僕の話
僕は人を殺した
母をいじめたから。
殺すまでわからなかった。
僕の憎しみの対象はあっさりと倒れ行き場を失う。それがあまりにもあっさりと倒れたものだから。
僕のすべての憎しみがあの時の一発であっさりと倒れるものだからそれが驚きで実感がなくて。
そのままそばにいた娘も撃った。
血の付いた服のまま外に出る。
我に返ったのは帰宅の途に就いたとき
僕のすべてがそこで終わっていくのを感じた。
やがて僕は家につくと母に行った。
もう大丈夫だよ。
母は泣き叫んだ。
僕を罵った。
なんで。
僕は母のためにやったのに
僕は母のためにあいつを殺したんだ。
にくいあいつを。
なんでそんなに悲しむの?
母さん。
そして今日出所する。
僕の母を一番悲しませたのは僕だった。
誰でもない僕だった。
それに気が付いて僕は母に会いに行く。
母はいつも通りご飯を準備していていつも通り僕に接した。
久しぶりの家の味。
ごめんよ母さん。
こんなに年老いて。
僕が好きなのはこの世でたった一人母さんなんだ。
母さんが幸せなら僕はそれでいいんだ。
緩やかな穏やかなそんな日々が母さんとこれから過ごせれば僕はそれでいいんだ。
だからごめんよ。母さん。
僕の罪は母の心に傷を作りそれはまた僕に一生報われることのない罪としてのしかかる。
そして、僕は大変なことをしてしまったと。
そして母の背中をさすり僕はこういう。
「ただいま。母さん。」