魔法の授業
あの後彼女から「これからは親しみを込めてベアとお呼び下さい。」と言われたのでそう呼ぶ事となった。
ボクのやらかしがあったとはいえ縁談は何とか上手くいったみたいだった。
それから前世があった事を部分的に思い出せるようになった。と言っても名前と刀の扱い方くらいしか思い出せないんだけどね。
今日は母上から魔法の手解きを受けています。
この世界の魔法は火、水、風、雷、土の5大属性に更に光、闇、空の上位3属性があって、昔は空間属性と言われていた物が縮められて空属性になったと言われています。
母上としてはいざという時のために空間属性を使いこなして欲しいみたい。
「空間属性は基本的に場所と場所を繋ぐ魔法です。繋ぐ時には何か目印になる物が必要になります。今日お父さんは何処に行くかおぼえてる?」
「確か外れの砦に向かうって朝言ってたような……。」
「正解です。よく聞いていましたね。時間的にはそろそろでしょうか?これから実際に使うので全身で魔力の動きを体感して下さいね?私は詠唱しますけどキチンとイメージが固められるなら魔法は全て詠唱しなくてもいいのは心に留めておいてね。」
そして母上は杖を出して、
「此方と彼方、境界は揺めき捩れて繋ぐ、彼の指輪の元へーーー!!」
母上から濃密な魔力が出て入り口のような物ができると共に使われていない方の魔力が砦の方向に向かっていくのがはっきりとわかりました。恐らくあれが出口側の扉になるという事も。そして母上の詠唱の中に指輪とあったので父上の指輪に目印になる何かがあると推測できます。
「さぁ、行きましょうか。あまり長時間は開いていられないのでささっとお手伝いしましょうね。」
ゲートを開いたこの場所は物資置き場、母上の魔力では15分以上の維持は困難らしいのでとにかく入ります。
「おっ、来たかアイネ。そろそろだとは思っていたが少し遅かったな。」
「クオンに魔法の授業として見てもらっていたのですよ。クオンいらっしゃい。」
「父上〜。」と言って抱きつくと頭をわしゃわしゃしてくれました。
「さぁ、時間が無いから一気に運ぶぞ!!」
兵隊さんと一緒に物資を砦に運び込んでいると砦側の入り口が揺らぎ始めました。母上もかなり辛そうにしています。
「物資運びは終了だ!現時点で王城側にいる者はそのまま待機せよ!!」
と父上が指示を出すと空間魔法の入り口は霧散して行きました。そして後の業務を砦部隊の隊長に引き継ぐと馬車に乗って砦を後にします。
砦からの帰り道、母上は父上に寄りかかって眠っています。なので父上に疑問に思っていた事を聞きました。
「母上は父上の嵌めている指輪を目印に繋げていたと思うのですが、何か仕掛けがあるんですか?」
「正直なところはわからんが、私が16の時にこの指輪を渡されてそれから毎日のようにうちの王城に遊びに来ていたのは確かだな。だが、指輪には魔力は込められていないな。」
「うーん……。何となくわかった気がする。父上ありがとうございます。」
「魔法の練習となると杖が必要になるか……。大体一生物となるが母さんと一緒に決めておくんだぞ?」
「はーい!」
こうして魔法の授業は終わりのんびりとした帰宅の時間を過ごして行くのだった。
お察しの通りアイネの血を混ぜて作った指輪です。
病んでるわけじゃ無くて効率の為に作った指輪ですね。