19話
あの時、自分の身体が自分の意志で動いていないような感覚になった。
自分のしたいことも分からなかった。
ただ、一つの指名に立ち向かっているような気持ちになった。
思っていたより学校には早く着いた。
そして、無我夢中で鈴木君を探した。
委員会のはずだから図書室にいるよね、と特に考えもせず図書室へ。
ほとんどの生徒は、部活か帰宅の二択になるため、校舎に残っている者はほとんどおらず、あたりは静まり返っていた。
しかし、図書室に近づくにつれて、声が聞こえてくるようになった。
すると、女子の笑い声が聞こえた。
でも、だからこそ鈴木君がいるんだと思った。
鈴木君の周りにはいつも鈴木君の友達がいたから。
だって、鈴木君はクラスの人気者なんだもん。
私は、図書室の中へ入って言った。
その時、少し嫌な雰囲気を感じてはいたが、鈴木君のことしか頭になかったため、特に気にすることはなかった。
嫌な予感は的中した。
そこに鈴木君の姿はなかったのだ。
あったのは、私をからかっていた女子たちの姿だった。
すると、嫌なことばかりがフラッシュバックしてきた。
だから、またからかわれるんじゃないかと思い、逃げようとした。
しかし、そこで女子に気付かれてしまった。
気付かれてしまったから終わりだ、と思った。
なぜなら、私は何も言い返すことができないから。
「はい」と言って逃げることしかできないから。
女子の目が怖かった。
その目は、今にも人を襲いそうな肉食動物みたいな表情をしていた。
私は抵抗なんてできるはずもなく、ただただその場に立ち尽くしていた。
女子たちは私に牙を向けてきた。
『勇斗を探しに来たのかよ。』
『勇斗とお前が釣り合うわけねぇから。』
『勇斗を振り回すのやめてよ。』
確かに妥当な主張ではあった。
私は鈴木君といれる時間に甘えていた。
私にとって鈴木君が大切な存在であったように、鈴木君にとっての私の存在も大切なものだと、勝手に決めつけていた。
鈴木君にとって私はどんな存在だったのだろう。
恋の湖に溺れて、周りのことを考えられていなかった。
しかし、妥当な主張だとはいえ、その心ない言葉は容赦なく、私の心に棘となり刺さっていく。
私は嫌がらせを受けた人に対して、すぐに拒否反応を起こしてしまう。
今もだ。
無意識に一歩一歩と後ずさり。
やめようとしても身体が命令を聞いてくれない。
このままだと再び引きこもる生活が始まる、と思うと絶望する反面、嫌な人間と関わらなくていい、という嬉しい考えも浮かんできた。
だが、逃げてしまったら過去と何一つ変わらない私になってしまう。
もう、嫌なことから逃げ出す自分には戻りたくなかった。




