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月詠の謡  作者: 葉月
3/6

第3章 確かな覚悟

第3章、やっと更新できました。ちょっといつもより長めです。

特務機関側の主要メンバーがほぼ出揃いました。

色々抱えているものが多い人達なんで早くエピソード進めたいです。


今回、初めて戦闘シーンが出ていますが、とてもざっくりです。

難しいですね、戦闘の場面って。

そこのところ、温かい目で見て頂けると幸いです。

第三章 確かな覚悟


特務機関Metatron…。それは国家公認の特別組織である。組織の由来であるメタトロンは天使であり、その名は「神の代理人」を意味し、神に代わり亡者を滅する為に創られた。また、亡者達を倒すエージェントを「グリゴール」と呼ぶ。グリゴールは最下層の労働階級の天使から由来している。「グリゴール」。それは天使達が聖なる力を使う度に消え逝く儚き存在…。能力の適応実験や戦闘において命を落とすことの多い彼らを、その儚き天使に見立ててこの組織ではそう呼んでいる。


「…なにが儚いよ…。ただの癖の強いくせ者じゃない…。」

つい先程、談話室で神居さんによる他のメンバーとの顔合わせとを終えた私は、組織についての説明をジェイドさんから受けながら、窓の無い冷たい廊下を歩いていた。

「面白い奴らだろ?まぁ、全員くせ者ってのは否めねぇな。なんたって、ここ数年で一番腕っ節が良い奴ばっかだからな。ちょっとくらい頭のネジが飛んでなきゃ出来る仕事ねぇよ。」

「私…主に零さんの事を言ってるんですけど…。」

「零?確かにアイツは頭のネジの飛び方が他の奴らとは一味も二味も違うわな。でも可愛いだろう?」

さっきくせ者は零さんだと言ったが訂正しよう…。この人も零さんが絡むと可笑しくなる気がする。だいたい頭のネジが飛んでいるとか…そんな次元じゃない。一言では言い表せない程、私の中では先ほどの談話室での出来事は鮮烈なものだった。


「暫くここで過ごしてもらうことになるからね。組織の仲間を紹介しよう。さぁ、入りなさい。」

神居さんに部屋へ入る様に促され、私は恐る恐る談話室へと足を踏み入れた。中には何人かの人が集まっていて、いつのまにかジェイドさん達もその中に加わっていた。

「…神宮寺…?」

突然名を呼ばれてその声の方を振り向くと、見知った顔が視界に入り、私は思わず素っ頓狂な声を上げた。

「結城君⁈」

私の名前を呼んだのは、同じクラスの結城 翼君だった。何故ここに彼がいるのだろう。ここにはこの組織に関わる人しかいない筈…。

「あぁ、翼とは知り合いだったか。そういえば、同じ制服だね。」

「…なんで神宮寺がここに?まさか緊急招集に関係してるんですか?」

「それはこれから説明しよう。みんなにここに集まってもらったのは彼女を紹介する為だ。彼女は神宮寺サラ君。彼女は暫く特殊能力の調査の為、ここで君達と生活する事になった。」

神居さんに紹介され、私は慌てて頭を下げた。恐る恐る顔を上げると、大半の人が不思議そうに顔を顰めていた。特に結城君に至っては目を見開いて私を見つめていた。まぁ…それはそうだろう…。そもそも特殊能力は『アダムカダモン』とかいう特殊な薬を投与する必要がある。突然現れた小娘に特殊能力と言われても腑に落ちないだろうし、教室で毎日逢っているクラスメイトなら尚更だ。

「みんなが不思議に思うのも無理はないだろう。サラ君は研究所からやってきたわけではないからね。彼女は偶然発見された能力者だ。彼女の力は一瞬にして亡者達を殲滅させたそうだよ。」

あぁ、そんなに大袈裟に紹介しないでほしい。実際、自分でもそんなによく分かってないのに…。

「馬鹿馬鹿しい…。あくまで可能性でしょ?実際、私もジェイドもこの子が力を使ってる所見てないし。証言だって亡者のものよ。」

神居さんの説明に対して私が顔を青くしていると、さっき廊下で逢った人が冷たく言葉を発した。確か…零さんだったかな。明らかに他の人達を寄せ付けぬオーラを放っていて、なんだか怖い感じがした。しかし、そんな零さんに対し、物怖じせずに彼女の肩を抱く人が一人…。

「まぁまぁ、もしかしたらって事もあるじゃねぇか。これから一緒に生活するんだから仲良くやろうぜ。年長者の俺達が色々教えてあげなきゃならねぇだろ。」

そうジェイドさんが零さんを宥めるようにそう言うと、零さんは諦めたように溜息をついた。どうやら彼だけは零さんを上手く扱えるようだ。

「皆も色々思うところがあるとは思うが、よろしく頼むよ。では、みんなの紹介もしよう。まずは零から。」

神居さんに名を呼ばれ、零さんは怪訝そうに眉を潜めた。彼女はそっぽ向いて神居さんの言葉を無視したが、ジェイドさんに促され、漸く私の顔を見てその唇を開いた。

「グリゴールNo.01。 零、二十八歳。生まれた時からこの組織にいる。子供の頃からずっとグリゴールになる為だけに育てられ、亡者を倒すためだけに生きてきた。…最初に言っておくけど…私、あんたと馴れ合うつもりないから。」

