17話、チョイ天災引き起こしてもイイですかねぇ?
『ちょ……ッ!何でか外に竜巻が出来かけてるからヤメてぇ!?アルくぅん!!』
「アル……お前なぁ……」
「姫が居ないんだから控えろよ……」
「何だ!?建物が揺れてるぞッ!!」
「地震か?!だが……ぅえええっ?!?」
…………うわぁ……ゴメンなさいぃ……。
カタカタと音がするなぁ?と思ってたら、やたらと窓が鳴っててふと見遣れば外がかなり暗くなっていた。領主サマが器用にも念話で叫びながら吠え、室内に居た他の人間達も立ち上がって右往左往を始めて……そして直後にホントに建物が一瞬揺れた。
兄貴ズは慣れているせいかさすがに小さな溜め息とボヤきで済ませてくれたが、原因な俺としては無表情を気取って内心で平謝りするしかない……。
俺は風の属性が強いって話はしてたよね?
で、魔力も元からかなり多くてこの世界でならダントツで有るとも。そのせいか制御が少し甘くなると災害級の風を生み出すみたいだね。普段だと奥さん側に居れば全然平気なんだけど。
でもさすがに其処までは無理みたいだから自分で制御しなきゃなんない、うわぁ面倒臭っ!!
うんまぁ出来るけど滅茶苦茶面倒臭っっ!!
だって常に心を平らかにしなきゃなんないからさ。
お嬢様って10歳なんだよねー。
でアンリは15歳なんだよねー。
中身は親父だけど、それでもたまに身体年齢に精神が引き摺られちまう事が有るんですよ、マジで。
過去にもあったから知ってはいたけど忘れてた。
孫居たジジィだろうと子持ち三十路オヤジだろうと、それでも時々感情がお子様になる事もあるのだと心に刻まねばならない、と……。
*****
「な、何だったのでしょう?一体……」
「さぁ?もしや理解の悪い者に対する聖獣様の怒りが形になったのやも知れませんねぇ」
「あぁ、自らの力をお見せして安心させようと?」
「だとすれば大成功と言っても宜しいかと」
シレっと原因を領主サマに速やかに被せる兄貴ズ。
交互に言葉のみ丁寧な棒読み説明ですけど。
え?僕ぅ?!とばかりに、まるで不審者の如くあちこちを見回して慌てている領主サマ。犬姿だから余計に面白可笑しく見えるよね、コレって。
まぁ周囲はそれ所じゃないのか気付いても無いが。
室内に居た、俺と兄貴ズと領主サマを除く全員が窓に押し寄せて呆然と外を凝視中だったから。
その間にアド兄が未だに慌てふためく領主サマの頭を背後から叩いて大人しくさせていた、さすがー。
ようやく騒ぎから立ち直り振り向いた大人達は皆一様に顔に恐怖を貼り付けて、お座りお澄まし顔をした領主サマを眺めてる。どうやら兄貴ズの誤魔化しの言葉を信じてしまったらしい。本気か?!
にしても温度差が酷いね。
片や椅子に座ったまま無表情な俺と、背後に護衛役として立つ兄貴ズも無表情で、椅子の真横でお澄まし顔をするフェンリルの領主サマ。逆に、一緒に居た学園関係者の方々は見るも無惨に慌てふためいて醜態を晒す有り様。その対比度の落差よ……。
「こ、これほど迄のお力を……?」
「あくまでも『万が一』でしか発揮なされないでしょう。お嬢様がお健やかにお過ごしになられる為の尽力さえ成されればそれだけで」
……うん、アド兄酷いッ!?
説明に託つけて俺に当て擦りしてますねっ?!
言い換えれば、『お嬢様=俺が怒らなければあんな天災モドキは起きませんよ』って事だもの。
そりゃ間違っちゃナイけど然り気に酷いわぁ!!
俺だってそう簡単に揺るぐつもりは無い。
さっきのはどちらかと言えば、あまりにも無理解に屁理屈捏ねる大人にちょっとイラっとしただけで普段から竜巻出す真似なんてしないもん!!
今までだって出して無いんだからあぁあ!!
過去に巻き添え喰わせた経験値からか身内の付き合い長さの余裕からか、兄貴ズは慌てふためく周囲からは一線を画していて成人直後の少年の胆の座りようでは無いと後日かなり評判になったそう。
………ただの慣れです、とは言えませんでしたね。
まぁ俺としても危険人物扱いされるのは御免被るので黙って共犯者となりました。それに下手に手を出せば天災級の報復が当人に降り掛かる、との噂を蒔けば無用な過度の接触も控えるだろうし。
本日の目的は取り敢えず達成されたので帰ります。
いや、だから『使役獣を連れ歩く件』ですよ?!
*****
「本来の目的からの逸脱が激しい……」
「例の婿候補への宛がい要員の選別だっけか?」
「学園に通い始めてまだ半月程度だってぇのに何でここまで要らん騒動が多いんだ?」
「まぁアル君だからぁ~……」
「「確かにそうかもな……」」
学園から戻った我が家の俺の部屋、別名『要・関係者以外立入禁止時間必然部屋』。命名誰ッ?!
グッテリとソファーに身を沈めて嘆く面々。
愚痴が山と飛び出すのは仕方ないかもだが、少なくとも領主サマのは理由ですら無いと思うの。
嘆きたいのは俺だって一緒なんだしさぁ……。
だからアド兄もアルフ兄も納得せんといて!?




