プロローグ『魔術まにあっく』
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心臓を焦がされた。
私の視界の全てを覆う炎。天まで届きそうなその火柱は魔術の恐ろしさと強大さを表していた。
周りは皆、涙を流していた。あと数秒助けがくるのが遅ければ魔物に殺されていたと言う恐怖からか、はたまた眼前に広がる魔術の脅威からか、私を囲む大人達も子供も例外なく涙を流していた。私を除いてー
見るのを止められなかった。止めたくなかった。
先ほどまであの大きな口を私の頭上で開けていた魔獣達が消し炭になっていく。そんな恐ろしい光景から私は目を離せなかった。
興奮したのだ。感動したのだ。
その炎の美しさに。魔術の恐ろしさに。
眼鏡をかけた老人が笑いながら私に歩み寄ってくる。
「もう大丈夫だよ」
そう言った老人の手からは膨大な魔力を感じた。一瞬でここにいる全ての生物を屠れるにも関わらず、老人はそのシワシワの手で私の頭を撫でた。
それからかなり後のことだろうか。あの老人が魔物に放った魔術は『火系統の上級魔術』と呼ばれるもので、扱える人間は数えるほどしかいないと。そしてあの老人は「大賢者」と呼ばれる世界を滅ぼせる力を持った人物だと。
そこからの私は凄かった。自分で言うのもなんだが・・・言葉通りに「神が降りていた」
平民の出身でありながら魔術学校に入学そして卒業。卒業時には火系統の上級魔術を1つ、水系統の上級魔術を2つ覚える「100年に1人」の天才と持て囃された。
そして最年少でこのルアック大陸1の規模と水準を誇る「アポテオシス魔術研究所」への配属がこの春から決まった。
この物語はそんな魔術狂愛者の私、フィアス・キトリノが魔術研究所で最高の魔術に出会う話。
そして後に「雷撃の聖女」と呼ばれ、史上初となる「雷系統の上級魔術」を開発するまでのお話。
読んでくれてありがとうございます。