零さんはそう私に冷たく言い放つと、またそっぽを向いてしまった。うん…、やっぱり怖い…。

「悪いな、サラちゃん。こいつちょっと人見知りでぶっきらぼうなんだ。でも本当は可愛い奴なんだぜ。仲良くしてやってくれなー。」

ジェイドはまた零さんを抱き寄せてそう言った。確かに…可愛いというより凄い美人だとは思う。それでも個人的にはそれよりも怖さの方が勝っていて、零さんをべた褒めする彼が少し分からなかった。そういえばグリゴールは特殊な能力があると聞いていたけれど、彼女は自分の能力については一切公言しなかったな。なんでだろう…。

「じゃあ、順番的に俺かな。俺はグリゴールNo.02のジェイド・リー。歳は三十だ。自己紹介はさっき話したから色々省略させてもらうな。ちなみに、ここでは零の次に古株なんだ。扱える能力は『重力』だ。周りの空間の重力を重くしたり軽くしたりできるんだ。まぁ…殆ど使った事がないけどな。改めてよろしく!」

眩しいくらいの笑顔を向けられ、私は思わずドキッとっしてしまった。ちょっとだけ頰が赤くなってしまった気がする。誰だってこんな人に微笑みかけられたら心踊ってしまうだろう。それに彼はなんだか安心できそうだ。零さんの事に関してはだけはなんとも言えないけど、彼は頼りになるイメージがあった。でも…ジェイドさんって何人なんだろう…。名前は台湾人なのに見た目は明らかに西洋人だ。何より瞳が緑でとても珍しい。その疑問だけが私の中でモヤモヤと残ってしまった。聞いて良いのか、ダメなのか…。また複雑な事情があったらどうしようという思いが、言葉を詰まらせてしまった。

「…次は俺か…。」

私が悶々と悩んでいると、結城君がポツリと呟き、私の目をじっと見つめた。

「…グリゴールNo.24。結城 翼、十七歳。能力は『瞬足』。脚力が異常なまでに強くて早く走ったり、蹴り技を刃のようにする事が出来る。…まぁ…なんだ…。同級生のよしみで色々教えてやるから…。なんかあったら言えよ。」

少し恥ずかしそうに頰を染めながら結城君に、私は思わず笑みが溢れた。

「な、なんだよ。」

「ううん、なんでもない。よろしくね」

こんな場所にいるから、私の知らない結城君の一面が出されるのかと心配していたけど…。良かった…。ここにいる彼も私の知っている結城君だった。彼の存在もここでの生活の支えになるような気がした。

「…あの…初めまして…。」

今度は小さな挨拶の声がした。遠慮がちに結城君の背後から女の子が顔を出している。さっきの声はこの子のようだ。歳は同じくらいだろうか。

「おい、挨拶くらいしっかりやれよ。」

「だって…。こんな姿恥ずかしい…。」

「お前なぁ…。神宮寺は絶対笑ったりなんかしねぇよ。大丈夫だから、ほら。」

結城君に背中を押され小さく返事をすると、その子はやっと私の前に現れた。その姿は怪我だらけで、白い肌に沢山の包帯が巻かれていた。

「…私はグリゴールNo.28の吉良 葵と言います…。歳は十六で…能力は『催眠』です。亡者をマインドコントロールして操る事が出来ます。…私…グリゴールになってまだ日が浅くて…あんまり教えてあげられる事ないかもしれないけど…。よ…よろしくお願いします。」

他の人達と比べると、なんと大人しい子なんだろう。そして、どこか弱々しい。戦いとは無縁のような子だ。

「うん、よろしくね。…怪我、大丈夫?」

「あ…うん。ちょっとこの間の任務で…。みっともなくて恥ずかしい…。」

しょんぼりと肩を落として顔を伏せる彼女の手を取り、私は優しく握りしめた。すると今度は顔を赤くして私を見るものだから、思わず吹き出してしまった。

「ごめん、笑ったりしょんぼりしたり赤くなったり…すごい百面相だったからつい…。怪我は恥ずかしい事じゃないと思うわ。あんまり事情知らない私が言うのもおかしいけど…怪我は頑張った証でもあるんだもの。結果がどうあれ、あなたは一生懸命やったんでしょ?なら良いじゃない。いつかきっと怪我もしなくなるわ。」

