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14.マリアの夜会デビューは四人で

「そんなのダメです!」

「マリア様?」

「私、夜会デビューはイーディス様とお揃いのドレスが良いんです。だから変わったら嫌です」

「そういう合わせも出来るのね! 盲点だったわ。早速今から考えませんと! その夜会で一番可愛いデザインにしましょう!」

 なるほど、その手があったか! 社交界に長年お友達がいなかったため、合わせるという選択肢が頭から抜け落ちていたが、マリアとのお友達アピールが出来ると思うとドレスも悪くない。どの小説を参考にしようかと頭をフル回転させる。考え込むイーディスにバッカスは呆れた視線を向ける。

「変なのに目を付けられないようにほどほどにな」

「マリア様に喧嘩をふっかけてくるような方がいらっしゃったら、私とキース様がどうにかします!」

 思い切りキースを巻き込んだイーディスだったが、彼は当たり前だとばかりに深く頷いた。

「任せろ! マリア、イーディス嬢、好きなデザインを選ぶといい」

「……その時は俺も協力してやるよ」

「本当ですか!?」

「ありがとうございます、バッカス様!」

「それでデビューはいつ頃になりそうなんだ?」

「結婚の準備もありますから結婚後、ですかね?」

「さすがにギルバート家の妻にちょっかいかける馬鹿はいないだろ……」

 幼少期のマリアならともかく、学園ではキースがずっと一緒にいるのだ。彼の溺愛に気付かぬ馬鹿はいないだろう。それにギルバート家に喧嘩を売るなんて大陸中を敵に回すようなものだ。イーディスの場合、キースがマリアを泣かせたら迷いなく喧嘩をふっかけるが、そんな覚悟がある者などなかなかいないだろう。過去に散々嫌みを投げつけていた彼女達なんかは今頃冷や汗をかいている頃かもしれない。

「でも一緒にいたいですわ! 四人で一緒のアイテムを身につけましょう!」

 何がいいでしょうか! とはしゃぐマリアは本当に幸せそうだ。イーディスはノートを広げ、彼女が挙げていくアイテムを記していく。羽根や花など簡単に揃えられそうなものから、宝石が埋め込まれた懐中時計に装飾の凝ったピアスまで。やがて服装も揃えましょうかと言いながら、マリアは自分のノートにさらさらとデザインを描き出した。「幸せの模様をふんだんに描いて」と呟いていたが、これは何の模様だろうか。植物の蔦のようだが、羽根のようなものも生えている。イーディスはこの模様をどこかで見たような気もするのだが思い出せない。何かの小説に登場していたのだろう。集中しているマリアに尋ねるのは憚られ、イーディスは次々に描かれていくデザインを見守ることにした。

「俺、他国から招待が来そうな伝手ないんだが」

「ギルバート家の夜会に招待しよう」

「ますます喧嘩ふっかけられないだろ! でもそうなると再来年以降か」

「? マリア様達の結婚は今年中に行われますから来年以降では?」

「ギルバート家はゲートを管理する一族だから聖女の儀式が終わってからしばらくは忙しいんだよ」

 ゲームでは儀式が終わってすぐに婚約解消だの断罪だのラストイベントに突入していたが、現実はそうサクサクと進まないらしい。そういえば儀式前も準備だのなんだのがあると書かれていたし、後処理だの何だのがあっても不思議ではない。

「なるほど。そういえばその聖女様――メリーズ様を全く見かけないわよね。あんなに目立つのに」

 噂だけは耳にするのだ。けれどあの特徴的な髪を見たのは入学式だけ。いくら同じ授業を取っていないからといってここまで見かけないことがあるだろうか。登校時間は被らないにしても下校時間は近いはず。それに教室移動や昼休みだってある。リガロと海に行ってからは妙に気になって、窓の外や廊下などを軽く探してみたりはしている。けれどやはりイーディスの近くにメリーズの姿はない。一学期もそろそろ終わる。シナリオ通りならば彼女もそろそろシャランデル家の娘として夜会に顔を出す頃合いだろう。その前に少しでも情報を聞き出しておきたいと思って切り出してみたのだが、想像通りというべきか、キースは視線を泳がせ始めた。


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