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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

義姉と義弟の人生〜色々な誤解が積み重なって、最終的に弟がヤンデレになってしまいました。

ヤンデレ弟です。


*義姉上の人生


ある日義弟ができた。母親が死んで、父親に後妻が来て、連れ子だった。

私はいい修行仲間ができたと思った。というか弟子か。

私は貴族令嬢であるというのに、母親が病気で、茶会に参加することもなかったため、同年代の女性のお友達なんていなかった。

3歳離れた義弟を、常に連れ回してボロボロのボコボコにして、毎日泣くまで連れ回した。

ある日ついに根を上げた義弟が、母親に泣きついたため、私は義弟を虐めている疑惑がわき、そこから継母から徹底的に嫌われてしまった。

部屋に3日間閉じ込められ、食事を一日一食にされてしまった。

私は痩せた。

父親から疎まれていたわけではないが、領地経営で忙しい上、貴族の子供なんてものは子供部屋という名の別むねに分けられて、使用人に育てられているので父親は気づかなかった。

一方義弟の方はというと、養子とはいえ念願の長男ということで、跡継ぎ教育が始まっていた。義弟は私に連れ回されなくなったその時間を教育係に全て独占され、寝る間も惜しんで教育された。

私も経験があるので分かったが、あまりいい教育係ではないのだろう。義弟の手の甲はいつも赤く腫れていた。間違えるたびに物差しで打たれていることは明らかだった。


ある日私は義弟の教育係の椅子の上にナメクジを何匹も乗せて置いてやった。

教育係は私を打ったが、それを毎日繰り返してやった。

しばらくして教育係はやめた。

新しく来た教育係は義弟の手を叩かない男だったので、私は悪戯をやめた。


ある日義弟の部屋から小さな悲鳴と何かが割れる音がして、覗き込むと、ふしだらなメイドがベッドの上で義弟にのしかかっていた。父親の寝室によく呼ばれているメイドだと、厩舎の中で噂話を聞いて知っていた私は、部屋に入り、メイドの髪の毛を掴んで引きずって部屋の外に連れ出した。

