6話 女子中学生と小人さん
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晶子がひとしきり叫んで逃げだしたところを見て、髪の毛をかきあげる。
顔に血みどろのメイクを施していたが、あの調子では見ることもなかっただろう。
用意していた濡れティッシュで顔を拭いた。
「おわったですか?」
「ありがとう、小人さん。はい、これお礼」
「わはっ!」
小人さんはスティックシュガーを持つと、目を輝かせて食べ始める。
話はこうだ。
昨日図書館から帰る直前に、この計画を閃いた。
小人さんにお願いしたことは2つ。
1つは、合図したら倒れた私を操り人形のように釣り上げること。
できるかどうか聞いてみたら、案の定簡単にやってもらえた。
試しにやってもらうと、手足が引っ張られて宙に浮く。ちょっとした空中浮遊を体験した。
スティックシュガー3本を提示すると、満面の笑みで応じてくれた。
自分の要望があっさりと実現した後、家に帰る前、夜の中学校に忍び込む。
先ほどの鼻血を拭いたティッシュと手紙を、晶子の机の中に入れておいた。
晶子はきっと、手紙を読んで戦慄し、夜確かめに来るだろうと踏んだ。
「きゃああああああああああああああ!」
出入り口付近で晶子の声が響いて、2つ目の仕掛けもうまくいったな、と思った。
部屋を出て見てみると、3mの巨大トカゲが仁王立ちしていた。
「ちょ、ちょっと小人さん。なるべく早くあのトカゲを消してくれない?」
「はい、いまけすですぅ」
そう言って、ちんまい手をかざすと、煙が上がるように消えていった。
「あー! すっきりした!」
晶子が驚いた顔を思い出し、大きく笑う。
嫌いな誰かが苦しんだところを思い出して笑うなんて、我ながら性格が悪いと思う。
ただ、こっちだって晶子のせいで昨日は死ぬほど怖い思いをして、怪我あり涙ありの大変な思いをしたのだ。
これくらいの復讐をしても罰が当たらないだろう。
そして、小人さんと会話をしながら館内の後片付けをした。
出入り口付近を掃除していると、廊下が濡れており、アンモニアの厭な臭いがしていることに気が付く。
正体を知って掃除したくなくなったが、これも自分が招いたことだと考え、しっかり廊下を磨いた。
「にんげんさんはだいまんぞく?」
「うん! 小人さんのおかげで大満足! 変なお願いしてごめんね」
「……きょうはもうかえっちゃうですか?」
その言葉に、ハッとさせられた。
そうか、小人さんはずっと一人でこの図書館にいた、と言っていた。
理由は本人にもよくわからないから、聞きだせていないが、ずっとここで一人だったらしい。
「うん、今日も学校休んじゃったし、帰って休もうかなって思うの」
そう答えると小人さんのつぶらな瞳はウルウルと涙がたまった。
「わー、おいてかないでぇ。にんげんさんといっしょにいたいですぅ」
「う~ん、困ったなぁ……。ねぇ、小人さんはここから出られないの?」
「でられますが?」
出られるんかい。
「じゃあさ、うちに来なよ! スティックシュガー一気飲みするくらいだから甘い物好きなんでしょ? 今日のお礼も含めてケーキ用意してあげる」
「けーきですか!? にんげんさんはけーきをつくれるんです?」
「私は作れないけど、買ってきてあげるわね!」
「わぁ! にんげんさんはかみさまのようにやさしいですぅ!」
「もう、現金な子なんだから!」
翌日、登校して晶子と顔を合わすと、ヒッ! と怯えた声をあげた。
何か言いたげに口をパクパクとしていたが、髪の毛で顔を隠すような動作をすると、引き攣った顔をして逃げ出した。
その光景を見ていた美紀が声をかけてきた。
「ねぇ、晶子ちゃんとなにかあったの?」
「さぁね~?」
その日を境に、図書館の奇妙なうわさ話はなくなった。
晶子が、気がふれたようにおばけと巨大トカゲが出ると主張したが、結局目撃情報がなかったため、自然と周りから相手にされなくなった。
後に、この町では小人を肩に乗せた女子中学生のうわさが広まるが、それはまた別のお話。
1人と1小人の話は、ここから始まるのである。
~Fin~
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