16.朝から大騒ぎです。
カーテンの隙間から漏れる光と、可愛らしい小鳥の鳴き声で目が覚めた。
いや~よっく寝た~!おかげで目覚めもすっきりです!
爽やかな顔で、すでに起きていた殿下とスケさん、私の横で目を擦っているナディア様に朝の挨拶をした。
あ、もう1人はどうしてるかって?
いや、何か寝袋に入ったまま、部屋の片隅でガクブルしてます。
一晩しか経ってないのに、目の下にすごい隈が出来てますよ。カクさん。
「あれ、カクさん、どうしたんですか?」
と私が声をかければ、カクさんはすごい形相で私を見た後、寝袋のままずざざざっと近づいてきた。器用ですね。
「うわ~~~ん!カーヤ殿のうそつき~~~!!来ちゃったよ!あの亡霊ここまで来たよ!!怖かったよ~~~!!!」
と、泣き叫びながら、寝袋から出た両手で私の両肩を掴み、思うままに前後に揺すった。
お、お、お、お、おう!脳みそが揺れるぅ!!
「………っ、っちょ!まっ、まって、くだっ、さいっ……!どう、いう、ことっ……!…?」
ゆすゆすゆすゆす揺られながら、何とか言葉を発するが、大きな声は出ないわ、言葉は途切れ途切れだわで、全くカクさんには届いていない。
うううううう~!いい加減気持ち悪くなってきた!だ、誰か止めてくれええぇぇぇ!!
と、私の心の声が届いたのか、それともあえて今まで放置しておいたのか、スケさんが背後からカクさんの肩を掴んで私から引き剝がしてくれた。
あ、まだ前後に揺れてる気がする。
「どうやら、昨夜、昨日の亡霊の夢を見たらしい。」
冷静な声でスケさんが説明をしてくれた。
カクさんは、また俯いてガクブルしている。怖い。
そんな2人から目を離して、私は室内をぐるっと見回した。
「え、でも、昨日の幽霊の瘴気の痕跡もありませんし。あの女性が直接ここに来たってことは、ないと思いますよ。」
「昨日のことが衝撃すぎて、そんな夢を見たんじゃないかと、言ったんだが。」
私の答えに、困ったような苦笑いを浮かべながら、スケさんが言葉を返した。
「あれは絶対に違うよーー!
だって、あの亡霊の女性が、『あの方はどこ?早く待ち合わせ場所に行かなければ。ヒューゴが待ってるわ。早くわたくしをここから………』って、ぶつぶつ言いながら、暗闇の中を彷徨い歩いてたんだよ!
必死な風なんだけど、目は虚ろで空洞みたいで、ほんっっとうに怖かったんだからあぁぁ!!」
あお~~~ん、と、もはや遠吠えのように泣き叫ぶカクさんに、部屋の隅で身支度を整えていたエル殿下が、迷惑そうな顔をした。
「う~ん、その夢が本当にあの幽霊の人からなら、何かチャンネルが合っちゃったんですかね?」
私が、首を傾げながら言うと。
「チャンネルとは?」
とスケさんが問いかけてきた。
「えと、波長といいますか。あの女性からの何らかのメッセージ、伝言が送られてきたのか。もしくは、たまたま思念を拾っちゃったかですよねぇ。」
私の言葉に、スケさんがなるほどと頷いてくれた。
うむ、今更だが、私の話をまともに聞いてくれてるのはスケさんぐらいだ。
カクさんは魂が抜けたようになってるし、ナディア様はまだベッドの上でうとうとしてるし、エル殿下は支度を終えて部屋を出ようとしている。
このフリーダムな奴らめ!