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王都にて


 翌日ブライアンは腕輪に魔力を通してから王城に転移した。転移先にはマーサが待ち構えていてそのまま2人で王城に向かう。


「ワッツは先にマシュー師団長の部屋にいるの。報告が1度で済むから」


「確かに」


 マシューの部屋に入るとワッツが既にソファに座っていた。勧められてブライアンもソファに座ると肩に乗っているフィルにペリカの実を1つ渡す。


『ありがと』


「ゆっくり食べるんだぞ」


『わかってるって』


 ブライアンとフィルのやりとりを聞いていた他の3人。ラグーンはどうだったというマシューの言葉で報告を始めるブライアン。


「素人の印象ですが騎士団、魔法師団ともによく訓練されてる様に見えました。皆動きがきびきびとしていて見ていて気持ちが良かったです。フィルも大人しかったので特に大きな問題はないかと。そうだよな?」


『んぐ。そうそう。あの街は平和でいやな雰囲気はなかったよ』


 ブライアンがフィルの言葉を伝えるとホッとした表情になる3人。


「国境の2箇所の検問とラグーン、この3箇所がわが国が外に門を開けている場所だ。敵の間諜が入るとすればそのどれかになるだろう。だから騎士団も魔法師団もそれなりの精鋭をあの港町に送り込んでいるんだよ」


 ワッツが言うとそうだろうなとブライアン。


「今のフィル殿の話を聞いてとりあえずは安心できる。あとでケビン宰相経由で陛下にもお伝えしておこう」


 マシューが言った。その後はワッツとマーサからラグーン守備隊のウイリアムとフランシスの話を聞いたブライアン。ラグーンは王都の直轄地であり且つ国内唯一の港がある街でもある。当然軍から見ても重要拠点となっておりそこに派遣されている部隊は騎士団、魔法師団ともに精鋭部隊を送り込んでいるということだ。


「その中で隊長をやっている2人は優秀でね。幹部候補生と言ったところかな」


「なるほど。2人ともまだ若く見えたけど優秀なんだな」


 ワッツの説明を聞いていたブライアンが言った。その言葉に頷く3人。


「優秀でないとあの場所は任せられない。逆に言うと優秀であれば年齢に関係なく重要なポジションにつけて経験を積ませるというのがグレースランドの軍のやり方だ」


 やりとりを聞いていたマシュー師団長が言った。その後にマーサが続ける。


「剣術、魔術が優れているのはもちろんだけどそれ以外に普段から人望や性格、人身掌握術、作戦立案能力など様々な項目で隊員を評価しているの。その篩に残って始めて重要なポストにつくことができるのよ」


 2人の説明には納得できる部分が多いとブライアンも感じていた。でなければいかに魔法の威力があっても田舎の貧乏貴族の次男坊を国王陛下直属にはしないだろう。と同時に目の前にいるマーサとワッツも年齢は若いがとびっきり優秀だということになる。


「少し話しただけだけどあの2人なら安心じゃないかな。フィルも大人しくしてくれていたからさ」


 ペリカの実を食べて手持ち無沙汰にしていたフィル。ブライアンから話を振られると3人を見て言った。


『あの2人は問題ないよ。邪な気持ちは全く見られなかった。大丈夫だね。というか2つの建物どちらも妖精が見ても全く問題のない雰囲気だったよ』


 フィルの言葉を伝えると3人がそれなら当分大丈夫だなとほっとした表情になる。


「この後はまた国内をうろうろするつもりかな?」


「少し王都で休んでからですね。以前と同じく地方の村を重点的に見て回るつもりです。しばらくは大丈夫でしょう?」


 マシューの言葉に返答したブライアン。


「すぐにどうこうとはならないだろうと情報部は見ている。北での戦争は一進一退が続いているらしいがどちらも今の前線を動かせる程にはなっていないという報告がきていた。秋頃まではこの調子が続くだろう」


 頷きながら聞いているブライアン。言いたいことや思っていることはあるが今更それを口にすることはしない。国王陛下の前で約束をした以上は来るべきに備えて自分の技量を上げるための鍛錬を続けるだけだと思っている。


 ブライアンの態度を見ていた3人も内心で彼は腹を括っているなと感じとっていた。と同時に彼が出張ってくれれば戦闘を収束されるのは問題がないだろう。むしろその後のサナンダジュとの戦後処理が課題になるだろうと認識する。


 騎士団で王城に詰めている守備隊の責任者と話をしてくるというワッツと別れたブライアン。マシューの部屋を出るとマーサと2人王城を後にする。マーサがこのままフィルから魔法の指導を受けたいと言いフィルが快諾したので今はブライアンの自宅に向かって歩いていた。


 マーサによると転移の魔法は今では1度の転移で1Km以上、2Km近くまで距離が伸びてきているといい、あとは魔力を増やす鍛錬と自分の魔法で魔力ロスがあればそれを修正したいと言う。


『マーサはブライアンと同じで向学心がすごいから伸びるよ』


「頑張りますね」


 フィルの言葉をブライアンから聞いたマーサが肩に乗っているフィルに話しかけると任せなさいと自分の胸をトントンと叩く。


 自宅に戻ると庭で早速鍛錬を始めるフィルとマーサ。フィルが言うとそれをブライアンが通訳してマーサに伝える。


『もっと力を抜いた方がいいわよ。力むと魔力のロスが出るから』


 ブライアンが座っている庭のテーブルの上にはペリカの実が皿に盛られていて姿を現している妖精達がテーブルの上やブライアンの頭の上に乗りながら美味しそうに実を食べている。フィルはもちろんブライアンの左肩に腰を下ろしていた。


『魔力もかなり増えてる。毎日鍛錬を欠かしていない証拠ね』


「そうなの。毎日欠かさずやってたら少しずつだけど自分でも魔力が増えてきているのがわかるのよ」


 効果が出ると鍛錬するモチベーションになる。


『今の時点でマーサはブライアンの次、大陸2番目の魔法使いになってるわよ』


 フィルに言われたマーサは本当?と喜色満面の笑みになる。


「また時間があるときにお邪魔するのでご指導お願いしますね」


『フィルはいつでもOKだよ』


 そう言ってブライアンの家を出ていったマーサ。


「彼女がいればこの国の魔法師団も安泰だな」


『ブライアンがいるじゃない?』


 フィルにそう言われたブライアン。肩にフィルを乗せて自宅の家のドアに向かって歩きながら言った。


「こっちは仕事が終わればただの魔法使いに戻るつもりだよ。国王陛下との約束を果たしたところでお役御免にしてもらおうと思ってる。そのあとは国内を歩いて見聞を深めながら困った人を助けるというやりたかったことをやるつもりだよ」


 そう言ったブライアンの肩をトントンと叩くフィル。


『フィルも一緒だからね。一緒に行くからね』


「もちろん。頼むよ、相棒」


『任せなさい』


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