1.プロローグ的な。
神がこの世界に舞い降りられたとき、この世界は無であった。
そこで神は、世界の土台にと闇を溶かし、次いで光を灯した。
そして、風を流し、大地を植え付け、水を注ぎ、植物を宿して、有の世界とした。
やがて神はその身を分け、世界へと散りばめられた。
神の欠片は世界中に落ち、命となって、世界に息づいた。
―――創世記より―――
硬い寝床の感触に、目が覚めてしまって、ゆっくりと体を起こした。
板の上に布を敷いただけのベッドの上で体育座りをして、手の届かないほどはるか高い位置にある、鉄格子の嵌められた窓から、星の散らばる暗い夜空を見上げる。
硬い寝床は野宿で慣れていたが、眠りが浅くなってしまうのは、この環境のせいだろう。
6畳ほどの広さで、石が敷かれただけの冷たい床と壁、硬い木のベッドに、部屋の隅に作られたトイレ――せめて囲いがあるのが幸いだろうか――。
部屋全体は薄暗く、壁の一面には、頑丈な鉄格子が張られている。
突然放り込まれた牢獄で、私は膝を抱えて、そこに顔を埋めた。
どうしてこうなったのだろう。
私は、この国に来てからの経緯を思い出していた――。