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Spiritsoul・Overlay  作者: ゆーしゃエホーマキ
~十神銀花の章~
2/12

第1話【私はこれから“この人”の心臓で生きる】

2103年、日本は遂に“心臓”の移植手術に

成功した。

ただ海外ではもはや当たり前となった臓器移植手術。

人々は「やっとか」と言ったように、それを深く考えなかった。

しかし、皆は気にしてないが、どうもおかしいのだ。

そう、ニュースにまでなったというのに

その心臓を移植した患者は公表されなかった。


―――そして7年後、もともと病気にかかりやすい

私は心臓が悪くなり、心臓の移植手術を受けることになった。


「……………………」


手術は想像していたよりも呆気なく終わり。

本当に手術されたのかと思うほど身体も縫い目1つ無い。

これには感心するが、麻酔がまだ抜けきっていないのか頭がボーッとする。


「銀花ちゃん! 無事終わって良かったわね~!」


そう看護師のおばさんが嬉しそうに言った。このおばさんとも長い付き合いだ。

そもそも私は身体が弱い、というより運が悪い。

数年前にも、車や自転車に跳ねられ手足を骨折したり、食中毒になったりといろいろとこの病院にもお世話になっていた。


「……失礼します」


病室の扉がノックされたと思ったら、男性の医師が入ってくる。


「えー、十神 銀花(とおがみ ぎんか )さん、無事手術は終わりましたが、心臓移植なんて滅多に無いのでまだ何かあるかも知れません、すみませんがあと1週間ほどは入院ですね」


そう男性医師は言うと、最後に「よく頑張ったね」と微笑みながら言って退室した。


「それじゃあ私もお仕事あるから、少ししたら晩ご飯持ってくるわね!」


私はコクリと頷き。窓の外を眺めた。

もうすぐ日が沈み始める。

……そんなとき。


「君は知ってるかな?」


と、いつの間に居たのか、誰かが病室のベッドの横に座っていた。

ただ、麻酔が抜けきっていないので姿はぼんやりしていた。


「えっ……と……」


「あぁ! 無理しなくていいよ! 僕がちょっと喋りたいだけだから、気にしなくていいよ」


そう……恐らく男性の人が言った。


「それにしても、銀髪なんて初めて見たな……」


と、この人は私の髪を撫でる。優しい手で、ゆっくりと。

そう、私の髪は銀髪だ。染めてなんかない、天然の銀髪。これもとある病気らしいが、人体に影響は無い。


「……瞳も明るいね、ってあれ? もしかして僕見えてない?」


「……うん」


「あはは~、まぁそっか、って話がズレちゃったね、えーっと……そうそう! 臓器移植について話そうとしたんだ!」


そう思い出したようにこの人は言った。


「僕も長くはここに居られないから、手短に話すよ?」


そう言って、この人は話始めた。


「臓器を移植したら、趣味や性格が変わった……なんて言う話は……かなり前から聞いてるよね?」


その問いに私は頷く。日本でも臓器移植が簡単に出来るようになってから、そういう話は多くなった。例えば絵が下手だったのに手術後、驚くほど絵がうまくなっていたり。急に走りたくなって走ったら、以前より速く走れるようになっていたりと様々だ。


「じゃあその臓器に、元の持ち主の魂が宿るっていう話は……聞いたことあるかな?」


そんな話も、噂で聞いたことはあるが。どれも嘘だと皆口を揃えて言う。


「君のその心臓にも魂が宿ってるかもね! ははは!」


すると、小さいが外から足音が聞こえてくる。多分おばさんが晩ご飯を持ってきたんだろう。


「おっと……時間みたいだ、じゃあ最後に……」


そう言って、この人は私の胸に手を当てると。


「僕の心臓、大事にしてね」


そう言われて、私はパッと頭が覚めた。だがそこには誰も居なかった。


「あら! 麻酔が完全に抜けたみたいね! はい、晩ご飯、ちゃんと残さず食べるのよ!」


おばさんが晩ご飯も持ってきてそう言う。


「あの、さっき男性の人が居ませんでした?」


「ん~、廊下には誰も居なかったわよ? 夢でも見てたんじゃない?」


そうおばさんは言うと「それじゃあね」と言って退室した。


「…………」


夢、そう思ったが、あの時頭を撫でられた感覚はまだ残っている。


「もしかしたら……“この人”、だったのかな」


私は自分の胸に手を当て、そう呟いた。トクン……トクン……と、動く心臓は、とても暖かかった。

窓の外を見ると、綺麗な夕陽が私を照らしていた。




***




そして同時刻。あるビルの地下に中学生くらいのやんちゃそうな少年と、髪の長い高校生の少女。そしてリーダーらしき眼鏡をかけた成人の男性が居た。


「……マジか、奴らが動き始めた」


そう少年はパソコンを見ながら言った。


「ボク達だけじゃあ力不足かも知れない……もう少し様子を見よう」


と、リーダーの男性が言う。


「……確かに、“戦闘系能力者”は私だけだものね」


そう高校生の少女が自慢気に言う。


「ん……? おい待て! 居た、居たぞ!」


と、少年がパソコンを凝視しながら言う。


「うるさいわね……な、何が居たのよ」


「能力者だよ! 数年ぶりだ! 見つけたオレに感謝しろよな!」


と、少年はドヤ顔で言う。


「待て、その能力者は味方か?」


「え、いや……そこまでは……」


リーダーが聞くが、流石にそれはわかりかねる。


「仕方ないわね……私が見てくるわ」


「よろしく頼むよ、笹木(ささき)君」


すると笹木という少女は素早く制服から、戦闘用のスーツに着替える。


「ハチ、これ使えるよね?」


「え、あぁ、バイクか、使えるけどガソリン入れてからな……あとオレは八田(はんだ)だ」


「いいじゃない、ハチのほうがわかりやすいわ」


そう言った笹木はガソリンを入れ始める。


「ったく、どう思います? 待田(まちだ)さん!」


「ボクはいいと思うな、ハチ君」


待田というリーダーらしき男は、そう言うとパソコンを見始める。


「それよりボクらは情報収集だ、ボクの能力は戦闘向きじゃないからね」


「いや、待田さんの能力は……確かに攻撃力は無いっスけど……」


「ほらほら、早く手を動かす!」


そう言いながら待田はパソコンを素早く打つ。


「じゃあ行ってきますね、待田さん」


「あぁ、うん、敵対してきても殺さずに、捕獲してきてね」


「はぁ~い」


笹木はバイクに跨がり、ヘルメットを被り、大きなエレベーターに乗り込む。


「エレベーター上昇……っと」


八田がパソコンを操作すると、エレベーターが上昇し、ビルの駐車場で止まった。


笹木 美緒(ささき みお )、行きまーす!」


『一人で何やってんだ、バカみたいだぞ』


「なっ……良いでしょ別に!」


ヘルメットから八田の声が聞こえてくる。


「ていうか、さっさとナビしてよ」


『都内の病院だよ、そこそこ大きいやつ』


「あぁ、あそこね……わかったわ」


『いってらー』


そうして、笹木美緒はバイクを走らせ、病院……十神銀花の元へ向かった。

登場人物


十神銀花

“この人”

笹木美緒

八田 (ハチ)

待田

看護師のおばさん

男性医師

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