私の言葉に、彼女はへにゃりと笑ってくれた。小さな声で零さんが「甘すぎる」と呟いていたが、聞こえなかったことにしよう。

「ありがとう。神宮寺さん」

「えー、サラでいいよ。私も葵って呼ぶし。改めてよろしくね。」

「三人は歳も近い。仲良くやるんだよ。」

神居さんにそう言われ、私達は素直に頷いた。能力者だなんて信じられないくらい葵は普通の女の子だ。この子とはなんだか仲良くやれそうな気がする。何より、歳の近い女の子が一緒というのはどこか心強かった。

「…お友達ごっこがしたいのなら他所でやってくれない?ここでそういうの持ち込まれても困るわ。」

ああ、まただ。何故かまた零さんの厳しい言葉が和やかな空気を凍りつかせた。射るような冷たい眼差しが私に絡まり合い、思わずその視線から逃げるように目を逸らしてしまった。何故この人は誰とも交わろうとしないんだろう…。それが本心なのかは解らないけれど、まるでわざと遠ざけようとしているような…そんな気がしてならなかった。

「だいたい、そんな甘ちゃんだからあの廃ビルでの任務失敗してそんな怪我をするのよ。さっさと殲滅しておけば犠牲者だって増える事はなかった。あんたが殺したようなものなんだから。覚えておきなさい…。情けは不要だと…。判断ミスが大きな代償に繋がるの。私達の仕事はね…そういうものなのよ。」

零さんの葵に対する叱責はあまりにも一方的だ。自分の甘さを咎められ、先程まで笑っていた葵はしゅんと小さくなった。勇気付けてあげなければ…。しかし、零さんの言葉が頭から離れず、私はその言葉を出せなかった。

『廃ビルでの任務』

考えすぎだろうか…。でも、葵の怪我はかなり新しい。小さな擦り傷や痣もくっきりと残っていた。だから思わずにいられなかった。綾が死んだ事件の任務を葵が担当し、しくじったのではないかと…。葵が失敗しなければ、綾が死ぬ事はなかったのではないかと…。ドロッとした黒い感情が自分の心から溢れ、私は思わず自分自身に驚いた。こんな汚い感情を自分が持っていたなんて…。確かに、葵が任務をしくじった事で綾は死んだかもしれない…。でも殺したのは亡者だ。葵を非難するのはお門違いだ。私は悪い考えを払いのけ、震える葵の肩に触れた。

「大丈夫、悪いのは亡者なんだから…。失敗は次の任務に活かせば良い。」

「サラちゃん…。」

「あなたも…ちょっと言い過ぎよ!そこまで言う事ないじゃない!」

そうだ。零さんはちょっと無神経すぎる。一番の古株だかなんだか知らないけど、先輩ならもっと言い方があるでしょう?あまりにも頭にきたから腹を括って零さんにくって掛かると、零さんはあからさまに眉を顰めた。

「何も知らない小娘が偉そうに言ってんじゃないわよ。実戦も積んだ事ないあんたには解らない世界なの。下手に口出ししないで頂戴。ちょっと能力を持ってる可能性があるからって…勘違いされちゃ困るわ。この部外者。」

歯に着せぬ物言いでそう返してくる零さんの言葉は、私の怒りのツボを押し続けた。我慢できなくなって思わず手がでそうになり、私は手を振り上げた。その瞬間ー

「こら!そんな事言っちゃダメでしょ?零ちゃん。」

引っぱたこうと思っていた彼女の頰を、ムニッと摘むか細い手に私は出鼻を挫かれてしまった。

「ごめんなさいね。この子こう言う言い方しか出来なくて。もう、ちゃんと心配してるって素直に葵ちゃんに言えば良いのに。素直じゃないわね。」

「…別に…私は…。」

「嘘仰言い。私の目見ないもの。」

「ガキの頃から変らねぇな、零は。嘘つくとき相手の目絶対見ないもんな。」

突然介入してきた女性とジェイドさんに挟まれ、零さんは少したじろんでいた。さっきまでの威勢が嘘のようだ。

「あぁ、ごめんなさいね。話に割り込んじゃって。」

「いえ…。あの…貴女は?」

「私は神居 沙苗。組織では医療班の班長をしてるの。」

優しい笑みを浮かべながら私の手を握る彼女の挨拶に私は慌てて頭を下げた。彼女の名前を覚えるように心の中で復唱すると、ふとした疑問点が私の中で生まれた。『神居』という名に耳覚えがある。しかもついさっき聞いた名だ。もしかして…と目配せすると、沙苗さんはクスッと笑った。

「沙苗は俺の妻なんだよ。サラ君。」

やっぱりそうか。同じ苗字だったのでもしかしてと思ったが、予想は当たったらしい。それにしても、何歳差なんだろう…。神居さんはせいぜい四十歳半ばくらいだ。けれど、沙苗さんはとても若々しく、零さんと変わらないように見える。けれど、仲睦まじく微笑み合う二人はそんな問題など気にしていないようだ。

