』を貰えるらしい。その形はペンからローブまでさまざまだが、どうやら私にはバングルが似合うと思われたみたいだ。


 男と私はそれをありがたく頂戴し、もういちど王国への忠誠を誓う。


 約半日をかけて行われた任命式はつつがなく終わった。途中あくびを十三回だけ噛み殺したのと、時折マギアが睨みつけてくる以外は上手くできたと思う。


 ドレスを脱ぎ捨て、急いで図書館へと向かう。しかし城の玄関で同じくらいの年齢の男に阻まれる。


「ちょっとどいて。図書館が閉まっちゃう」


「今日は任命式だから開いてねぇよ、魔術馬鹿」


 そうだった。魔術大国アポテオシスでは任命式の日は王の誕生日よりも重要視される。今日は祝日となり、学校も店も役所に至るまでが営業していない。


 笑いながら男は私の頭を小突く。


『ついでだから送ってやる』


 と私を馬車に乗せたこの男には、何処か見覚えがあったが思い出せない。


「すいません、どちら様でしょうか?」


 私の言葉に男は驚きの表情を見せる。同時に落胆の表情も。


「・・・そうか俺は覚えるにも値しないか。エンラ・ゴルフェス。お前を抑えて魔術学校を主席で卒業して、つい今し方お前と一緒に上級魔術師に任命された男だよ・・・」


 男のしょぼくれた顔を見て思い出した。


『神童』エンラ・ゴルフォス。確かに魔術学校でその名前を見た。いつも大勢に囲まれて、キラキラオーラを放っていた。魔術学校で歴史上1番の総合成績を叩き出し、卒業式で演説をしていたのを思い出す。


 でも確か・・・


「思い出した。主席だけど、魔術の成績では二位だった人だ!!」


「それは言っちゃいけない約束だろ」


 魔術学校で学ぶのは魔術だけではない。算術、歴史、哲学、等・・・


 このエンラという男、過去最高点を叩き出すも魔術関連の教科ではいつも二位に名を馳せていた。


 なぜなら私が一位だったから。


「魔術学校での負けは認めよう。でも俺とお前は今、同じレベルにいる。上級魔術師になってから本当の勝負が始まるんだ。その目を見開いて待ってろよ」


「はぁ・・・」


気の抜けた返事をする私にエンラは手を差し出す。その目には情熱が宿っていた。


「だから次に会う時はアポテオシス魔術研究所だ。大陸一の研究所で働けるようになるまでに俺達はなるぞ。無論、俺が先に入ることになるがな」


 アポテオシス魔術研究所。ルアック大陸最大にして最高の魔術研究所。この魔術の国では憧れの場所であり、誰もが一度は入ることを夢見る場所だ。


 でも私は・・・


「すいませんエンラ。この春からアポテオシスでの勤務が決まってるんです」


「え?」


 間の抜けた声が馬車の中に響く。エンラがその中指にはめた指輪を、するり馬車の床へと落とした。

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