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07 20で奴隷に ? はあ⤴最低200でしょ


 仲間がとってもヤバい魔物だっていうレッドベアをしっかりと観察した。

 こんな怖そうなヤツの攻撃、間違っても喰らいたくないし。


 「噛みつかれたり、鋭い爪で引き裂かれたりなんて恐怖の極み〜 ! 堪えられないよ」

 

 ああっしまった !! これ言っちゃダメなヤツじゃない ?


 まさかね。イタくするのはやめて欲しいな…


 ちょっとだけ嫌な予感がしたから、即決で戦闘できない。

 凶暴そうなクマさんの吹く火のかたまりをかわし、ガンガン攻めてくる爪攻撃を避けつつ、その後もあわてず騷がず、じっくりと吟味した。


 その結果、ヤッちゃうか ? クマさんのこれぐらいのスピードだったらさほど問題は無いのかな ? と判断した。


2発、3発と繰り出されたクマクマパンチが振り抜かれたあとでバランスが崩れたところを見計らい、私は不意に身体を沈め、全速力でレッドベアに向かって突っ込んだ。


 そして、その勢いのまま右手に持っていたサバイバルナイフをカウンター的なタイミングで振りおろした。

 するとその攻撃には、体勢を崩してこちらに突っ込んで来る分まで加味されて、あっさりとその首すじ辺りを切り裂いた。



シュパッッッッッ !! ドサッッ !!!


レッドベアは簡単に刃を喰らい鈍く大きな音をたてて倒れた。


「「「おおおーー !!」」」


 ありゃりゃ ? ひどく簡単に倒れちゃったぞ。

 まぐれ当たりかな ?


そんな不安はあったけど、気にせず更にもう一頭の方へササッと駆け寄り、そっちの熊もナイフを素早くなぎ、一閃した。


シュパッッッッッ !! ドサッッ !!!



「「おおおおおおおおーーー !!!」」


「どへっ ?」


二人は大いに驚きレイなどは驚きを通り越して、完ぺきに呆気に取られていた。


 「口があいたままて、マヌケな顔になってるわよ」


 「うっ、うるせー !」


口に手をあて我に返ったようだけど、いつも軽く憎まれ口を叩くコイツの様子は悪ガキのようで、ちょっと可愛らしかった。可愛くはないんだけどね。

ギャップ萌えかな ? いやいや、萌えてもないけどね !


何だかね、ひどく警戒していた彼らには申し訳ないけど、意外とあっさり二頭とも倒してしまったのよ。

 ってことは、やっぱりこのステータスの差はそれだけの差があるってことなんだね。

 私の攻撃力は1000でHPは10000。熟練度が低いだろうからそのままの数字という訳にはいかないでしょうけど、それなりに計算できるってことかな ? これからの戦闘は相手の戦力さえ鑑定できれば相当ヤレるってことね。

 しかし、イヤーーな予感は当たらなくて良かったよ。


「アイリ、君は…… 」


「あっ !! レベルが2に上がって、攻撃力が1100になったわ !」


「ズコッ、1100ううーーー↗ !?!?」


「コイツ鬼かよ ? どおりで…… 」


「スゴいです聖女様 !」


「レベルが上がったのも分かるのかい ?」


「ええ、鑑定のスキルでね♪ 今のでクラウはレベルが2つ上がって村長とレイは二人ともひとつ上がったようね」


「鑑定持ちかー ? それも私たちのレベルまで簡単に解ってしまうというのか。アイリは何でも来いだね !」


 「スゴい力をお持ちですね」


 「なんなら転移もできるわよ。するとこ見せよっか ?」


シュンッと10メートル先へ転移してみた。


「はあー。もう私はそれくらいじゃあ驚かないよ !」


「えええ~~ ⤵⤵⤵」


「イエイエ ! 素晴らしいです聖女様 !」


村長は軽く流そうとしたところをクラウが優しい言葉で受け止めてくれた。

 だけど、ちょっと言葉遣いがおかしくない ?


