9話、キャンプファイアの方がイイですかね?
焚き火が……というより火の匂いが好きです。
『一部は伏せた事実を公表する』。
場合によっては詐欺だろうが、伏せるのが一部のみって点がする側にしてみれば罪悪感は軽減される。但し、その一部が一番重要な要素だという点を思い出さなければだが。じゃなきゃ意味ナイ。
なのでそれは思い出させないよう気を付けねば。
“無効化”だけならば狙われ率は少ない、らしい。
あくまでも『少ないだけ』なのだが。
何せ毒殺が横行するのが当たり前なのが貴族社会。
魔力量がそこそこ有ればある程度までの毒までならば充分に無効化出来る能力なんて、貴族にしてみれば確かに手に入れたい存在になるんだろうね。
しかも女だから子供を産める。
能力持ちの血を繋げたいならば、種よりも器ごと繋げられる女の方が有利だという理由で婚姻を申し込まれる可能性は高い、との事。
……その前にバックレさせて貰いますッ!!
男に迫られるなんてゾッとしますから!!
誰がどう言おうと、見えないと言われようと忘れちゃ困る!俺は男ですからねオ・ト・コ!!
最愛にして唯一無二の奥さん居るし、生意気な口訊くけどそれでも可愛い長男に親友だけどやっぱり可愛い次男、生まれて間もないけど父親そっくりで将来美女間違いなし!と意味不明な太鼓判を捺された長女の、併せて三人の子持ちだし。
なので心の底からご遠慮申し上げます!だわ。
いやホントに要らないからね、フリじゃなく!!
ソッチの趣味もございませんし!?
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熨しにリボン添えて差し上げたい。
それが今の俺の正直な感想です。
あるいは暖炉の焚き付けに如何でしょう?かね。
写真まで技術が進まないのも鉄板異世界。
案外魔術で代用出来そうだと俺なんかは思うんだけど、どちらかと言うと想像力の関係かあるいは発想の転換の問題なのか。いずれにせよこの目の前に積まれた絵姿の山を燃やしてイイですかね?
そう、お見合い写真代わりの絵姿がコレ。
危ぶんだ通り、祝福授かりに神殿へと赴いたその日から、何処から情報仕入れたのかあちこちの貴族から持ち込まれる様になった代物。
「選ぶ側なだけマシなのよこれでも。見るまでが義理だと割り切れば楽よきっと」
「まだ早い!全部燃やすぅ!!」
カラリとしたその言動一致は相変わらず好きですが、断る選択肢一択希望の身としては見るのも断固拒否したいのですよ、お母様。
別な理由でですが珍しく同意します、お父様。
強い視線に屈し、一番上を手に取り開く。
この世界の技術はどんな物なのか?
勉強するのだと思えば少しは我慢してマシになる……とは思ったのだがそうでも無かった。
開いて見たが直ぐにまた閉じる。
「……何掛けで見ればイイですかね?」
「そうねぇ、半分も有れば?」
「見ないで燃やそっ?ねっ?」
俺の問い掛けにサラリと答えるお母様。
未だにその背後で騒ぎ煩いのはお父様。
それにしても半分も本当じゃないかも、とは。
俺が聞いたのは絵姿の真実具合。
呆れてモノが言えなくなったので、ついでに落ち込んだフリをして山を遠ざけて貰いました。
要らないやいっ!こんな呪いモドキっっ!!
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さて、此処で疑問点の解消、をば。
今の自分はこの国の筆頭公爵家の長女。
ちなみにだがこの国一番の仲の良さにも関わらず両親に他に子はナシ。ナゼかねぇ?
二人とも、特“異”家系貴族出身なので、お母様の身分はお父様からだと多少劣る伯爵家出身でもすんなり婚姻が認められた背景アリ。
そして俺自身はこの国の第一王子の婚約者。
けれども一人娘だからこの公爵家を継ぐ次代を産む必要が有る。此処までは宜しくナイが仕方ない。
だから特殊な配偶者体制が発動される、そうだ。
婚約者の王族以外からの血筋で婿を迎え、子を成してその子供を公爵家の跡継ぎにするんだと。
頭腐っとんのかいこの世界?!?