第七話 絶対戦士に夢を見る
「俺は、絶対戦士になってみせるんだ。」
数ヶ月前、ある一人の学生が言ったのだ。
人は、彼のことを馬鹿にしたが、彼は本気だった。
「絶対、異世界にも行く。」
彼は、小学生の頃から一人で暮らしていた者で、名前を高橋斗茂矢といった。 小さい頃から、戦士になるという夢を持っていた。
今は高校生だが。
彼は千葉県の柏市立柏南高校の生徒である。 特にこれと言った個性もなく、やれと言われたことを完璧にこなすことで、学校では一度も起こられたことがない。
彼はずっと、ふつうの人生だと思っていたはずだ。 実際、あの出来事にはなにも前触れはなかったのだから。
しかし、その日、事件は起こった。
彼は知らない間に異世界へ行ってしまった。
そして、今。
なんと彼の夢が叶っているのだ。
彼は今、戦士として帝国城に攻め込んでいるのだ。
異世界にもいる。
「パァン!!」
と火縄銃の音が響く。
「なんだあれは!」
驚いた帝国軍が叫ぶ。
「炎攻撃です!!」
女性が言って、炎を発生させた。
「アルティメット ビッグ ファイアー!!!」
炎が燃え盛る。
これでやっと制圧した。
俺、斗茂矢はほっとして、胸をなで下ろした。
「君かい? 異国、いや、異世界からきた戦士は。 僕はこの帝国軍の元帥なんだ。先に僕の名前を名乗るよ。僕はスペンサー=サン=ブレンダム。残念ながらここに王はいないよー。」
「帰るぞ。」
「待って待って待って! まだ君の名前を聞いてないよ? そんなのずるいよ!」
「斗茂矢だ。 王はどこにいる。」
「僕は知らないね。王が勝手に逃げたんだから。あと僕一応元帥だから、君よりえらいんだからね?」
腹が立っている俺をさらに腹立たせるのかこいつは。
「アルティメットビッグファイ....」
スペンサーは、片手で俺の腕をつかむ。
「君が魔法を使えると言うことはわかったから、これ以上じゃまをしないでね。 それでもこの国がいやなら、君たちが国を作っちゃえばいいんじゃないの?」
「!!!」
国を作る。だと?! そんな簡単にできるものなのか?
そう思ってスペンサーの大きくて鋭い目を見ると、挑戦的な眼差しで嗤っていた。
「あと、君達が使ってた火縄銃、すごかったねー。」
彼はなぜ火縄銃を知っているのか、謎が増えた。
「この世界には、もうあるから。 火縄銃。」
「!!!」
俺はなんてことをしてしまったのか。
たかが火縄銃を帝国軍に負けない未来の技術なんて思って。
「斗茂矢さん!! サムがいました!!」
「サム!! なんで勝手に行ったりしたんだ! しかも一人で!!」
「すみません斗茂矢さん。 僕、本当はこの軍を抜け出したかったんです。でも見つかってしまいました。
だったら今ここで、抜けさせてもらいます。」
彼は目をギョロリと開き、胸から宝石を取り出した。
そしてそれを強く握ると、彼の体から一瞬、大きな光が出て、彼の姿はなくなった。 と思ったら、少なくとも人間ではない、巨大な生物?が出てきたのだ。
なんとなくサムの面影があったから、これはサムだと思う。
「僕、いや、我はついに、人間ではなくなったのだァァァ!! こんな弱い軍、辞めさせてもらうわァァァァァ!!!!」
別に俺は彼がやめてもいいが、こんな生物を世に放していたら大変なことになる。だからここで、我々も立ち向かう。
「ウォァァァァァァァァァァ!!!」
彼は手からビームを出し始めた。
「避けろ!!!」
「ニガサン!!! 死ネェェェェェ!!!」
彼がビームを出し続けてくるので、俺も炎を出す。
しかし、全然効いていない。
「おい、嘘だろ....」
だが、怯んでいる暇はない。 俺は必死で弱点がないか考える。
「弱点、弱点......ゲーム....手...そうか!!」
俺はすごいことを思い付いて、彼の手を見た。 すると、さっきまで彼が握っていた宝石が埋め込まれていたのだ。
「よぉしみんな!! 手だ!!手を狙うぞ!!」
「手!」
「おー!!!」
皆は弓やら魔法やらで手を狙っている。
そこで、信じられないことが起きた。
「フンッ!!!」
何者かが、サムの腕を切り落としたのだ。
「ウ、アアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!」
白い光と共に、サムは消えて無くなった。
さっきの人間が誰なのか、俺にはすぐにわかった。
蒼くて結ばれた長髪。 それで俺が知っている者は、彼しかいない。
「スペンサー.....?」
男は俺の方を向き、ニヤリと微笑んだ。
「僕がいないと皆死んでたね!! 感謝してよ?」
「何故、助けてくれたんだ。」
彼は一瞬考えたような顔をすると、質問に答えた。
「助けた? この僕が? 敵を? 馬鹿なことを言うなよ? 本当はそのままでもよかったんだけど、君達反乱軍は、どうせなら僕の手で皆殺しにしたいからね。 化物なんかに手柄を盗られちゃ、僕のプライドが許さないよ。」
一体彼は何者なのか。 俺にはわからない。
「そう言えば、ルーン大陸の極東に、国一個造れそうな国際的空き地があるから、そこに国作れば? 僕は君達が国から早く出ていってほしいね。」
ルーン大陸とはどこなのか。
そして、彼は本気で俺達に出ていってほしいみたいだ。
彼がどうしてそこまでして俺達に出ていってほしいのかは謎だが。
兎に角、俺は今日決めた。
国を新しく造る。
歴史を、創る。
技術を作る。
しかし、俺は国の造り方など知っている筈もないから、知ってそうな人に聞く。 そして、この世界のことをよく知っている人に。
基地で、俺はエミリーや兵士たちに、そのことを話した。
「ルーン大陸極東かぁ、ここからちょっと遠いけど、俺らが作る船なら、ギリギリ行けるかな。」
「斗茂矢さんなら絶対できますよ!! 私もついてますし、頑張ってください!」
一人の女騎士が立ち上がった。
「斗茂矢ァ!! 偉いぞォ!! そんなことを言ってこそ漢だァ!! そんなに美形なんだからァ、んもう、好きになっちゃうぞォ?」
彼女はケイトリン=アールズデール。
今は完全に酒に酔っているが、年齢は17歳らしい。
「いや俺、エミリーがいるんだけど。」
「私もついてるぞォ? エミリーより私の方が、【オ・ト・ナ】だからなァ! ワッハッハッハッハ」
「いや、その言い方は色々困る。」
そしてエミリーの顔を見ると、頬がプクーと膨れていた。
寝るとき、エミリーは喋ってくれなかった。
俺がキスをしようとすると、舌を入れて、深い物になってしまった。
「斗茂矢さん...ケイトリンと私、どっちが好きなんですか....」
「そりゃぁ勿論、エミリーだよ。」
「でも、ケイトリンの方が、男性経験ありそうだし、胸も豊満だし、ええと、ええと、兎に角、私より【オ・ト・ナ】だし...」
「そんな、何故【オ・ト・ナ】じゃなきゃ駄目なんだ? 胸も豊満じゃなきゃ女性じゃないのか? 俺は、エミリーという人間自体が好きなんだ。大好きなんだ。 だから、そんな顔しないでくれよ。」
彼女の目から、涙が落ちた。
「だって、だって!!」
「大丈夫。 今日はもう寝よう。目を閉じて。」
そして一日は終わりを告げた。