第三話 鷲の空襲
「作戦ファイル1.5.2 決行!」
「Yes,sir!」
たくさんの兵士たちが、町へ向かって行く。
道路の自動車に飛び乗ったり。
蒸気機関車の上を歩いたり。
人の馬を奪う者もいた。
しかし、人々は刃向かうことが出来ない。
帝国が絶対なのだ。
逆らったら殺される。
今まで処刑されてきた者が何人いるか。 その数を知ったものは、二度と逆らえない。
自分から逆らわないようにするのだ。
しかし、ある町は違っていた。
そんな帝国を変えようとしているのだ。
決められたことをやるだけの、そんな毎日から脱け出そうとしているのだ。
馬が走る。
彼は、結んだ青髪を揺らしながら、田舎道を走っている。
農夫は驚く。 真昼からこの田舎道を走る帝国軍なんていないのだから。
しかし彼はそんな農夫に見向きもせず、颯爽と走っていく。
彼は何処かへ到着した。
そこは、同じような形をした家がいくつも並んでいて、畑がある小さな町だった。
「ここか。」
彼が降りたとたん、町の人々の目付きが変わる。
そして、家から盾と剣を持って来たのだ。
「帝国軍.....」
そんな声が聞こえる。
彼は帝国軍の制服を来ているのだ。
「まあまあそんなに怒らずに、話し合いましょうよ。」
「なにいってんだ。」
「は?」
次々と怒りの声が聞こえる。
「私達帝国軍は、国を統一させようとしているのです。 でもあなた達が反乱などを起こしていると、それがいっこうに出来ないままとなります。」
「うるさいぞ!」
「黙れ!!」
「それでもまだ反抗するのだったら、こっちのやり方でやりますけどね。」
パチィン!!
彼が指をならすと、たくさんの兵士が一斉に出てくる。
町の人々も黙っていない。
彼らもどんどん攻撃を仕掛ける。
家には火がつき、木は倒される。
明るい昼が、地獄の昼になってしまった。
「さて、アレはどこにあるかな?」
彼は何かを探している。
「あったあった。」
彼が探していたのは、家だ。
表札には、【スワットブルー】と書いてある。
彼は手に力を込めてドアにゆっくり触れた。
すると、鍵があいたのだろう。 「ガチャ」と音がしたのだ。
そして、何の躊躇いもなく、入っていく。
「おーい、ウィフ=スワットブルーさーん。 ウィフ=スワットブルーさーん。 いませんかー?」
返事がない。
「さすがにいないか。」
彼は【前の王】をさがしにここに来たのだが、いないのであった。
「じゃあどこだ?」
そして彼は家の二階へ昇っていく。
「この部屋は」
その部屋は、【前の王】の孫娘の部屋だった。
【前の王】の息子は、娘を生んだあと妻と一緒に自殺をした。
残された娘は、祖父=ウィフに育てられた。
そして彼女の夫になる男は、【次の王】になるのだ。
しかし、【今の王】のマードック=ブロードマインは【前の王】に罪を犯させて辞任させた。
そして、【今の王】は貴族と庶民の差をどんどん広げていき、今では貴族と非人くらいの差別をしているのだ。
ここで誰かが【今の王】を殺せばその瞬間次が【前の王】の孫娘の夫になる。
しかし、貴族である帝国軍は、【今の王】が自分達に都合がいいのだ。
だから、その王政を強制しようと戦っている。
良くできた社会だ。
「そろそろ時間だ。」
そして、彼は外に向かって叫ぶ。
「おい!! もう時間だ!!!帰るぞ!! おらモタモタすんな!! 馬に乗れ!! 置いてくぞ!」
たくさんの兵士たちがその場から帰っていく。
そこは、人々が倒れ、まるでテナントの空き部屋のような場所だった。
そこに、高校生くらいの外観の二人がやってきた。
やってきたというより、帰ってきた。
「何だよ.....ここ。」
「どうしたんでしょう.....」
「「町が.....ない...」」
彼らは絶望しているのか、その場に崩れ落ちた。
◇◆◇◆◇
俺は崩れ落ちたあと、考えた。
たぶん彼女も同じことを考えている。
どうして、こうなったのか。
いや、それはわかっている。 この町が帝国に反抗してるから。
しかしなぜ、俺らが気づかなかったのだろうか。
爆発のひとつや二つ、戦争が起きればするだろう。
なのになぜ。
また攻めてくるだろうか。
とりあえず、今日は寝るか。
「寝よう。」
「そうですね。」
彼女はいつもと違って、今は笑顔ひとつなかった。
「恐いですね。帝国軍。」
「うん。」
「明日残っている町の人に聞いてみましょうか。」
「そうだね。」
そして俺らは、エミリーの部屋で浅い眠りについた。
「斗茂矢さん! 起きてください! 朝です。」
「おはよう。」
「そんなこといってる場合じゃないんです! ステップニーの軍からこの町に避難命令が下されたんです! 早くいきましょう! じゃないと、帝国軍に町ごと殺されちゃうんですって!」
そんなこといきなり言われても.....
「ええ、」
「いきますよ。」
「うん。」
「ついてきてください!」
そうして、彼女は俺の手を引っ張って走る。
この状態、正確にはついていくより引っ張られるが正しいはずだ。
そんなことを考えながら引っ張られていると、すぐに軍の基地に着いた。
「斗茂矢さん、つきましたよ。」
彼女は安全な場所に来て安心したのか、笑顔に戻っていた。
「ようこそ!我が基地へ! であります。」
そういったのはステップニーだ。
彼はお茶を持ってきた。
「もう明日くらいには我々騎士は帝国城へ攻めにいかなければならないのであります。
この基地は魔法ひとつで地中に隠れるので、絶対安全であります。なので、安心してください、であります。」
では、訓練へ行きますであります。」
「.....明日は、無事を願っています。」
エミリーが、ステップニーに敬語を使った。
「必ず戻ってくるのであります。 そんな心配しなくていいのでありますよー。 」
「俺からも、無事を願っているよ。」
「いなくなったら、彼女を頼むのであります。」
「?」
「なんでもないであります...」
そして、夜。
俺は眠れず、窓から土を見ていた。
すると、ステップニーが帰ってきた。
「あ、おかえり」
「今訓練が終わったのでありますよー。 全く大変であります。」
「お疲れ。」
そういって、俺は、現実?の世界からもってきたチョコを、ステップニーに渡した。
「食えるのでありますか?」
「うん。」
「【チョクレイト】でありますか?」
どうやら、【チョクレイト】とは、チョコレートのことらしい。
「こんな高級な物は、年に一回食べるか食べないかでありますよー。」
「そうなんだ。」
チョコは高級でなかなか食べれないらしい。
「そういえば、私が帰って来なかったら、エミリーを.....幸せにしてやってください。 私の代わりに。」
「それどういう意味。」
「簡単に言うと私はエミリーのことが好きなのでありますよ。 しかし、私が弱い故、次の攻めで帰ってこれないかも知れないのであります。 そこで、エミリーを、貴方に、私がいなくなったら、頼むであります。」
「別にいいけど。」
「まあ、戻ってくることができたら、エミリーに告白、してみるのであります。」
なぜだかわからないが、葛藤が発生した。
ステップニーが死んだらエミリーが来る。 しかし、エミリーがとられたらステップニーは生きている。
どっちがいいのか。
いや、好きでもない人をとられたって、気にすることではない。 好きでもない人をとられたって。
「彼女の笑顔のためなら、何エームだってかけらるのであります。」
エームとは、金の単位であろう。
「じゃあ、もうねるでありますね。」
「俺もそうするよ。」
俺らは、明け方ごろに寝た。