「サラ君、ここで君達をバックアップする人員は他にもいるが、主要幹部は不在の支部長を含めて副支部長である俺と特殊能力科学研究所所長の葉、そして医療班班長である沙苗のみだ。何か困ったことがあったらなんでも言ってくれ。さて、彼女の顔合わせはこれでおしまいだ。今日は誰かにここの施設を案内してもらいなさい。」

神居さんにそう言われ、私は期待を込めて結城君と葵を見つめた。葵も笑顔で私に駆け寄ってきたが、途中で沙苗さんに呼び止められ、大きく肩を落としていた。怪我の治療があるらしい。結城君は神居さんとなにやら話し込んでいるようだ。そうなると残るは…。恐る恐る残りの二人へと視線を送ると、零さんと視線がぶつかってしまった。…気不味い…。

「…あ…あの…。」

「…どうでもいいけど…。そんな甘い考えじゃ、アンタ死ぬわよ。仮に力があったとして、グリゴールになるのであればその甘い考えは捨てることね。まぁ、なれたらの話だけど。」

零さんはそう言って部屋から出て行ってしまった。

「な…なんなの…あの言い方…。凄くムカつく!」

まるで私がそんな力も覚悟もないって決めつけているみたいだ。…いや…確かに自信はないんだけど…。それでも、まだ分からないのにあんな風に決めつけられるのはなんだか凄く腹立たしかった。

「ありゃ、相変わらずキッツいねぇ。うちのお姫様は。ってことは暇人は俺だけか。そんじゃ、サラちゃん。お兄さんと巡る秘密基地の大探検にでも出かけますか。」

「あ、はい!」

ジェイドさんは私の返事を聞くと、ニッと微笑んだ。なんだかんだで、一番適任な人が残ってくれたような気がする。葵はあの怪我だし、結城君と二人だけというのもなんだか気不味い感じになりそうだ。零さんは私と関わる気など毛頭内容だったし…。面倒見の良いお兄さんみたいな彼は色々教えてくれそうだ。

「あ、サラちゃん。行く前にちょっとだけいいかな。」

「はい?何ですか?」

ジェイドさんと一緒に部屋を出ようとすると、葉さんが慌てた声で私を呼び止めた。

「ご両親の連絡先教えてもらえる?ほら、一応未成年を預かる事になるからね。ちゃんと連絡しとかないと。」

そう言って葉さんはペンとメモ帳を私に差し出した。そうか、暫くここで生活しなければならないと言うことはあの人達にも伝えておかなきゃいけないのか。私は差し出されたペンとメモ帳を受け取ると、養護施設の名前と園長の名前、電話番号を書いて葉さんに渡した。

「……ありがとう。」

葉さんは記載された内容に一度言葉を飲み込んだが、また笑顔に戻るペンとメモ帳と懐にしまい込んだ。出生について詳しく詮索されないのはちょっと有難い。それは、誰よりも私自身が知りたい事だ…。

「それじゃ、連絡して上手いこと誤魔化しておくわね。」

「え?誤魔化す?」

「だって変な事言えないでしょ?特殊能力なんて言っても亡者の力を目の当たりにしていない限り普通は信じないわ。嘘も方便よ。」

「ああ…なるほど…。」

「それから、明日からは色々検査があるから時間なったら迎えを寄越すね。ジェイド、彼女の部屋は二◯九号室を案内しておいて。必要なものはあらかた用意終わってるから使ってね。それじゃ!」

葉さんは早口でそう説明すると、白衣を翻して部屋から出て行ってしまった。必要なものはあらかたと言っていたが、あまりにも早い展開に私は目をぱちくりさせた。

「あらかたって…随分用意周到だなぁ…。サラちゃんの返事なんか関係なくここに置くつもりなのか…。それともグリゴールになる事に絶対の自信があるのか…。」

「え?」

ぼそぼそと何かを言うジェイドさんの言葉を聞き返すと、笑顔で「なんでもない。」と返されてしまった。

「んじゃ、俺達も行くか。」

そう言ってジェイドさんは私を手招きしながら部屋を出て、私もそれに続くと長い廊下へと足を進めた。




「今いるのは地下三階。主に幹部の執務室があるんだ。一番この組織で重要な場所だから一番地下ってわけ。」

「あぁ、だからいくら探しても窓がないんですね。」

「そういう事。あとこのフロアには特殊能力技術研究所の研修室もあるんだ。関係者しか入れない部屋だから案内出来ねぇけど、そこで俺達はグリゴールになったんだぜ。」

グリゴールを作るための研究所…。それは今の私にとっては未知の世界で、SF映画で出てくるようなイメージしか湧かなかった。今もそこでは人体実験が行われているんだろうか…。そう思うと言い知れぬ恐怖に寒気を感じた。そういえば、明日から私も色々と検査されるんだった…。葉さん…マッドサイエンティストだって言われてたし…。想像するイメージはあまりにもグロテスクで、思わず泣きたくなってしまった。