 ○実は3人はこの戦いを見てまず、アイリは自分達よりも格上なのだと知らされた。そして異世界人であり本物の聖女なのだと実感させられていた。特にクラウにとってはアイリはこの世界を救う本物の聖女様なのだと確信していた。それは神を崇めることに近い想いに至っていたのだ。それが話し方に出ていたとしても不思議はない。


「ハハハッ ! だけどアイリは本当に規格外で無敵だね !」


「食いもんに関しては確実に助かってるぜ !」



やがてレイとクラウは倒した後のレッドベアを切ったり剥いだりし始めた。


 解体しているのかな ? まあ、私には解んないけどそれ系の処理をしているようね。


どうやら簡易的に解体していたようで、処理済みのそれを私がアイテムボックスに収納した。


 「いやぁ、アイテムボックスとは本当に便利なものだね。こんなに村から離れてこんな大物を倒したら、戦闘よりもむしろ運搬がキツイからね」


 「そうなの ? だけどこんなグロいのをサクサク解体するあなた達も凄いと思うよ。

 私は慣れてないから、こんなグロいのは直視できないわぁ ! 」


 「この解体加減で肉の旨さが変わるからな。

 どうせなら旨い方が良いだろ !

 ソイツは中々のモノなんだぜ !」


 レイは親指を立ててニカッと笑った。


 「そっかあ。それは真剣になる訳ね。クマ肉 ! 楽しみだわ〜〜 !」



クマ肉の楽しみが増えた。しかし、それにしても思い返せばこの人達はこのクマから本当に献身的に私を守ろうとしてくれた。


 きっと、女の子だからなのでしょうね。


 レイまでもがそうしたのには驚かされたけど、村長の気概が若い子たちにまで伝わっているのかも知れないな ?


それにひょっとしたら村の人たち全員がこういう気質なのかも知れないわね ?


どっちにしてもこういう男たちって悪くないわ !


 それに、守られるなんて悪い気はしないしね !



さて、その後も私たち一行はメイジゴブリン混じりのゴブたちの群れや、コボルトやウルフ、そしてオークを倒しながら町に向けて進んだ。


小物ばかりだったけどゴブリンやコボルトなんかはかなりの数を倒したのでクラウは何度かレベルが上がった。


私はレベル2から3にはなかなか上がらなかった。クラウは元々のレベルが低いからなのかけっこう簡単に上がったけど、それに比べると私の方が上がりにくいのかな ?


私が相当戦えることが分かったのでどんどん進んだ。街道まで出てしまうと、たいした警戒も必要ないようで益々歩みも速かった。


当初、か弱い聖女を守りながら安全に… と考えていた厳しいであろう行程は、一転してとても順調な旅になった。


 じいさん達と荷車をひいて2日の予定だった道のりも楽々の一日足らずだった。それというのも、予想外よりも遥かに早いもので、なんと陽が高いうちに目的地まで到着することができてしまったのだ。


かくして私たちは無事にコンテの町へと到着した。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



町の人達にはアイテムボックスや聖女のことは知られないようにしなければならないので、町に入る前に荷車と荷馬車を取り出して道中で倒した魔物の肉や素材もいくらか積んでから町に入った。


レッドベアは大きすぎて、とても荷車には乗らないので、そのままアイテムボックスの奥の方へしまっておいた。


 熊を荷車に乗せたら、一頭で満杯になってしまいそうなのよね。それにお肉は全部は売りませんからね。かなり美味しいようですので…



それと私は勝手に街だと思っていたけど、残念ながら街ではなく町だった。

 それもギリで町なのよ~。


村人たちが "まち" というから繁華街や大きな建物があって、どんなにか大きな街だろうと勝手に思っていた。

 

 しかしながらそれは、古い西洋的な建物がポツリポツリと建っていて、中心地は何軒か固まっているけど、日本で例えるならばせいぜい田舎の商店街ってとこ。


確かに、町ですか ? それとも村ですか ? と聞かれたなら、村よりは町なんだろうけどね。


これじゃあ王子様は住んでなさそうね !


