3話
『おはよう!』
校門前に着くと、生徒たちが口々に言う。
とはいえ、私に用のある人間はいないわけだから、私には関係のない言葉なのだけれど。
靴箱で上履きに履き替えると、長い廊下をとぼとぼと歩いた。
教室に向かうにつれて足が重くなっていくのを身をもって感じた。
私にとって学校とは、逃げ場のない世界に閉じ込められているような、憂鬱な気分になる場所でしかない。
『青春』と聞けば考えることは学校での生活だったり、学校の友達と遊んだことだったり、異性との恋だったり。大半が学校のことになってくる。あくまでも私の考えなわけだから、勿論例外もあるが。
確かに、体育祭や文化祭などの活発で楽しい学校行事が豊富にあったりすることで『青春』の充実を感じるのかもしれない。
しかし、その一方で厄介なのは校則ということになってくるだろう。
指定の制服でないといけないという校則ならまだ分かる。
私の住んでいる周辺の学校は全域で小学校の頃から指定の制服でなければならなかったから。
だけど、わけのわからない校則もある。
女子でいうと、スカート丈だったり、メイク禁止だったり。リップクリームでさえも禁止だったりする。
しかし、その中でも最も難しいのは、『高校生らしい生活を心がけなさい』なのかもしれない。
そもそも高校生らしい生活とは何のことなのだろう。
気に入らなければ結局、『高校生らしくない』と難癖付けていくらでも規制することができる校則になっているではないか。
なんだかんだ言って難癖をつけ、生徒を支配する。
好き勝手に校則を作り、その校則に乗っ取って学校を運営する姿は独立国家のようだ。
なぜなら、生徒が校則に口を出すことはできないからだ。
口を出したところで指導されることは分かっているから、結局言う人はいない。
そのため、根拠のない無意味に思われるような校則が残り続けていくというわけだ。
その中で『青春』という楽園を作り出す学生は、ある意味、発明家だと思う。
その発明が若者に楽しみを与えたのは確かだった。