いかんいかん。別の事を考えよう。そう思い、一歩前を歩くジェイドさんの背中をじっと見つめた。金色の滑らかな彼の髪は女の私からしてみたら羨ましい程の綺麗さだ。明らかにアジア人の者ではない出で立ちに、ずっともやもやと抱えていた疑問が遂に口がら溢れてしまった。

「…ジェイドさんって日本の方じゃないですよね。中国にいたのになんで日本支部にいるんですか?」

「え?」

「あ!いえ!…無理にってわけじゃないんですが…。中国支部とかなかったのかなって純粋に思っちゃって…。」

予想外に聞き返されてしまい、私は失敗したと思った。やっぱり…聞かれたくないことだったのかもしれない…。

「あぁ、別に良いぜ。確かに中国支部はあるんだけどさ。当時『アダムカダモン』の研究は日本支部が全面にやってたし、世界的にも異常なまでに亡者化は日本に集中してたからな。覚醒すれば即戦力になる俺を連れてったんだろう。あ、ちなみに俺の『リー』っていう姓は中国支部長の名前なんだ。国超えるから戸籍は必要だろうって養子にしてくれたんだ。やっぱ黒孩子の俺にとっては嬉しい事だったぜ。血の繋がりはねぇけど親父が出来たからな。」

少し自慢気にそういうジェイドさんに、私は少し安心した。嫌な話をさせているのではないかと思っていたが、とんだ勘違いだったようだ。

「それじゃ、やっぱりジェイドさん自体は中国の人じゃなかったんですね?だって凄く綺麗な金髪と碧眼なんだもの。やっぱりヨーロッパ系ですか?」

「あー…。そこんとこ実ははっきりしてなくてよ…。葉姉さん曰く、俺の遺伝子ってアジア人とか北欧とか色々混ざってるらしいんだよな。母親が金髪で翠の瞳だったのはぼんやりと覚えてるんだけど…。そこんとこはよくわかんねぇや。」

「悪りぃな。」と、笑って返すジェイドさんは、自分の国籍や素性がわからない事に関してはあまり深く気に病んでいないようだ。そういう考えで居られることが、私は少し羨ましかった。

私も自分の素性など知らない。戸籍だって後から付け加えられたに過ぎない。もしかしたら私の国籍自体も根本から異なっている可能性だってある。小さい頃から…生れながら普通の子供とは異なる自身の境遇が嫌でたまらなかった。よく施設を抜け出しては自分の親を探し回ったものだ。いつもいつも…この広い世界で独りきりなのだと泣いて、施設の園長を悲しませてたっけ…。

「…強いですね。ジェイドさんは…。」

「強かねぇよ。俺だってガキの頃は『媽媽(母さん)』ってべそかいてたぜ。でも、親父が教えてくれたんだ。大事なのは過去じゃなくて、生きている今なんだって。今の俺には居場所も命をかけても守りたいものもある。その大事な今がいつか未来に繋がっていく…。それさえあれば十分すぎるだろ?」

彼の言葉は、至極当たり前な事だった。当たり前過ぎて、人々が忘れていた最も大事な事だ。私も過去に囚われすぎていた…。今の私には大好きな施設の人達も友達もいる。なんだ…。今の私はすごく幸せ者じゃない。今更気付くなんて…馬鹿だなぁ…私。

「おい…。どうした?…泣いてるぞ?」

「…え?」

彼の言葉に言葉にならない感情が芽生え、気付いたら私は泣いていた。

「すみません。…なんだか凄く嬉しくて…。」

ぐしっと制服の袖で涙を拭ってそう言うと、心配そうに私の顔を覗き込んでいたジェイドさんはホッとした安堵の表情を浮かべた。

「実は私も…貴方と同じなんです。捨て子で…自分が何者なのか解らないんです。ずっとそれが嫌でしょうがなかった…。でも、さっきのお話聞いて…間違ってたって気づいた…。」

「そっか…。なぁ、サラちゃん。今は…幸せか?」

「はい。私、凄く幸せ者でした。」

ジェイドさんの問いに笑ってそう答えると、それ以上の事は何も聞く事なく、笑って私の頭をポンと撫でた。

「そんじゃ、気を取り直して次に進みますか。次は一つ上の階だぜ。」


ジェイドさんに連れられ、私はエレベーターホールへと辿り着いた。どうやら上の階へは階段ではなくエレベーターを使うようだ。

「地下二階は訓練室と医務室だ。訓練所ではデータベース化したいろんなパターンの亡者の能力を元に本格的な戦闘デモが行えるんだぜ。死にはしねぇが、負けた場合色々大変なんだ。」

「大変ってどういう事ですか?」

「ん?そうだなぁ。そこは説明されるより経験しちまった方が早いって。ほら、エレベーター来たぞ。」

本格的な戦闘デモ…。しかもデモとはいえ負けると大変な目にあうって…。あまりの話に絶句している私を他所に、どこか楽しげにジェイドさんは私の背を押しながらエレベーターの中へと入った。

