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ゲームの好敵手

作者: 黒帽子

俺の名前は中村なかむら明人あきと

ごく普通の高校一年生だ

俺の通っている高校は男子校だが

男子校だからか、ほとんどが女性の話をしている


「なあ、この前の女の子誰よ?」


「ああ、妹」


生徒達のほとんどが女性に飢えていた


「残念なやつばっかだな」


ため息を吐くと後から小突かれる


「お前もそのうちの一人だろうが」


コイツは唯一俺が話せる友人の

小林こばやしれん

蓮とは昔からの付き合いで幼馴染という奴だった


「どうせ明人は今日もゲーセンだろ?」


少し鬱陶しそうに問いかける蓮に


「そうだなぁ…今日は隣町のゲーセンに行ってくる」


「それまたなんで?」


「野暮用だよ、野暮用」


「ふーん」


蓮は小さい頃から俺のことを気にしてくれる

まるで兄のような存在だ

正直、同級生とは思えないと俺は感じている


学校が終わり俺はとりあえず親に連絡をいれ

自転車を駅まで全力で漕ぐと休む間もなく切符を買う


「あ!電車きてる!」


階段を二段飛ばしで駆け上がる

その勢いで開いている電車のドアへと吸い込まれるように乗車する


「ハァ…間に合った…」


電車内を見ると人はほとんどおらず俺がすごい勢い(自覚はある)で走ったのにも関わらず誰一人…

無反応だった


空いている席に座るや否やスマホでゲーセンの位置を調べ隣の駅に着くと急いで電車から降り駅から一番近いゲーセンへと足を運ぶ


音ゲーには少し並んでいる人達を見つけ


「ゲーセンは人の波が偏るなぁ」


俺はスマホを開き蓮に「無事ついた」と連絡すると『楽しくな』と返信が届くのを確認しUFOキャッチャーで蓮へのお土産を入手する


「蓮はこのキャラが好きだったか?まあ、いいや」


景品袋を取って手に入れた景品を入れ

アーケードのバイハザをするために両替機に並ぶ

平日というのにも関わらず制服を着た人達で賑わっていた


「列終わらないなぁ」


前の方からそんな声が漏れる

俺は聞き流し両替の列を待ちついに自分の番が回ってきた


野口さんを入れ、玉に変える

それからバイハザのゲームのランキング一位のスコアを確認しコインを入れる


30分ぐらい楽しんで

無事クリアすると周りには人が集まっていた


「「「おおお!!」」」


人々は俺がクリアしたゲーム画面をスマホで撮影していく


俺は人混みを抜けて二階の休憩所のような場所に座る


「あぁー!気持ちよかったぁぁ!!」


Twitterに自分のスコアをツイートし

蓮に連絡を入れようとしたその時だった

俺と同じぐらいの年の女性が俺の前で仁王立ちする


「…」


「…」


「あのー、何でしょうか?」


「…」


彼女は沈黙のままだった


「えーと…」


なにか話題を探す俺をよそに彼女は急に話し始める


「貴方、ゲームが得意なのね、さっきのプレイ見せて

貰ったわ…私のスコアを軽々と抜くなんて…凄いと

しか言いようがないわ」


妬まれているのか褒められているのか分からない言い方のせいで俺は傷ついていいのか喜んでいいのか分からなかった…


「君もあのゲーム上手いんだね、俺が君のスコアを見

た時これはクリアしないと超えれないなって思った

君もクリアしたんだろう?」


彼女は少し笑みを浮かべ


「ええ、しましたとも…でもあんなにスコア出なかっ

たわ…」


悔しいのか手を握りしめながら言葉を選んでいる様に見えた


「悔しいのか?」


「悔しいわよ、私があのゲームでちやほやされてたの

に見たこともない制服の奴に超えられたんだから

腹立って立ちます!」


俺は少しからかうような目で相手を見て


「なら、俺とあのゲームでVSをしよう」


彼女は興味深そうに俺の話に耳を傾ける


「お互いにあのゲームをする、それでスコアが高い方

が勝ち、低い方が負け、な?単純だろ?」


彼女は少し間を置いて

承諾した


先行はジャンケンで公平に決め彼女が先行になった

正直、先行の方が有利だなと思う

相手のプレイを見せられて『自分の100パーセントを出せるか?』と問われればきっと…無理だろう


彼女はサクサク進み

俺は彼女のプレイに魅入っていた

キャラと連動しているように見えたからだ


彼女がプレイをしていると周りに先程の人々がまた集まり彼女のプレイに注目する


中には声に出して悔しそうにする人もチラホラ居た


彼女は25分でクリアする

スコアも、さっき俺がたたき出した点数とほぼ同じだった


周りの人たちもクリアする彼女を見て歓声を上げる


「次はあなたの番よ」


まるで勝ち誇ったかのように俺にコントローラーを渡す彼女は俺が座っていた席に座り腕を組んで俺のプレイを見るようだ


正直、緊張よりも何か勝ちたいという負けず嫌い特有の謎の力が込み上がる


『GAME START!!』

表示された瞬間、俺はさっきよりも力を込めてコントローラーを握りゾンビを駆逐していく


周りの人たちも彼女も唖然としていた

何故なら俺は銃ではなく近距離武器を使い

まだノーダメージで三面のボスまで来ているからだ

しかもアイテムポーチには手榴弾とグリーンハーブが

所せましとアイテムポーチを圧迫している


「マジかよ…」


「アイツ人間か?」


などのヤジとも思える褒め言葉たちは俺の耳に届く

それを聞いて余計に燃える


「CLEAR!』


「よっしゃああああ!」


俺のクリアした瞬間の喜びが口から零れる

それを聞いて周りの人々も歓声を上げる

彼女は未だ唖然としている

彼女よりもクリア時間はかかったがスコアは俺が勝ち

彼女にドヤ顔を浴びせる


「参ったわ…」


「いい勝負だった」


俺はスマホで撮った彼女のスコアを彼女に見せる


「このスコアもなかなかだと思うけどな」


「貴方はゲームが好きなの?」


「ああ、大好きだ、またどこかで会ったら勝負しよう

またこっちの町まで来ると思うし…」


と再戦の熱い握手を交わし俺は来た道を駆け足で帰っていく


後日、俺と彼女の熱戦はネットを通じてゲーマー同士の熱戦などと、大袈裟に広められていった


俺はまた、彼女と対戦すべくまた隣町まで出かける


「さあ、バトルしようぜ…」


「今度は私が勝つわ…」


こうして俺と彼女はお互いに名前を名乗ることなく

今日も楽しくゲーセンで熱戦繰り返している…





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