表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華の降る丘で  作者: 行見 八雲
第2章
37/75

5.依頼を受けることになりました。



 それから、依頼内容の本題に入ったんだけど。



 フェルくんはリシャ姐さんの方に体を乗り出して、目の前にあったボインに驚いて身を引いた。

 そして、気まずそうに目線を彷徨わせた後、こほんと誤魔化すように咳を一つ。

 ふふふ、若いわねぇ……。私の胸じゃないけど。

 

 改めて、「最近、この都で多発している子どもの誘拐事件を知っているか?」と、話を切り出した。



 うん、この話は、私もここ、首都コンテツに着いてから、色んな所で耳にした話だ。

 何でも、一月ほど前から、平民の子どもや孤児院の子どもが、ふと消えてしまう事件が続いているらしい。

 最初は、事故や家出の件も疑われていたらしいんだけど、たまたま子どもが攫われかけているところを助けた人がいて、それから誘拐事件ということになったそうだ。

 攫われた子どもは、すでに六・七人に至り、都の警備兵も躍起になって捜査を行っているんだけど、一向に犯人は捕まらない、――と聞いてたんだけど。


「え? まさか、その犯人が、その貴族ってこと?」


 私の問いかけに、フェルくんは頷いた。


 フェルくん曰く、いくつか証拠もあるらしいんだけど、相手が貴族なだけに、警備兵もなかなか屋敷に踏み込むことができないでいるらしい。

 そうして、警備兵が手を拱いているうちに、昨日新たな行方不明者が出たため、いてもたってもいられなくなったとか。


 おお、いい奴だな、フェルくん!

 いかにも高貴っぽい、上質な服装に綺麗な仮面、偉そうな口調に非常識な行動、多額の報酬と、どこぞのお坊ちゃんの無茶な行動だと思ったんだけどな。

 もしそうなら、何とかして止めようと思ってたんだけど、余計なお世話だったみたいね。


 目元は見えないけど、その噛み締めた口元がいかにも真剣で、つい頭を撫でてしまった。

 驚いたように振り向かれたけど、笑って返してやった。



「しかし、どうしてそのお貴族様は、子どもを集めたりしてしてんだい?」


 眉間に皺を寄せて、リシャ姐さんがそう問いかけた。

 あ、うん、私もそれは気になる。


 聞いた話だと、攫われた子ども達は、年齢性別はバラバラらしい。

 だから余計に、犯人が特定し辛かったり、子どもの方で警戒がし辛かったっていうのもあるみたい。

 あえて言うなら、貴族の子どもは対象にはなってなかった、ってことだけど、貴族の子どもの場合は、元々ボディーガードみたいのが付いているから、手を出しにくいっていうのもあるし、貴族の親によっては、色々厄介ってこともあるんだろう。

 結局、攫われたのが平民や孤児っていうことから、国の上部としてはあまり捜索に熱心じゃないらしいのよね。腹立たしいことに。


「“闇幸福論者”を知っているか?」


 フェルくんは、少し声のトーンを落として、そうリシャ姐さんに問いかけた。

 リシャ姐さんは、大山さんと小山さんと顔を見合わせて、少し重苦しそうに頷いた。


「え? それって何?」


 それに関しては聞いたことが無かった私が問いかけると、リシャ姐さんも声を顰めながら。


「一般的に“闇の者”と呼ばれていてね、光の精霊を称えるこの国に対して、闇の精霊こそが幸福をもたらすと主張する者達のことだよ。」


「闇こそが世界の原点であり、すべての人を平等に戻すと、主張してるんっす。」


 リシャ姐さんの言葉を小山さんが引き継いで、説明をしてくれた。


 ああ、なるほど、反国家組織みたいなものか、と私が頷いていると、リシャ姐さんは顔をフェルくんに向け、


「で、そいつらが、何だってんだい?」


 と、問いかけた。

 その姐さん問いに、フェルくんは頷いて。


「どうやら、子どもを生贄に、闇の精霊王を呼び出そうとしているようなんだ。」


 言い辛そうに述べられたフェルくんの言葉に、みんなの表情が一気に変わった。

 リシャ姐さんは顔を顰めて嫌悪感を顕わにしてるし、小山さんは顔を赤くして相当頭に来ているらしい。

 大山さんは表情は変わってないけど、眉間にびきびきと、け…血管が……! 無表情なだけに、その胸の内にどんな怒りが渦巻いているか、すごく怖い。


 そういう私は、怒りというよりは驚きの方が大きい。まさか、って気持ちだ。

 だって、そんな、子どもを生贄になんて、一体どうやって……。

 実感が湧かなすぎて、一人だけぽかんという顔になってしまった。


「だから、念のために光属性を持つ者がいた方が良い。お前も来てくれ。」


 そんな私の方を向いて、フェルくんが改めて問いかけてきた。


「……あ、……うん……」


 とりあえず頷いてみたけど。


 なるほど、フェルくんが光属性を持つ者を必要としてたのは、そういう事情からだったのか。

 一応フェルくんも光属性を持ってるけど、もし本当に闇の精霊王が出てきたら、一人じゃ敵わないから、念のためってことね。

 でも、本当に闇の精霊王を相手にしたら、二人でも全然敵わないと思うけど。


 まあ、あの闇の精霊王様が、そんなに容易く出てくるとは思えないけどね。

 気紛れで来たとしても、そんな幸福論、鼻で笑われて終わりだからね。

 とは言えないけど。


 とにかく、ここまで聞かされると、私も攫われた子ども達の状況が気になるし、一緒に行きますとも!


 改めてみんなと顔を合わせて、決意を込めて頷き合った。



 ひねりが無くて申し訳ない……m(__;)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