21.お茶会ついでの対策会議です。その3。
と、私がうっとりとしている間にも、ハティ様の話は続いていたらしく。
「私は、てっきり若さゆえの過剰な想像力が夢にまで現れているのだと思い、また、あまりにも彼が長々と話すので時間が押していましたので、彼に『妄想です。』と、はっきり言って差し上げるべきかと悩んだのですが。」
ひでえええぇぇぇ!!この聞き役の人ひでぇぇぇ!!
人の長年の悩みを「妄想」の一言で片づけようとしたよ!しかも、段々聞くの面倒臭くなってるよ!やっぱ、聞き役に向いてないよ!!
しかし、顔は見えないとはいえ、こんな美声に「妄想です。」なんて言われたら、信じ込んじゃうよ!
あ、何だ、そっか、って思っちゃうよ!
んん?でも、それはそれでお悩み解決なのかしら??
「しかし、今の後宮の話で思い出しましたが、確か150年ほど前に在位していらした皇帝の寵妃に、そのような名の方がいらっしゃったはずです。」
「150年前というと、あのウェッテルテネス帝か。」
ハティ様の言葉に、殿下が、ああ、といった複雑な表情で頷き返した。
え?なになに??
その呼び名にやけに“て”の多い人が何だって?
おそらく、エル殿下とハティ様以外のみんなが、同じようにハテナマークを浮かべていたに違いない。
そんな、私達の表情を見て、殿下が苦笑いをしながら説明してくれた。
「ウェッテルテネス帝といえば、この上なく大切にしていらした寵妃が亡くなられて後、狂気を患い自ら命を絶たれたと言われる方だ。」
「ええ、その寵妃が、確かアイゼルリーテ妃であったと記憶しています。」
え~?どういうこと?
でも、そのアイゼル妃?が、あの女性と同一人物なら、ウェ皇帝→アイゼル妃⇔ヒューゴさんってこと!?
後宮内でのどろっどろの三角関係!!おおおおお!お話も深まってまいりましたねぇ!
「でも、その亡くなられたアイゼル妃があの幽霊の女性なら、死因は―――」
「ああ、おそらくあの胸の刺し傷だろう。今までは、病死と言われていたが、裏があったみたいだな。」
私が抱いた疑問に、すぐに殿下が返事をしてくれた。
そう、あの幽霊の女性の胸には複数の刺し傷があったのだ。
ということは、アイゼル妃は誰かに殺された………?でも、誰に??
え?これっていきなりミステリーに!?
誰か名探偵呼んできてー!もしくは目撃してた家政婦!!
何だか複雑になってきた事情に、真相究明に乗り出しそうなエル殿下とハティ様以外の、みんなの目が遠くなってます。
色々と頭の中で整理が追い付かなくなったようです。
この幽霊話はどこまで広がるのか。
「とりあえず、その少年をあの亡霊と会わせてみたら良いんじゃないのか?」
おお!いきなり簡潔な意見が!
声の主はスケさんでしたか。やはり場のまとめ役はあなたですね!
近頃ようやくみんなの役割分担が分かってきましたよ!あ、カクさんはもちろんちょっぴり不憫な役です!
「え?でも、誰か教えてもらえるんですか?」
私は恐る恐るハティ様を窺った。
「ああ、彼は最近入った新人兵士の―――――」
「えええええ!良いんですか!ほら、守秘義務とか、大丈夫なんですか!?」
あまりにもあっさりと教えてくれたハティ様に、私がつい突っ込んでしまうと、ハティ様は眼鏡をくいっと上げて、
「時と場合によります。」
と、答えた。
うん。私がもし懺悔室に行くことがあったら、どこか冷たさを滲ませる美声のいるところは止めておこう。
というか、ハティ様の場合だと、聞いた懺悔内容とか、時と場合によっては良い取引材料にされそうだ。
はっ!まさか、ハティ様が懺悔室の聞き役なんて、全く似合わないようなことをしてるのって………。
ままままままさかの黒幕ですか!!?ひえええぇぇぇぇぇ!!ここに最大のミステリーがぁぁぁ!!