18話、容赦の欠片もナイですがイイんですかねぇ?
どんな日を送ろうと夜は更けるし朝は来る。
時間ってのは人間にはそう簡単には干渉出来ない代物だからね。正に神の領域というヤツだ。
王都では、昨日学園側で局地的に発生しかけた竜巻にかなり騒然となったそうだ。昨夜の夕食時にも問われたが、改めて朝食の席でもお父様とお母様に心配をされ、作り笑いを貼り付けて大丈夫だから通学すると繰り返す羽目になりました。
アレの原因が俺だとは関係者以外秘密とした。
なので自分を含めて知っているのは四人のみだ。
学園の教師達はフェンリルが原因だと信じきってはいるが、やはり外聞に関わると念押しして口外無用を徹底させたので知られる事は無いだろう。
そして今日も今日とて……。
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「貴女!ちょっ……きゃあ?!何よ!この獣をさっさと退けなさいよねッ!?!」
「ハイハイ、領主サマ。馬鹿を齧っても腹下すだけだから大人しくしてよーねー」
「お嬢様も嬉々として対応しようとしないで下さい。馬鹿の相手は我々に任せて」
両脇からの見事な連携プレーによって領主サマは頸後ろを、俺は腕を取られてアド兄とアルフ兄のそれぞれ背後に庇われた。最近の騒動の数々で護衛が板に着いてしまったと愚痴ってた割には喜んで動いてる様にしか見えないのは俺の気のせい?
馬車を降りた所で『また』絡まれた俺ら。
領主サマが牙を剥き出して威嚇し、俺も相手にしようと一歩前に出た途端の見事な連携。俺は丁寧に扱われたが、領主サマなんて軽くポイっと投げられたせいで鼻を鳴らして猛抗議してますね。宥めようと俺が頭を撫でたら黙った上に尻尾が爆揺れしたが。
にしても何度同じ目に遇えば済むのだろうかね?
いきなり呼び止めようと飛び出し、領主サマに吠えられて怯んで直ぐに、今度は前に出た護衛の兄貴ズを見て顔を赤らめてシナを作り出した少女。
二人に馬鹿呼ばわりされてるけどいいのだろうか?
「……また授業に遅れたくないから手早くね」
「当たり前だろ。領主サマついでにその辺もキッチリ学園には了承させてあるからな」
「騒動の一端を担った者には厳罰をってアレ?」
「そうそう、ただ昨日の今日だからまだ知らない奴も多いだろうけどさ。夕方までに学園に通う子息子女の家には通知が済んでる筈だから……」
一旦言葉を切って馬鹿呼ばわりした少女を見遣るアド兄。その瞳には一切の容赦も無い冷たい光が浮かんでいる。実は俺の敵に対する容赦の無さは領主サマに優るとも劣らないのがこの二人。
髪と瞳は茶色と地味な色ながら整った目鼻立ちに鍛え上げられた体躯をしているそれなりの色男具合。媚びを売ろうと躍起になる同年代も少なくないし、今目の前の馬鹿も態度をコロリと変えていた。
まぁ直ぐに剣呑な視線と殺気を向けられ、挙げ句交わされた会話を聞いて今更ながらに青くなって震えとるケド。うん、もう色々と手遅れだわ~。
「安心しな、深く反省の色を見せれば退学程度で済むだろうよ。その後の進退は保証しないが」
「爵位にもよるだろうけど妥当なトコで金持ちジジイの後妻か修道院かの二択だろうね。あ、家が見棄てて平民堕ちって可能性もアリか?」
「あぁ顔は覚えたから今更逃げても無駄だ。もうこのまま家に帰って大人しく沙汰を待つんだな。逃げたら……まぁ知った事でも無いか別に」
「よし、片付いた。行こ、アンリ」
アルフ兄に手を差し出されてエスコートされる。
結局、俺が口を挟む余地は全く無かったですね。
アド兄にも促されたので甘える事にしました。
視線と殺気で震えながらへたりこんだ少女にトドメとばかりに今後についてを語り、そのまま迂回して道の端を三人+一匹で歩き出す。かなり距離を空けたのは縋られるのを避ける為だろうか。
ちらりと後ろを見ようとしたら、軽く手を握られて引っ張られたので前を向いたままにした。
余程腹に据えかねているのだろう。普通ならある程度は配慮するアド兄すら俺の背に手を当てて背後を見ないように促してるんだからさ。
「容赦無さ過ぎじゃね?お兄様方……」
「見せしめとして丁度良かろ?ここ来る度に絡まれるのはもうさすがに遠慮してぇし」
「それにさあの女、前からお前を睨んでたから注意は向けてた。どうやら俺ら狙いも有ったみたいだとさっき判明したけど死んでも御免だし」
……あーまぁ分からんでも無いが。
別に兄貴ズは女性不信でも同性愛者でも無い。
容姿など外側で判断する愚か者でも勿論無い。
ただ、脳の代わりに花畑や生クリームが入った人間モドキと恋愛する気は無いというだけの話だ。
それに俺至上主義だから優先順位が低いのもある。
そのせいで前回の人生では生涯独身だったからね。
今度はまだマシな時代に生まれたんだから弟としては兄貴方に恋愛の一つや二つはして欲しいのだが、その眼鏡に叶う異性が現れるかはまた別問題なのでこればかりは俺すら如何ともし難い。
あーあ、どっかに可愛くて心の広いお年頃な女の子落ちてないかなー。通知お待ちしてまーす♪




