第1話 異世界大戦
時は2374年、地球は人で溢れ、食糧難や治安の悪化などの問題に陥っていた。 地下や火星への移住も行いもう後がなくなったと思われたそんなとき、人類はこの危機的状況を打開する技術を発見した。
“空間操作システム”。空間を捻じ曲げ、南極や月面、たとえ異世界や太陽系外でも移動できてしまう技術だ。
その技術を用いて、人の住める世界を探し、発見されたのは、 地球とさほど変わらない青と緑の美しい惑星。人々はその星を第二の地球、“スフィア”と呼んだ。
そして11年後、各国の政府が結託し多大な予算をつぎ込んだ一大プロジェクトが開始された。
“異世界移住計画”。いくつかの試験を通り、どんな環境にも耐えられるよう改造手術を受けた500人の開拓団とあらゆる状況においても適切な判断が可能な50体のアンドロイドが訪れ現地の言葉を学習し、異世界人と交渉することで移民を送るという計画。
しかし、この計画はとある出来事をきっかけに多くの犠牲者をだした戦争へと変わった。
『開拓団の団員が異世界人に殺された』
それを理由に開拓団は異世界に宣戦布告した。もちろんなんの武器もなしに戦争を吹っかけたり、開拓団が全員戦闘経験のない一般人で構成されているわけがない。 確かに団員の約5割は、地上での生活を夢見た地下暮らしの人間だが、残りの5割の内、4割が軍人、1割が身寄りのいない10代半ば以上の子供で構成された“チルドレン”を起用した。
さらに、これを想定していたかのように各自にアサルトライフルなどの武器が支給されていたり、改造手術では環境への適応能力だけでなく、筋力と五感までも底上げされていた。たとえ、戦闘経験がなくとも、一人一人が一般の兵士10人分の実力を有している。
しかし、この大戦は地球側の敗北で幕を閉じた。敗因は二つある。 一つは戦車やミサイルなどの兵器を一切所有していなかったため。そしてもう一つは、異世界側で異能の力、いわゆる魔法が発展していたからだった。
異世界人は魔法を用いて、時には灼熱の業火を、時には無数の光の矢を放ち、そして時には自身の身体能力を上げ、改造人間や銃と互角の勝負をした。
最終的には、開戦して一年ほどたったある日、地球側がアジトとしている船の居場所が知られ、急遽撤退。大半の兵士達を残して地球へ逃げてしまい、異世界側の勝利となった。
そして、2年の月日が流れた。