20話、そろそろ人員整理始めてもイイですかねぇ?
アド兄とアルフ兄はざっくばらんに見えて実は秘密主義だったりする。弟の俺すらも個人的嗜好は知らないのがその最たる証拠だろう。まぁ変な趣味は無かったと思うので特に心配はして無いが。
後10年は此方で過ごすのだ。
恋人の一人や二人見つけても良いと思うのだが。
ただ身内といえども言い出しにくい案件なので今回は後日に回す事にした。藪蛇は御免だし。
「ねぇねぇ、二人はどんな娘が好みなの?」
「何ですか?領主サマいきなり」
「俺らの好み聞いてどーすんです?紹介しようったって知り合いなんて居ないでしょーに……」
……うん、領主サマの心臓は鋼で出来ていた。
俺が藪蛇を避けようとした案件を全速力で持ち戻して来ましたよ、この人。凄ぇわ尊敬はせんけど。
「愛だの恋だの浮かれる性格じゃ無ぇしなぁ」
「顔より性格だとは思うけど、コレ!って程の好みは特には無いし惚れてみん事には何とも」
「何せ周辺唯一の恋愛例が極端過ぎて参考にもならないから分からんまんまだわ……」
「確かにそれは言えてる……」
その視線が領主サマから俺へとずれた。
兄貴ズの言う周辺唯一の恋愛例って俺のコト?
「そもそもアレは例に当て填まるのか?」
「一方的に見初めて力ずくで押し通したとしか思えない所業だったもんなぁ……」
「……もしもぉし?人聞きの悪い言い方しないで頂けますかね?!俺が一目惚れして、自分より強い男がイイって言われたから勝っただけだし!?」
「うわぁ~、言い方変わっただけでココまで違うモンになる典型見た気がするなぁ~……」
初めて目にした瞬間に『この人だ!』と思えた。
彼女に理想を聞いたら『自分より強い男』と言われ、剣の腕前には自信が有ったので挑んで勝った。
でも彼女も強いから、決して敗けない様に鍛練を影で倍にしてその後も勝ちは譲りませんでしたよ。
オトコの意地というヤツですな、ハイ。
「“番”って言葉は有るけど人間だと基本的には当て填まらないって言うよね~。でもアル君は良い意味で見つけられたと思うよ~」
「“番”か?って聞かれると俺も首傾げるけどアンリが唯一無二なのは確かだから」
領主サマの言葉にキッパリ答えたらアド兄とアルフ兄に背中を一度ずつ叩かれた。結構強い力だったから実は羨ましいんだろうなと思ったのは秘密だ。
*****
……で、やっぱり話はソコへと戻る訳だ。
「我が家からの通達翌日に速攻でやらかしたのだからその家の御当主もかなりお怒りでね。その子の貴族の籍を生まれた時まで遡って抹消した上に隣国の娼館に高値で売り払うそうよ」
「そりゃまたエゲつない真似を……」
「貴女に止める気が有るなら手を貸すけど……しないみたいね。じゃあもう忘れましょう」
先日のやらかし少女の件の報告書を片手に相変わらず優雅に淑女然としていらっしゃるお母様。
いやもうそんな貴女が好きですよー。
その切り棄て加減はさすが!としか言えません。
自分を敵視する相手に憐れみを掛ける程出来た人間じゃ有りません、俺は。後で謝罪がどうの~とかも聞きはしましたが、ホントに謝る気が有るならばあの騒動の際に幾らでもチャンスが有った筈。
けれども結局は何も言わずにただ震えてたんだから考えていたのは自分の事だけだったのだろう。
一言でも言う意志が有ったなら、俺に視線を向けるなどの動きもしただろうにそれすら無かった。
何せ媚び売る相手に兄貴ズを選んでたんだから。
反省したとしてもおそらくはその場限り、と。
つまりはそーゆー事なんだろう、うん。
「にしても公爵家の後ろ楯を持つ令嬢に喧嘩を売るとは何を考えているのでしょうか?しかも入学してから短期間に次から次へと……」
「伯爵家で同格だからと甘く見たようね。甘やかされて育つと狭い視野のみなお子様が増産されるのかしら?むしろ力関係重視して考慮しなきゃ駄目だと気付かないなんて、ねぇ?」
ころころと、口に手を当てて可愛らしく笑うお母様は下手すりゃ子持ちには見えない可憐さだ。
発言は怖いけど、黙ってたら騙される青年が列を成しそうな勢いかも知れない。惜しいなぁ、も少し若ければ兄貴ズに推したかも……?
「それにしても最初は騒動を起こすななんて言ってしまったけど、むしろ風通しを良くする手段として活用出来てしまうなんて。友人を作りたいと貴女が強く願った事なのに皮肉な結果よね……」
「……そうですわね。ですがそもそも騒動自体、わたくしが“起こす”のでは無くむしろ問題児達によって“起こされて”いるのですから」
…………危な~~!?
余計な事に思考が逸れている間にもお母様の話は続いていたらしい。少しだけ聞きそびれたが、俺の返答に満足そうに頷いたので無問題!!
そーいや学園通いたい表向き理由それだったっけ?
本来の目的も女性探しの筈なんだけどさ。
揃って見つかるのは問題児だけってナニか呪われでもしてるのかね?俺の学園生活って!?




