第七章『卒業』
連作の詩『高校』第七章です。
卒業式は、人生で一番楽しみな日でした。
一年生の時、先輩の卒業式に行きました。卒業式とは、悲しいものだとてっきり思っていたのに、そこに流れていた空気は幸せそのものでした。
本当に完全な幸せなのか?少しも悲しくはないのだろうか?
不思議に思ったのを覚えています。
自分が卒業する立場になってみてわかりました。友達も、ずっとこうやって皆で写真を撮ったり話していたいと言っていて、心から共感しました。卒業式は、私にとって、完全な幸せでした。
『卒業』
気づいたら終わってた
エンドロールみたいに つらつらと名前が流れ
仰々しく飾られた舞台の上の 卒業証書が減っていった
仲間がみんな頼もしく見え、なんて よく言うけれど
ひとりひとりの様子を見るのが面白くて そんなことも感じなかった
三年間をぎゅっと体に詰め込んで
思い出を瞳に映しながら 舞台を降りる
最後の校歌が口から溢れ 講堂が一つになる
大きな声に吸収されて 私も歴史の一部になった
式が終わると写真を撮ったり むしろこちらがメインだけれど
それぞれの場所で青春を刻む
そのそれぞれが つながって、ひろがって
高校生活の象徴となる
「起立、礼」「「ありがとうございました」」を
やけにていねいに言ってみたりして
教室で 日常で 切り取られた時間は いつまでもカメラの中で笑うだろう
この想いが形を作り
いつかこの日を振り返ったら また新しい想いが形を作る
一日を振り返ると いろいろあったが
その瞬間が駆け抜けていき
そこにいるときはわからなかった 終わりがくるのがわからなかった
きっとそれほど幸せだった
気づいたら終わってた
一番幸せな今日にさようなら