21話、お茶会つぅより報告会でイイですかねぇ?
「ところで友人は出来たのかしら?」
「お分かりの癖に……酷いですねッ?!」
ホホホ……とまた優雅に笑い声を立てるお母様。
つい拗ねた声で応えてしまった。
まだ必要も無いのに学園に通い出した為に、家族の時間が取れなくなって寂しいと言われて設けられたお茶の時間。確かに向い合わせでお母様と気軽に話すのも久しぶりな気がする。
そう、俺の嘆きの通り友人など出来て無い。
まぁ本音を言えば特に構わないのだが、対外的な理由からもそのふり位はせねばならぬだろうし。
実は数人、気になる子は居るんだけどねぇ……。
「あら、案外その声を掛けて来た子達も貴女とお友達になりたかったのではなくて?」
「最初からマウントを取る……いえ自身が優位に立つかの様な声かけをしておきながら、ですか?」
「……最近の貴女の騎士からの報告書が殴り書きの理由が明かされたわね。事実しか書いていない筈なのに怨念が滲み出てるかの様な字なのよ……」
「ははははは……」
頭痛を堪える様な仕草で額に手を当てたお母様。
対する俺も乾いた笑いしか出せなかった。
その報告書、間違いなく某伯爵家ご長男からの提出物ですね……。自分の登校の際に背後で静かに佇む長身の彼の顔をつい思い浮かべてしまった。
目が合えば微笑んではくれるが基本無口なので本当に静かなのだ。まさかそんな部分で激しい自己主張を繰り返していたなど思いもよらなかったわぁ。
長男は護衛騎士、長女は筆頭侍女、次女は侍女見習い兼学友で次男は執事見習い勉強中。『お嬢様』の未来の学友を目指して同時に猛勉強中との事。
ちなみに父親の伯爵当主本人は、表向きはお父様に仕えながらも俺の希望を色々と通すべく裏で暗躍され日々奮闘しているらしい。
……伯爵家とも在ろう存在が一家揃ってナニをしてらっしゃるのだろうかね全くッ!?
忠誠心から来るモノだと分かってはいるけれど改めて考えると滅茶滅茶重いんだよコラ!?
「後は……そうねぇ?護衛は教室には踏み込まないからまぁ別として、やはりアドルフ君とアルフリード君がすぐ横に貼り付いて離れないのもやっかみの原因になってるのでしょうね」
「アドルフもアルフリードもわたくしの護衛兼婚約者候補なのですから当然でしょうに」
「そう、当然なのよ。なのにそれに一向に気付かずにひたすら他者を羨み詰る輩が一定数は存在する事を常に忘れない事ね」
ニコリと浮かべた笑顔は可憐なのに口から出る言葉の辛辣さなそのギャップ、素敵ですわお母様。
なので此方も負けじとにっこり微笑んでおく。
にしても兄貴ズを君呼びとはまた新しい……。
背中がムズ痒くなったのは内緒にしておこうね。
その瞬間に、俺の後ろで気配を消して佇んでた二人が同時に身動ぎしたのもついでに無視しとこう。
「イイ男を両脇に従える美貌の伯爵令嬢なんてやっかみの対象でしか無いものねぇ。あわよくば略奪を!なんて目論んでる令嬢も居たりして」
「別に従えてる訳じゃ無いんですが……」
そんなの分かってるわよ、とでもいう風にまた黙ったまま微笑むお母様。しかし略奪云々にはあっても不思議でも無いかな?と同意出来た。我が兄ながらお母様言わくな揃って『イイ男』だもの。
肉食系女子ならば狙いを定める極上獲物だぁな。
…………基本正常嗜好だと信じてるが、判明していないが為に時たま不安になるのはこういう時だ。
知ってる限りでは変な女に引っ掛かる程に野暮でも考えなしでも無いから問題もない筈なのに、意外にも駄目女が好きだったりしたらどうしよう?!とかも思っちゃったりしてしまうし。
一度、勇気を出して本音を確かめるべきかね?
手元でぐだモダしてても精神的にも宜しくないし。
だがいつどのタイミングで聞くべきかが悩ましい。
親しき仲にも礼儀あり、というヤツだろうか?
一部、空気を読まない誰かサマが暴走なさったが俺としては全力で読みたい。普段は甘いけど、そんな人ほど怒らせたら怖い典型ですから、兄貴方は。
「まぁ油断して横からかっ拐われない事ね」
「あり得ませんから大丈夫です」
お母様のからかいに否定の言葉を速攻で返せば、あらあら熱々なのね~と在らぬ誤解を受けてしまったが、訂正すると藪から大蛇が顔を覗かせかねないので黙って笑顔で遣り過ごす。
そりゃ表向きは婚約者兼婿候補だけど、現実問題ただの間に合わせ要員に過ぎないからね、彼らは。
俺とそんな関係になるとは互いに死んでもあり得ない話だし。言わないし言えないケドさぁ。
こうしてお母様との久しぶりのお茶会は一見すれば和やかに終了した。俺個人としてはややモヤな問題も一部に残りはしたものの、焦るも急ぐも必要の無い案件なので先送りの上で記憶からも一時抹消する事に。問題起きたらそん時はそん時!!
まずは100人とは言わないけど友達作ろっと。




