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仲直りと二葉の気持ち

「ダメよ、蝶子」


ふわりとワンピースのすそが揺れる。

本物の二葉がこの部屋に帰って来たのだ。

蝶子は驚いたように目を見開いていた。


「まったく、バカな妹。こんなことして、こんなもの作ったって、私が帰ってくるはずがないのに」


「……二葉、どうして?」


「あら、お姉ちゃんって呼んでくれないの?」


驚く蝶子に二葉はまるで子供のようにいたずらっぽく笑った。

二葉は腕にヒカリとライトを抱えながら、妹の頬を撫でた。


「あぁ、お互い死んでいるから触れるわね、よかった」


「……どうして、二葉」


「ずっとここにいたわ、蝶子」


「二葉……」


蝶子の右目から大粒の涙がこぼれた。

それは蝶子の頬と二葉の手を伝って床に落ちていく。


「片目をあんな私にあげちゃったから、右目でしか泣けないのね、蝶子」


「二葉、二葉、私はどうすればいい、二葉……」


「バカね、あなたはもうごめんなさいって言うだけでいいのよ」


ボロボロと涙をこぼし続ける蝶子に二葉は優しく微笑みかけた。


「ごめんなさい、二葉、ごめんなさい……お姉ちゃん」


あああ、と声を上げて泣く蝶子を二葉は黙って抱きしめた。

ぽんぽんとまるで子供をあやすように頭を撫でてやって、安心したようにため息をついてから、


「もう、いいのよ」


と言った。


何十年と悲劇を生み続けていた喧嘩にようやく終止符が打たれたのだ。


***




私が死んでから、妹はずっと泣き続けていた。

くだらないことで喧嘩して、意地っ張りな私も妹も謝れなくて。

次の日家を出た妹にまっすぐトラックが突っ込んできたとき、私は思わずあの子をかばっていた。

後悔はしてない、でも妹をひどく傷つけてしまったらしい。


後悔はしてない、とは言ったが、どうやらまだこの世に未練があるらしい私は幽霊になってこの世に残り続けていた。

蝶子からは見えないらしい。こんなにも近くにいるのに慰めることができないのがどうしようもなくもどかしい。


そしてその何日か後に妹は死んでしまった。

止められなかった。

その後悔の念は私をさらに現世にとどめさせた。


妹はやがて狂った。

私に似た人間を探し出し、殺し、私の虚像を作ろうとした。

挙句の果てには自分の左目までちぎって偽物の私に埋め込んだのだ。

そんなことをしたってなんにもならない、と何度叫んでも届かなかった。

どうすればこの子を止められるのか、そんなことばかり考えていた。


でもそれがようやく叶った。

私の声は、蝶子に届いた。


一人の少女によってそれは叶った。

感謝してもしきれない。


今この子に、蝶子に触れることができているのは、愛花さんのおかげだ。

やっと仲直りができた。


ありがとう。

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