エレベーターの扉が閉まり、独特のモーター音が狭い空間に響いている。それにしても、一つ上に上がるだけだと言うのに異様に長いエレベーターだ。まるで複数階通り過ぎたような感覚すら覚えるほどだ。

「…長いエレベーターですね…。」

「ここは訓練室があるフロアだからな。狭くちゃ戦闘訓練にならないだろ?だからフロアの縦の長さが通常三・四倍はあるんだ。その分エレベーターも長くなっちまってるんだよ。ほら、着いたぜ。」

一つ上のフロアに着くと、そこは下のフロアとあまり変わらない作りだった。三・四倍あるというが、見る限りそのように見えなかった。壁にはこれまたSF映画の宇宙船などでよく目にするような扉がいくつもあり、訓練室がいくつもあると言う事を物語っていた。

「訓練室は朝の七時から二十三時までグリゴールは好きに使えるんだ。あ、折角だからさ、訓練室の中見せてやるよ。」

ジェイドさんはそう言って扉に近づくと、扉横のモニターへ顔を写した。ピピッと機械音が静かな廊下に響くと固く閉ざされていた扉が自動に開いた。顔認証か何かで入室管理しているようだ。

訓練室に入ると、そこにはガラスに覆われた小さな部屋だった。中には宇宙船のコックピットのような大きな操作盤があり、ガラスの向こう側には広い空間が広がっていた。この小さな部屋よりも実際の訓練室の方が床が低くなっているようだ。壁沿いには下に続く階段が取り付けられていた。なるほど、漸くジェイドさんが言っていた普通の部屋の三、四倍あるという話に合点があった。

「あれー?システムが起動してるな…。」

操作盤を覗き込みながらそう呟くジェイドさんを横目に私はガラスの向こう側を覗き込んだ。その瞬間―


―ガンッー


鼓膜を貫くような大きな銃声が響き、私は驚いて思わず後退った。

「なんだ、零が使ってたのか。」

「え?零さん?」

もう一度ガラスの向こうに視線を戻すと、銃を構えた零さんが立っていた。零さんの周りには何十人もの亡者がいて、次々に彼女に攻撃を仕掛けていた。そんな衝撃的な光景に、私は慌てずにはいられなかった。

「なんでここに亡者が⁈」

組織の…しかも施設内に亡者がいるということは非常事態だ。慌ててジェイドさんに助けを求めようとすると、彼は予想外にその光景をにこやかに見ていた。

「ジェイドさん?」

「ん?あぁ、アレは偽物だよ。リアルなホログラムなんだ。ただ、このシステムにはAIが搭載されてるから戦闘パターンは読めない。能力も相手に合わせてランダムだ。」

「スゲェだろ?」と、自慢げに言うジェイドさんの言葉に、私はホッと胸を撫で下ろした。それにしても、模擬とはいえグリゴールが亡者と戦う姿は初めて見た。相手がホログラムとは思えない程の鬼気迫った戦いに思わず息を飲んだ。人工頭脳が搭載されているとは聞いているが、敵は動きが予測不可能且つ、異様な力を使う。今、零さんが戦っている亡者は水を操るようだ。水流を操り、それを槍のようにして攻撃している様は、まるで魔法のようだ。

「すごい…。」

なにより、そんな相手と対等に戦えている零さんは凄かった。いや、対等どころか…それ以上だ。相手は魔法のような力を使っているのに、彼女は銃と体術のみだ。並外れた戦闘術で敵に銃弾を撃ち込み、自分に傷を付ける事なく難なく倒してしまった。

全ての亡者を倒し終えると、部屋にビーッというブザー音がなり、彼女の足元に転がっていた亡者達がスッと消えてしまった。どうやら、戦闘訓練が終わったようだ。

「とまぁ、こんな感じでここは使うんだ。凄かっただろ?」

「はい!凄かったです!…あ、でもなんで零さんは『力』を使わないんですか?」

それは彼女の戦闘訓練を見てふと湧いた疑問だった。さっきの説明では、グリゴールは全員特殊な力があるはずだ。零さんの場合、自己紹介の際も教えてはくれなかった。最初のグリゴールだとは言っていたが、そこに関係があるのだろうか。

「あー、そうだな…。零の場合は定期的に訓練で使うぐらいで実践では使わないからなぁ。そうだ。どうせなら見るか?零の力は凄いぜ。なんたってグリゴール最強だからな。」

ジェイドさんはそう言ってニヤリと不敵な笑みを浮かべると、操作盤のボタンを押して取り付けられたマイクへと顔を近づけた。

「零ちゃーん。終わった所早速で申し訳ないけどもう一ラウンド頑張ってくない?」

『ジェイド?どういう事よ、それ。』

「ほら、可愛い新人ちゃんに俺たちグリゴールの能力見せてあげなきゃ。」

『は?』

「そんじゃ、頑張ってな。」

そう一方的に会話を終わらせると、ジェイドさんは操作盤を操作し、最後に赤いボタンを押した。すると、先程のようなブサー音が鳴り響いて亡者が現れると、下にいる零さんは怪訝そうに顔を顰めて銃を構えた。

