16話
鈴木君と喧嘩をしてから、委員会には行かなくなった。
なぜなら、気まずい雰囲気になるのが嫌だったし、鈴木君に嫌われたと思うと怖かったから。
喧嘩のことを思い出すと、なぜ喧嘩してしまったのだろう、と思ってしまった。
『親しき仲にも礼儀あり』という言葉があるように、私も礼儀に気を付けておくべきだった。
もしかすると、鈴木君と仲がいいと思っていたのは私の思い込みに過ぎないのかもしれない。
鈴木君は私のことを同じ委員会の一人としか思っていなかったのかもしれない。
だって、鈴木君はクラスの人気者だから。
だから、クラスの埃のような存在と仲良くしてくれるわけがない。
気付けば、物事を否定的にとらえることが私の特技となっていた。
この前、初めて、鈴木君に強く口答えをした。それは、喧嘩という名の口答え。
普通は目上の者に逆らって言い返すことを口答えというのだけれど、私にとって同級生は目上のような存在だから、口答えの一種に含まれるだろう。
鈴木君はあの直前、私を守ってくれたのになぜひどいことを言ってしまったのか。
卑怯なのは私で、鈴木君といられる時間に甘えていたのも私だった。
鈴木君のことが信じられなかった自分を悔やんだ。
その一方でこんな考えも心にはあった。
鈴木君と話さなくなれば、からかいの標的からも逃げられるかもしれない、という甘い考え。
結局、そんなことはなかった。
根拠のない、ただ単純な逃げ道に過ぎなかった。
考える前に、逃げ道を開拓しただけだった。
最初のうちは鈴木君と言葉を交わさずに済んだため、気が楽だった。
鈴木君に支配されているような気持ちには全くならず、自由に大空を羽ばたいている鳥のような気持ちでいることができた。
この瞬間が続けばいいのに、と思っていた。
しかし、2週間程口を交わしていないともなると、心の奥でムズムズする感情が込み上げてきた。
一度は『嫌い』だなんて思ったりもしたけど、その頃はただ、鈴木君のいる日常に甘えていたばかりに自己を見失っていたからこその思いだったはずだ。
鈴木君は、『好き』という気持ちに私のこれまでの人生で初めて気付かせてくれた大切な人なのだから。
今、後悔なんてしても遅いけれど、取り戻せるならば鈴木君との日常を取り戻したかった。
私は後悔の念に駆られていた。




