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お手伝いさん

 自宅でゆっくりとした彼は翌日王城の中にある魔法師団に顔を出した。


「実家から戻ってきたのね」


 師団長のマーシュは不在で代わりにマーサが対応する。


「しばらくは王都にいるよ。実家でお手伝いをしていた夫婦の人が王都の家に来てくれるのでね。その人達が来たら今度はこの国の国境をぐるっと回って見てこようかなと」


「なるほど。転移の魔法のマーキングのためにも国境を見ておくのは悪くないわね」


「そう言うこと」


 予定が決まったらまた報告すると言って魔法師団の詰め所を出たブライアンはその足で騎士団の詰め所にも顔を出して同じ説明をする。


「ワッツ団長には伝えておきます」


「よろしく頼みます」



 お手伝いさん(使用人という言い方はブライアンは好きじゃない)が来るまでの間ブライアンは魔法の鍛錬に励むことにする。毎日の様にフィルを連れては王国内の人気がない場所に飛んでいた。


「こんな感じかな」


『悪くないわね』


 ブライアンとフィルは目の前で粉々になった巨岩の欠片を見ていた。

 ここは王都とミンスターとを結ぶ街道から大きく外れた草原の中だ。ブライアンの移動魔法で人気のいない場所に来ては魔法の鍛錬をしている。彼は草原のところどころにある巨石に魔法を撃っては自分の感覚を掴んでいた。


「次はもう少し距離を取ってみるか」


 今まで200メートル先の標的に魔法を撃っていたがさらに後ろに下がった。距離は300メートルだ。


『どうせならもっと下がったら?ブライアンならいけるわよ』


 フィルがけしかけてきたのもありブライアンはさらに下がった。500メートルの距離を取る。


「ターゲットが小さいな、おい」


『いけるいける』


 両手をぶんぶんと振り回すフィル。本人は応援してるつもりらしい。

 その場に立って標的となる巨石を見ていると視界の中で巨石が急に大きくなった。目標がクリアに見えている。杖を持っている右手を突き出すと500メートル先の巨石が完全に砕け散るのが見えた。


『ほらっ、出来たじゃない』


 見やすくなった巨石に魔法を撃つと見事に命中する。


「500メートル先に見えていた巨石が急に大きくなった様に見えて意識が集中しやすくなったんだがあれは何だ?」


 近づいてみると破壊された巨石は100メートルで破壊された時と同じ様に強い魔力を受けて爆発した様に粉々に砕け散っている。


『それは妖精の加護ね』


「加護か」


 フィルの話では魔法を撃つターゲットを今の様にまるで10メートル程先の標的の様に見ることが出来るらしい。


「これは便利だな」


『でしょ?もっと褒めていいのよ』


 ポケットからペリカの実を渡すとわかってるじゃないと喜んで手に持って食べ始めるフィル。


「食べながらでいいんだけど俺の魔法だとどれくらいの距離まで有効なのかわかるかい?」


 もぐもぐしているフィルが口の中の実がなくなると言った。


『どうだろう。今の距離の倍くらいまで?』


 1,000メートルまでいけるのか。そりゃ凄いなともう1つペリカの実をフィルに渡した。ありがとと言って2つ目の実を口に運ぶフィル。


『加護もあるけどブライアンの魔法の威力がかなり伸びているのもあるのよ。相乗効果だね』


 魔法の威力の伸びに自分の感覚が追い付いていないと感じたブライアンはその感覚のずれを調整すべくその後も遠距離から魔法を撃つ鍛錬をして何とか今の感覚を身体で覚えたところで王都の自宅の庭に戻ってきた。


 2か月程そんな生活をしているとようやく辺境領のジャスパーの街からお手伝いさん夫婦、シアンさんと奥さんのリリィさんが王都の自宅にやってきた。


「遠路ご苦労様でした」


 貴族区の入り口で出迎えた彼は2人と一緒に自宅の門を潜る。


「いえいえ。それよりも王都は立派な街ですな。それにブライアンさんの屋敷も広くて立派だ」


 ブライアンは自分は貴族じゃないと思っているので王都に来ても様付けじゃなくてさん付けで良いからとお願いしていた。


 2人を庭の一軒家に案内してここで住んでくれという。2人はその家の広さと綺麗さにびっくりするが、


「こっちはお二人の住居になりますから好きに使ってくれていいですよ。あと庭については妖精達が自分達の遊びやすい様に草を刈ったりしてるので手入れは不要です。僕一人しか住んでませんがこちらの家の掃除と僕が家にいるときの食事をお願いします」


 フィルはじめ妖精達も姿を現して2人に挨拶をした。その様子を見るに妖精達のお眼鏡にかなった様だ。よかった。


『新しく来た人は2人ともいい人ね』


「そりゃよかった。安心して任せられるよ」


 その後ブライアンは夫婦に支払う毎月の給金の額を言った。多すぎるとその金額を断った夫婦だが


「わざわざ辺境領の街から来て頂いているので妥当だと思います。それに僕自身王家からそれなりに貰っているので気にされずに。これとは別に毎月食費などの経費分をお支払いしますが足りない時は言ってください」


 国王直属の切り札になったブライアンは毎月王家から給金を貰っているがその額が多い。王家の使いの者によるとこれが相場らしい。王家は金銭感覚が麻痺してるのかと思うほどだ。


 シアンさん、リリィさんが敷地内に住み出して10日もするとようやく王都での生活のリズムが出てきた。妖精ともすっかり打ち解けている様に見える。夫妻は毎日庭にあるテーブルの上にペリカの実が入ったお皿を置いてくれる。妖精達はそれを心待ちにする様になった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 設定や社会風景がしっかりしているので見ていて楽しい。 ここまで完成された作品は逆に珍しいと思う。 一気に最新話まで読んだんですが、 面白すぎてページをスワイプする手が止まりませんでした。 …
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