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華の降る丘で  作者: 行見 八雲
第1章
24/75

23.作戦実行中です。その2。


 そんなバルールくんを見送った後、私達も移動を始めた。



 実は、この後バルールくんには、アイゼル妃のおられる例の武器庫の建物へと、行ってもらうことになっているのだ。


 下っ端とはいえ、未だ新人兵士であるバルールくんは、本来1人ではあの辺りには行ってはいけないそうだ。


 危険だったり、あと過去に新人兵士に武器の持ち逃げをされたことがあるから、との理由かららしい。



 それを、今日は1人で行ってもらうのだ。


 え?どうやってそう差し向けたかって?ふふふ、こちらには権力者がいるのだよ!こんな時に使わんで、何のための権力か!


 目的はもちろん、アイゼル妃とヒューゴさんを会わせるためです!


 まあ、会わせることで何が起こるかは、さっぱり予想がつかないんだけど。


 漸く会えた2人が、手に手を取って愛の成仏、だと良いんだけどな。



 なんてことを考えながら、もそもそ移動しているわけですが。


 今の状況は、エル殿下の後ろに私が張り付き、その後ろにナディア様が引っ付いているという、電車ごっこのような状況の、エル殿下号と。

 

 その後からは、魂が抜けたままのカクさんを、スケさんが後ろから押して進ませているという、カクさん号が続いている。


 そんな2つの電車ごっこが、城の敷地をこそこそと歩いているわけです。

 


 あ、ほら、案の定、すれ違った兵士の人が気まずそうに目を逸らした!


 お、あっちの侍女さんは、先頭のエル殿下の美貌に見惚れたまま、背後のおかしさには気づいてねぇぇ!


 そっちの侍女3人!「私達も加わりた~い!」って。入りたいならどうぞお入りなさいな!行き先は恐怖の幽霊劇場だがな!




 そんなこんなでやってまいりました、例の武器庫のある建物。


 私達は、武器庫の建物と廊下で繋がれている城の西棟に隠れながら、その建物に入っていくバルールくんを見送っていた。



「来た。」


 既に可視化の魔方陣を敷いていたので、ぼんやりと薄暗い中で、エル殿下が声を上げた。


 巧みにバルールくんの背中から目線を逸らしながら見てみれば、バルールくんの正面からはアイゼル妃の幽霊が。


 可視化の魔方陣の中なので、当然にバルールくんにもアイゼル妃の幽霊は見えているようで、突然現れた幽霊に、バルールくんは声にならない悲鳴を上げてその場に尻餅をついた。


 背後からでも、その体ががくがくと震えているのが分かる。


 あ、何かちょっと罪悪感。


 でも、許してバルールくん!これも昔のお姫様と騎士の恋のため。そして、しいてはその騎士にとり憑かれている君のためになるのだ!


 後でちゃんと、説明と謝罪はしに行くからね!



「あら?」


 ふと、私の後ろから、ちらちらとバルールくん達を見ていたナディア様が、声を上げた。


 さっきはあんなに怖がってたのに、意外と好奇心が強いですよね。いや、私も人のことは言えませんが。


「え?素通り?」


 ナディア様に続いて、私もつい口に出してしまった。


 だって、廊下の突き当たりを通りかかったアイゼル妃は、目の前にバルールくん―――プラス、ヒューゴさん―――がいるにもかかわらず、相変わらず目線の定まらないぼんやりとした様子のまま、その建物の奥へと歩いて行ってしまったのだ。


 そして、バルールくんの背後にいたヒューゴさんも、見えないので表情は分からないが、特に変わった様子は見られなかった。


 え?お互い気づいてない?あんなに真正面にいたのに??



 アイゼル妃が消えた途端、慌てて建物から逃げ出すバルールくんに内心で謝って、全員今の状況に首を傾げたまま、とりあえずいったん殿下の執務室へ戻ろうということになった。




 ―――結界の消えた建物は、人の声も風のさやめきも聞こえなくて、やけに静かだった。



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