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01 恋も愛も知らないまま……

 

 可愛いと… 言われたことは なくもない。


 とはいえ、なんてたどり着けそうな気がしなかった。

 それどころか、その入り口にさえ入れなかったし、そんな兆しも出合いもなくって華やかな彩りもドキドキも、どこにも何にもなかった27年間だった。


 静かで孤独な喪女暮らし…


 ○喪女とは…  愛や恋にまったく縁のない、哀しい女子を呼ぶ隠語でございます。

 

 「あゝ、あのBLのような恋がしたい… 」


 ふとつぶやいちゃったけど、それが叶わないのは分かってる。

 まず入り口からして、男子じゃないしね。


 そんな腐女子でも何かひとつくらいは特技があるもので。

 

 そんなダメな私の唯一の特技は<人並み外れた勘の良さ>。コレで一気に量的緩和の大きな波に乗った。


そのおかげでホンのつい先日、駅近庭付き新築一戸建を手に入れたのよね。

おー ! 夢のマイホームですよ !


 ってのも、株やパペットコインとかの資産運用に大成功して、どういうことか総資産は数百億円になってたんだ。


真っ白な壁。新しくてキレイな建物。

幸せはとても遠く感じるけど、清々(すがすが)しく清潔な空間に身を置くといくらか幸せになった気がした。

豊かで幸せ。

 お金や権力とかはたいして興味も無いし、まあ無いよりは有った方が良いかな ? くらいに思ってたけど、たくさんあっても困ることはない。

 独り身だけど静かに、多少はキラキラした暮らしを送ってた ?


 ううん、正確にはこれから… 


 今までは貯めるだけ貯め、使うのも新しい住まいを満喫するのもこれから。セレブで素敵な人生を歩み出そうとしていたところ。


   そんな私、松波 愛莉。



ところが、コンビニでも行こうかとしたその途中で、突然大きなトラックが迫って来た……

   

ああ~死んだなこれは、と思った次の瞬間にはちょっと不思議な異空間 ? に居たんだ。

     

    

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 


    

そこは果てしなく続く、聖なる白い空間。


だだっ広いところに不自然に置かれた、四人掛けテーブルのイスに何故だか私は座っていたのよね。


そして向かい合った席にはウェーブのかかった長い金髪に碧眼の、とても美しい女性が頬杖をついていらっしゃった。



Jkのように気楽な感じで目の前にいたけどその存在感は普通ではなくって……



オーラってのかな ?


 とかく得体の知れない重圧に息をのんだ。その威圧感に少しばかりからだを強張らせてしまい、それは座ってる私の身を引かせるほどだった。


「こんにちは松波 愛莉さん。 私は女神イーリスよ !」


 ( はっ !? 女神様。 だけど…… )


「こんにちは ⤵⤵⤵⤵ あ~あ、この流れは異世界に転生 ? 転移 ? 」

 (とかかなぁ。もしそうだとすると…… )


 「そうよ~、正解 !

 話が早くて助かるわ。

 実はね……  こちらの世界のバランスをとる為に強い生命力を持った人に来てほしくて、あなたに白羽の矢が立ったのよ~ おめでとう ! 」


 「確かに病気もケガもほとんどした記憶はありませんが… 」


(うう〜。せっかく苦労して成功を勝ち取って、これから楽しもうかなってところだったのになぁ…

 ナニも楽しめないままで去らないといけないのかな ?

 一生懸命に稼ぐだけ稼いだけど、それを使うこともなく、恋することもなく、オトコ友達の一人もできなかったし、ず〜と清らかな身のままで……


女友達はそれなりにいたのよ ! だけど大きな家も、建てただけでナンにもできなかったし〜⤵⤵⤵


……それはそうとちょっとだけ軽そうな女神様ね !)



 「一応言っておくけど私はそんなに軽い女じゃないわよ。どっちかと言えば重い女ですから…… 」




(くっ、ヤバイっっ !? 