それどころか貴族のご子息様とかも居なさそう。


町への期待が大きかっただけに、けっこう残念だわ。


ショックを受けてナンだか落ち込んでしまった。


「あゝ、ワタシの愛しい王子様はどこ ?」


「お牛 ? ソイツは馬だぜ。おい、どうしたアイリ、荷車が重いのか ? オマエが元気ないなんて珍しいな !」


 レイが突っ込みながらも、なにかを察したようだ。


「お牛じゃなくて王子よ。私が元気ないと、アンタは嬉しそうね ?」


「まあまあ。この町は歴史のある町でね。前はもっと栄えてたんだけど……

今ではここからずっと先にある町、ネバーフルの方が人気があるんだ。あっちは王都に近くてここより大きな町になってしまったんだよ」

 村長の大人な対応なのだろうか ? 少し話を振った。


「へえ~~ ! ネバーフルに王都………… 」


「ここはアルテ村に比べれば町だけど、それでも地方の田舎町ですね、廃れてきて空き家も多いんですよ。僕は都会よりも、このコンテの町の方が好きなんだけどなぁ」


「クラウは若いのに古き良き物が好きなのかな ?」


「そういうのは時代の流れなんだろうねえ ? だけど、この町だって一通りは揃ってるんだよ。さあ着いた着いた。

 ここはいつもお世話になっている、小さな店だけど信用できる唯一の商店なんだよ」


ちょうど目的地に到着したみたい。本当に小さなお店 !


「ジョエルさん、こんちわっ !」

「「お世話になります !」」


「やあやあ、遠くから良く来たな ! おっ可愛いお嬢ちゃんは初めてだね !」


「ホントね、ご苦労様 !」


「アイリです。よろしく !」


優しそうな夫婦が笑顔で出迎えてくれた。


二人は村長たちといくらか会話を交わすと、積み荷を見てぱっぱっといくらか取り出していった。


 種類はたくさんだけど数はひとつふたつ。


 残念ながら全体の積み荷の10分の1も買い取ってくれなかった。うーん。



「せっかく来てくれたのにたくさん買い取れなくてすまないね。元々小さな店なのに、最近ではお客も減ってしまってねぇ」



「いえいえ ! 私達も時々しか来られないのにジョエルさんにはいつも良い値段で引き取っていただいて助かってます」


これでも取り引きは良好にまとまったようで、村長たちは満足そうだった。やがて、私達はジョエルさんの店を出た。



そして次に、しばらく歩き、今度はさっきよりもかなり大きな店の前に来た。


「この店は値段はさておき、たくさんの品物を色々と、手広く買い取ってくれる商店なんだ」


「こんちわっ !」


「お世話になりますビリーさん」


「はいはい村長、毎度。おおおおおー、若い娘かね ? アンタらの村では珍しいじゃないか~(ニタリ)奴隷商にでも売りに出すのかい ? 」


「イイエ、そんな」


「なかなか器量も良さそうだし、もし良けりゃあ20万ギル(日本円で約20万円)ぐらいなら出してやるからさ、1年の条件付き奴隷でウチの店の売り子にでもしないかい ?」


「ええええ~~ 奴隷って !? 私、売られちゃうの ??」


 (聞き間違えかしら ? 200万円でもどうかと思うのにたったの20万円ぽっちで~~~~ !? ……ヒドいよ)


「あゝ心配ないよ。大事にするからな ! フォッフォッ」


「ダメだ !」


 「それはできない相談です !」


「まあまあレイもクラウも落ち着いて !! ……イヤイヤすまないビリーさん。この子は私の遠い親戚なんだよ」


(いやいや、どこまでさかのぼっても血は繋がって無いと思うのですが…… )


「またまた〜、村長とは全っ然似てないではないか。そうか、じゃあ分かった分かった。40万出そう ! これならアンタらも損はしないはずだぜ !! 40だ ! これで決まりだろ !」



「本当に申し訳ないね ⤵⤵ 大事な大事な、本当に大切な娘さんなんだよー !」


「ええぇーーー ?? 

 じゃあこれで最後だ、 60で買おう。60じゃダメか ? 」


 ビリー店主はギラギラした目で私のことをロックオンしている。おかしいよ。気のせいかしら ? 暖かいはずなのに寒気がする。悪寒が止まらない。


「本当にすまないね ⤵⤵⤵」


「ちぇっ、まさかあんたが囲う気でいるんじゃあるまいな。だけど良いのかね ? お前らの卸せるところはわずかなんだろ ? ワシにそんな態度をとって。もしワシの機嫌を損ねたら、アンタらは今みたいには暮らしていけなくなるんだぞ ! ええっ ?」


(なんだかこの人、態度はデカイし、めちゃ感じ悪い奴ねえ ? ひょっとしたら村長さんたちって、頭が上がらなさそうな様子だし、随分やり込められてるわね。大丈夫かしら ?)



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