「銃で耐えられるかな?」

「何したんですか?」

「なに…ちょっとハードなパターンをお見舞いしただけさ。ほら、見ててみろ。」

零さんは最初のうちは銃で応戦していたが、現れた亡者は先程とは違い、彼女の弾丸を華麗に避けていた。

『チッ…。ジェイド…覚えてなさいよ!』

零さんはそう悪態をつくと、使っていた銃を投げ捨てて左眼を覆っていた眼帯を外した。閉ざされていたその瞳が見開かれた瞬間、その場の空気が突然変わったように感じた。重苦しいプレッシャーが全身に襲いかかり、酷く息苦しくなった。

「な…なんか体が重い…。」

「流石…。高圧ガラスの向こうなのに凄いプレッシャーだ。よく見とけよ、サラちゃん。あれが零の力だ。」

零さんは何をするわけでもなく、ただそこに佇んでいた。攻撃を開始する様子もない。

「アレじゃ、攻撃して下さいって言ってるようなものじゃないですか。」

「いいや、ただ立ってるように見えるがアイツには隙がない。それに、敵はもう零の術中に嵌ってる。」

ジェイドさんの言葉に、私は慌てて視線を亡者へと向けた。よく見ると亡者は体を震わせ、時には痙攣したようにびくりとその体を跳ね上がらせていた。零さんは相変わらず亡者を見つめたまま、決して逸らさなかった。暫くして、亡者は両手で頭を抱え、奇声を発すると自らの頭を押し潰してそのまま絶命してしまった。訓練終了を告げるブザーが再び鳴ると、頭の潰れたその亡者は消えてしまった。ホログラムとはいえ、あまりにもリアルで思わず眼を背けてた。

「ありゃ、ちょいとサラちゃんにもハードだったか?」

ちょっと所じゃない…。今日までただの女子高生だったんだ。人の頭が潰れる所なんて慣れているわけがない…。それにしても、零さんの力とはなんだったのだろう。あれだけではまだ理解する事ができなかった。

「…あの…零さんはなにをしたんですが?ただ見つめていたようにしか見えなかったんですが…」

「零はその目で見たものを一瞥で害する事が出来るんだ。例えば見ただけで身動き出来なくさせたり、死に至らしめる事もできる。今回は徐々に狂わせて、相手を自滅させたみたいだな。俺たちは零の能力を『邪眼』って呼んでるぜ。」

見ただけで相手を殺す事が出来るだなんて…。グリゴール最強だと言われているのも納得がいく力だ。

「な?凄かったろ?」

「…そう…勉強になったようね…。」

「あ、やっべ…。」

背後からドスのきいた声が聞こえ、振り返ると怒りに肩を震わせた零さん立っていた。

「…赤い…眼…?」

眼帯が外されたその左眼は、まるで血のように真っ赤だった、私が呆然とその瞳に魅入っていると、零さんはズカズカとジェイドさんに歩み寄り、その胸ぐらを掴んだ。

「覚悟は出来てるんでしょうね…。」

「…そ…そんな怒るなよ、零…。」

「あんたじゃなかったら今頃その体を蜂の巣にしてやりたい所だけど…これで勘弁してあげる。」

零さんはそう言うと、ジェイドさんの大きな体をズルズルと引きずるように引っ張り、彼女が入って来た扉の向こうへと投げ捨てた。下へと続く階段の柵にぶつかり、なんんとか落下は免れたようだが、予想外の事態にジェイドさんは少し焦っているようだった。

「…れ…零ちゃん?」

「年長者の私達が色々教えなきゃならないんでしょ?…なら自分の能力で見せつけてやることね!」

その言葉と共に、零さんは上腿を下げると、ジェイドさんの足を足蹴りにし、彼の両足を床から引き剥した。ジェイドさんはそのままバランスを崩し、階段の柵を乗り越えて頭から真っ逆さまに落ちていった。

「ジェイドさん!」

私の悲鳴も耳に入らないのか、零さんは無情にもそのまま扉を閉ざしてしまった。あんまりだ。同じ仲間だというのに…。ここから床までは高く見積もってもビル四階分くらいはあるだろう。もしも頭を床に打ち付けていたら怪我だけじゃ済まない筈だ。

「なんて事をするんですか!いくらなんでも…突き落とすなんて。」

「心配しなくてもあいつなら無傷よ。あれくらいの事なんて任務においては日常茶飯事…。あの程度で死なれたら逆に困るわ。今に間抜けな声を聞けるわよ。」

私があまりの仕打ちに声を荒げても、零さんは冷たく遇らうだけだ。冷たいのか、それともジェイドさんの身体能力によっぽどの信頼があるのか…、焦る様子は一切なかった。

『ひでーよ。突き落とす事ねぇだろう。』

それからすぐに零さんの言った通りジェイドさんの声がスピーカから流れ出した。ガラス越しに下の様子を伺うと、怪我もなくピンピンしているようだ。一体どんな運動神経をしているんだろう。

