4.やっぱりこういう展開ですか。
え?これ、私にじゃないよね??周囲の兵士さんに対してだよね!??
と、すっとぼけて足を進めようとしたんだけど、それよりも前に馬車の扉が開いて、一人の40代くらいの侍女っぽい格好の女性が下りてきた。
「どうぞお待ちください。姫様があなたにお礼を述べたいと仰っておられます。」
あー、うん、お礼か。お礼を聞くぐらいなら、まあ、大丈夫だよね。
この申し出を無視して行く方が、何かまずい気がするしね。
私がそんなことを考えていると、馬車の扉から一人の少女が、執事っぽい男性の手を借りて地面へと足を下ろした。
うん。まさにお姫様って感じ。
お尻辺りまでの長さの金色のふわふわウェーブの髪に、ぱっちりと大きなエメラルドグリーンの瞳。
服装は白いフリルがふんだんについた、淡いピンク色のドレス。
身長は、私の胸元ぐらいかな。
あー、でも私を見上げる目が、何だかきらきらしているように見える。う…嫌な予感……!
「あのっ!助けて頂いてありがとうございました!!」
元気いっぱいに言い切ったお姫様。
うん、身分の高い者にありがちな、偉そうな態度じゃなくて良かった。
よし!ここは、さっきシュミレーションした言葉を言って、失礼の無いように速やかに立ち去ろう!
「いえ、当然のことをしたまでです。それでは、私は先を急ぎますのでこれで。」
にこりと笑みを浮かべてそう言い、その場を離れようとしたが。
「あ…あの!お名前は!?」
さらに問いかけてくるお姫様。
「いや、名乗るほどの者では………」
あう。お姫様の斜め後ろに立っている執事さん―――あ、こちらは、50代ぐらいの厳格な雰囲気の白髪のオジサマです。―――に睨まれました。
姫様に無礼は許さん!って、目が語ってます。
侍女の方も、いつの間にか周囲に集まってた兵士さん達も、じっとこちらを見てます。ううう……こういう状況苦手だぁ…。
「………カーヤ・ナツキと申します。」
「先ほど魔物を倒したのは、魔術ですの?」
「はい、火の魔術を使いました。私は、魔術師をしておりますので。」
はきはきと話すお姫様。好奇心いっぱいって感じだ。
えと、もういいかな。立ち去ってもいいかな??
どうすべきか悩む私の前で、お姫様は執事さんと侍女さんに目配せをして、うん、と一つ頷いた。
「カーヤさん!どうか、わたくし共と一緒に、帝都に行って頂けませんか?」
「はい?」
「助けて頂いたお礼もしたいですし。何より、また魔物に襲われたときにお力をお借りしたいのです!」
いやいや、前半はとにかくご遠慮したい。ついでに後半も断りたい。
帝都までの護衛って言ったって、10人ほどの屈強な兵士達がいるじゃないか。
そう思って、ちらりと兵士達に目線を投げると。
「この者達は、地上戦においては非常に頼りになる者達ですが、先ほどのような空からやってくる魔物に対しては、十分な戦力とは言えません。
本来ならば、お抱えの魔術師も同行する予定でしたが、都合が悪く同行できなくなってしまいまして。
どうか、姫様の護衛を引き受けては下さいませんか?」
私の疑問を感じとり、それに答えたのは執事さんだった。
問いかけの形をとってるけど、反論は許しません、って気迫がひしひし伝わってくる。
ああ~!やっぱり、面倒なことになった!!
私は、がっくりと肩を落とした。