初心な義弟が完全に怯えていたので、この部屋に入り込むのはやめろと伝えた。父に教えるぞと言うと、平謝りして出ていった。


数ヶ月後にメイドは身籠ってやめた。

父の子かどうかはわからなかったが、とにかく家は平和になった。


学園に入る頃になると、私は領地の外れに作られた別邸に移された。

家を継がないのだからこれ以上の教育は必要ないだろうと言う事だった。

しばらくして使用人の噂話で、義弟と私が同じ家に暮らすのはまずいという意図があって私はここに移されたようだった。

どう言う意味かはすぐにわかった。あのメイドの様になったらまずいと言う事だろう。

望まれないのにそんなことをするわけがないだろうと思ったが、その不満をぶつける相手はこの屋敷にはどこにも存在しなかった。


3年後に義弟が学園に入学した日の午後、私のところに突然義弟が現れた。


「義姉上、なんで学園に通っておられないんですか」

「私は学園に入学していないわ。ずっとこっちにいるのよ」

「なるほど」


 義弟は少しの間黙り込んだ。


「僕が学園を卒業したら、迎えに来てもいいですか?」

「いいわよ」


 義弟は納得したのか帰っていった。



 5年経った。

 卒業式だと言う話は使用人達の噂話で聞いていたが、その日のうちに義弟は現れた。

「義姉上、迎えに来ました」

「いらっしゃい」

「行きましょう」

「どこに行くのかしら」

 義弟はにっこり笑った。連れ回していた最初の頃に見た笑顔だった。思えば、結構一緒に暮らしていたのにこの笑顔はあれ以降見たことがなかったなと思った。

「僕らの家ですよ」

 義弟は無邪気に言った


 馬車の中で義弟が言った。

「義姉上、結婚しませんか?」

「誰か紹介したい方がいるの? 私で大丈夫かしら」

「大丈夫ですよ。姉上はとても素敵な人ですから」

 義弟は笑って私の手のひらを握りしめて、親指で撫でさすっていた。

「それじゃあ、私その方に嫁ぐわ」

「とても嬉しいです」


 家に着くと、とても多くの使用人がずらりと並んで出迎えてくれた。

「おかえりなさいませ、旦那様、奥様」

 私は首をかしげた

「みんな、結婚式はこれからだ。まだその呼び方は気が早いと思う」

「これは失礼いたしました。」

「みんな私の顔を忘れてしまったのかしら、誰かわかっていないんじゃない?」

「式は今日の午後からだよ」

「そう、それでお相手は?」

「もちろん僕さ」


 私は言葉をなくした。

 少し考えた。

「確かに、実の姉弟ではないのだから、いいのかしら」

「ええ、もちろんですよ」

 両親の危惧は実際の事だったのかもしれない。


 義弟はとても嬉しそうだ。

 私も微笑んだ。

「では式が終わったら、名前で呼び合うのでしょうね?」

「僕にとって義姉上は義姉上ですよ」



「お父様と義母様は?」

「いませんよ」

「どうしたのかしら」

「5年前からおりませんので、どうしたのかはわかりかねます」

「なんてこと、その間5年間はあなた1人でこの家を切り盛りしたの?」

「ええ、そのくらいの代償は払いました」

「これからは2人でやっていくのね?」

「ええ、もちろんです。我が最愛の義姉上」

「あなた今幸せ?」

「ええ、これまでで1番幸せです」

「それは良かったわ」



〜〜〜

*義弟の人生



僕はとても後悔した。

つい自分の体力がなかったばかりに、母上に義姉上と遊ぶのは大変だとこぼしたばかりに、義姉上と遊べなくなってしまった。

僕にとって義姉上は、始めて遊べる同世代の子供だった。

それなのにそれを自分から手放してしまった。

そのことの罰のようにそれからは一切遊ぶ時間がなくなり、教育係の冷たい大人に四六時中見張られる生活になってしまった。

教育係は厳しく、間違えたことをするとすぐに物差しで手の甲を叩かれて、僕の手のひらはいつだって真っ赤に腫れていた。

でもこれは義姉上の手を離してしまった僕に対する罰だから、仕方ないのだと思っていた。


それなのに、ある日義姉上がその教育係を退治してくれた。

僕の真っ赤な手の甲に優しく軟膏を塗ってくれた。


代わりにやってきた教育係は、暴力を使わない男で、僕の生活はとても楽になった。

義姉上は僕のことを、見守り、守ってくれた。


いやらしいメイドも、追い払ってくれた。

僕は義姉上以外の女に触られたくなかった。僕が嫌だと思うものは、ことごとく義姉上が罰を与えてくれた。


いやらしいメイドが子供を孕んでやめさせられたとき、男の使用人に子供の作り方を聞いた。

男女間のことがわかって、僕は義姉上以外とはしたくないと言うと、使用人は実の姉弟ではないのでそれも可能だろうと笑って教えてくれた。


僕たちは平和だった。

僕の周りで何か起こっても、義姉上がいつの間にか対処してくれた。

僕はとても大事にされていると感じていた。

毎日義姉上を想ってから眠りについた。


義姉上が学園に入学するときが来た。

義姉上は家の中からいなくなってしまった。

寮に入ったのだ。

顔を見ることだけでもこれまでは贅沢だったのだと思い知った。

義姉上のことを毎日思った。

義姉上と結婚する夢を何度も見た。

学園を卒業したらその夢を実現させようと決めた。


自分がついに学園に入学するときが来た。

学園に行けば義姉上と会える。

僕はワクワクしながら入学式に挑んだ。

義姉上はいなかった。


僕は家に帰り、義父上を問い詰めた。

義姉上は素行不良で退学処分になったので、遠くの屋敷で隠れ暮らしていると言われた。

義姉上のところに急いだ。

久しぶりに会えた義姉上は質素な佇まいだった。

僕は怒っていて、つっけんどんになぜ学園にいないのかと聞いた。

義姉上は入学していないと言った。

義父上は嘘をついたのだ。


僕は家に帰って3人で食事をしながら義父上と母上に言った。

「学園を卒業したら義姉上と結婚します」

2人は憤慨した。あの使えない女はお前のことをやはりたらし込んでいたのか。と喚き散らした。

これまでも何度も僕の教育を邪魔してきたのだと2人は説明した。

僕のことを妬んで、僕の教育係を虐めてやめさせたり、僕のメイドをいびったりしたのだと言った。

あれは僕を助けるために嫌な奴らを追い払っていてくれたのに、2人は全然僕たちのことを理解していなかった。

義姉上のことを理解していないのは2人の方だと諭したが、ますます口汚く僕の義姉上を罵るばかりだった。


僕は我慢できなかった。


次の日から2人はいなくなった。

寮に帰って数日したら、実家の使用人達から帰ってきて欲しいと知らせが来た。

両親2人ともが突然いなくなったので、領地経営をしなければいけないと言うことだった。

転移魔法が使えたので、仕方なく学園には実家から通うことにした。

家にいる間は仕事を、学園にいる時は勉強を。

僕は忙しかった。


やっと5年経つ頃には、使用人はしっかりと僕を主人として扱い、卒業式の日に、「義姉上を連れて帰ってくる。その日のうちに教会で結婚式を行い、妻として迎える」と改めて伝えると、全員が喜んでくれた。


僕は義姉上を連れて帰った。

義姉上のためならなんでもできると誓った。


義姉上とやっと、一緒に暮らすことができる。

これからはいつだって一緒にいられるし、もう邪魔者はいない。

僕はとても幸せだった。

僕が幸せだと義姉上は喜んでくれる。



しばらくして、すぐに子供ができた。

義姉上が僕の子供をお腹に宿している。

長年の夢が叶った思いだった。


これからもずっとずっと

一緒だね。

義姉上。

読んでいただき、ありがとうございました。

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[一言]  はじめまして。初コメ(?)です。  こんなご時世ですが、体調には気をつけて下さい。  〜感想〜  面白かったです。  あの両親が居なくなった(失踪した)のは、もしかして使用人達の…
[良い点] ヤンデレなのに、さらさら読めた。 作者様凄い( ☆∀☆) この熱すぎず、緩すぎない、温度感がくせになります。 全作品読ませて貰いましたが、全部好きです。 守る騎士系ヒロインと、守られる…
[良い点] 最後が幸せになって良かった。 姉が何事もポジティブにとらえていたのが救いかな。 [気になる点] この家には家令や執事長がいないのですか? 義母による虐待を実父が知らないなんて、高位貴族と…
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