 なんで ??

 コトバにしてないのに…… ! 


 だけど重いって… 親近感を感じるわ。

 イヤイヤ、そうじゃなくて…  心を読まれたのかな ?

 この人、女神だけに侮れない !

 んっ ? 人じゃないのかな ?

 とっ、とっ、とにかく心を無にして真実を語らなければ… !!)



「え~~、コホン。 大変失礼しました。

 とても美しい女神様。

 実はせっかく現世で成功して、これからというところなのに、このタイミングで他所(よそ)へなんて行きたくないなぁと思い、少しマイナス思考になってしまいました」



「そっかあ。だけどゴメンね !! ここまで来ちゃったら今さら元の世界には戻れないのよね~ !」



(くう~ 戻れないのか~ ? やっぱり死んじゃったってことかクソ~、イヤイヤ。無よ、冷静に、心を無に…… )



「そこを何とかお願いできませんか ?」



「う~~ん、じゃあ今なら鑑定、転移、アイテムボックス、言語習得の転生4点セットに若い健康な体もつけるわよ♡」



「え~~ ? それって、全員にもれなくつけるようなお決まりのセットじゃないですか ?

 でっ、でっ、でも若いはちょっと魅力だけど…… 」



責める気なんてぜんぜんないんだけれど、少しだけ(いぶか)しんだ目で女神様を見てしまった。



「ええっ、うん ! じゃあスキル操作もつけておくわ !

 あっ ‼

それに元の世界で成功したっていうあなたの資産を、どうにかして持っていけたら良いのかしら ?」



「えええっ !?

 そんなことができるなんてスゴい… 、 、 、 だ… だったら異世界の方が楽しそうだし、喜んで行かせてもらいます ! 」

  

  

 結局、女神様の魅力的な提案に私はあっさり口説き落とされてしまった。

  

  

「ありがとうアイリちゃん、やっと心を開いてくれたのね♡」

  

  

「ごめんなさい。思い通りにいかないからって失礼な態度をとってしまいました」

  

  

(といっても、ここ数年は来る日も来る日もいくつもの液晶モニターのチャートとにらめっこしてたから、結婚相手どころか彼氏もいないし…… これから絶対に充実させようと思ってたのよ ! 現世では上手くできなかったけど異世界なら…… )

  

  

「良いのよ ! 特に魔王を倒すとか、これといって頼みたいことはないから自由にして構わないし、あなたの幸せを祈ってるわ !」 

  

    

 そのときだった。急に暗転してスゴい勢いで飛ばされていく感覚を覚えた。



あろうことか、気の早い女神様は説明もそこそこにさくっと異世界に転送しようとしている。



(うわあ~~、まだ聞きたいこともお願いしたいこともあったのに〜

 女神様~~ ! できるなら水と食料に不自由して飢え死にしないようにお願いしま~す !)



すると遠くから「分かったわ~ 」と聞こえたような気がした。


ホンの少し天然で残念なところもあったけど、要望も良く聞いてくれたし、とっても美しくて好感度の高い女神様だった。

    

   

          

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

     

     

さて、転移で送られたところは森の中。


 何だか服がダボダボになった気がする。

 少しスリムになったのか、崩れかけていたスタイルもシュッとして、お肌にはハリが出たような気がした。    


(あゝ !? ハリが ???

 そっ、そういえば確か若い体って聞いたわ !

 そうよね ?!)


じんわりと自分自身を納得させるように、心の中で念を押して年齢を確かめようとすると、そうイメージしただけで目の前のやや左上にステータスウィンドウのようなものが現れた。

 そしてそこにはなんと16才と表示されていた。


「うわ ! やった〜 ! 

 16才ゲットよ〜〜 !!!」


歓びの声をあげて、コブシを握り締めた。

異世界に来たことや女神様に出会ったことよりも若返ったことが何よりも嬉しかった。

    

      



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