「言ったでしょ。身をもって新人にグリゴールの力を見せてやれって。三倍返しでいくから、頑張って。」

『三倍⁉︎ちょ、待て、零!』

零さんはジェイドさんの静止の声も聞かず、システムを起動させた。ブザーと共に現れたのは三体の亡者だった。成る程、三倍というのはこういう事か。ならこいつらも、普通の武器では歯が立たない筈だ。ジェイドさんの能力は確かー

「重力…。」

「よく見ときなさいよ、甘ちゃん。あんたが考えている程、甘くない世界だって…。」

「…はい…。」

零さんに言われた通り、私はジッとジェイドさんを見つめた。亡者に囲まれたジェイドさんは、諦めたように頭を掻いた。

『見てろよ、零。一分で片付けてやる。』

ジェイドさんはそう宣言すると、ふっと全身の力を抜いて目を閉じてしまった。その隙に亡者が一斉に彼へと飛び掛かっていく。思わず目を覆いたくなるのを堪え、私はジェイドさんの挙動を見つめた。すると突然、彼を中心に地面が勢い良く陥没し始めた。そして、彼へと飛び掛かっていた亡者達は、一瞬にしてその地にめり込むように押し付けられた。まるで…彼の周りの空間だけ、重力が重くなったようだ。力がとてつもないのか、心なしか私も下に押し付けられそうな感覚に襲われた。

暫くして、ブザー音が響くと地に伏していた亡者達は消え失せ、重かった私の体もふっと軽くなった。

「…なんて力なの…。」

零さんもジェイドさんも、私が思い上げていたものとは桁違いの力だ。軽い気持ちで自分の力について詳しく解るまでここに残ると承諾したものの…、もし力があった場合は私もこんな戦いをしなければならないのだと思うと、不安で胸がいっぱいになった。頭では覚悟が必要だと理解はしていた…。だけど、こんなものを見せつけられてしまったら…。

「…私が言った事、やっと理解したようね…。」

零さんはそう言いながら、私の眼をジッと見据えた。漆黒と深紅のその瞳に全てを見透かされ、思わず視線を逸らしたくなっったって。

「別に…あんたが此処に残った事は否定しないわ。神居の意思でもあるんだし、それを私がどうこうしようだなんて思わない。…ただ…、甘い考えのまま此処にいられやしないって事を理解した上で覚悟してほしいだけよ。辛いのは他の誰でもない…自分自身なんだから…。」

零さんはそれだけ言うと、訓練室から出て行ってしまった。彼女は私にグリゴールの現実を見せ、私の甘さを認識させた上で改めて覚悟するチャンスを与えようとしてくれたようだ。私が傷付かないように…。

「どうだ、零!宣言通り一分以内に倒しただろう?惚れなおし……。あれ、零は?」

零さんが部屋から出て行ってから少し遅れてジェイドさんが意気揚々と戻ってきた。出て行ってしまった事を告げると、あからさまに肩を落としていた。

「…ありがとうございました。訓練見せてくださって。…なんか、私の想像をはるかに超えてて…ちょっとビックリです…。」

「そうだなぁ。俺と零ってグリゴールの中ではチート的な力持ってるから。…どうした…?零になんか酷いこと言われたのか?」

さっきと明らかに様子が変わってしまった私に気づき、ジェイドさんは私へ心配そうな声をかけつつ、「力見せるのは失敗したかな…。」と呟いた。

「あ、違います!零さんにはなにも酷い事なんて言われてないし、お二人の力を見れた事も良かったと思ってます。…ただ…、自分の覚悟の甘さを実感しちゃって…。」

「しょうがないさ。今日一日で全部理解しろって言う方が難しいだろ。本当にグリゴールになるのかもちゃんと決まってもいないのに、命をかけて戦う覚悟なんて女子高生に出来ねぇよ。」

確かに、私がこれからも此処にいる可能性はまだ不明瞭だ。それでも、何故かきちんとした覚悟を持たなきゃいけない気がしてならなかった。ただ漠然と、本能がそう言っているのだ。だからこそ、零さんのさっきの言葉は私の胸に深く突き刺さっていた。まだ自分の力は解らない…。けれど、これで私の日常は大きく変わっていくのは確かだ。自分自身を守る為にも私は確かな覚悟を持つ決心をした。


心の中の恐怖をただただ押し殺して…。


続く

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


零が性格悪いのか良いのかフワッとしてしまいましたが、一応彼女も主役なんで…

個人的にいちばん好きなんで、これからガンガン出してきます。


まだまだ序盤ですw結構続きますので引き続きご愛読のほど宜しく申し上げます。

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