1話
他人に思いを伝えることが苦手で、気付けば利用される人間になっていた。
その自分の姿は、まるで他人に仕えるために生まれてきたロボットのよう。
『幸せなんてなくったっていい』
いつしか、そう考えるようになっていた。
言いたくなくても『ハイ』と言えば、生きづらい世の中をなんとか生きていける。
生きづらいこの世界で私の見つけた、唯一の光だった。
人々は、親友や友達は『1番の良き理解者』だなんて根拠のないことを言うけど、本当にそうなのだろうか。
確かに、『四六時中一緒にいるから』とか、『大体の秘密は知っているから』だとか、理由はそれなりにあるかもしれない。
だからとはいえ、本当にそうなのだろうか。
頭の中で疑問符が乱舞していた。
こんなことを考えているわけなのだけれど、友達の少ない私の言えることではないと思ったために、考えていることが後ろめたくなった。
親だってろくなことを言わない。
『あなたのためよ』だとか『損するのはあなたなんだからね』だとか、文句をつけては子供のプライバシーにずかずかと入りこみ、子供の心の中を散らかしては出ていく。そして子供を自分の支配下に置こうとする。
そんな世界だからこそ、ため息を吐かずにはいられない。
『世界はどうしてこんなにも生きづらいものなのか』とつくづく思う。