11話、閑話・独り言呟いてもイイですかねぇ?
ちょっと遣り過ぎじゃね?
……とは口に出しては絶対言わない。いや言えやしない。言ったらその牙は必ず此方に向く。
どうして彼方でも此方でも魔力を感じる事の出来る者が少ないのだろうか?崇高で輝かしく、けれども荒ぶる雄々しい魔力を身近に感じながら毎度の如く俺はそう疑問を抱いてしまう。
神も残酷だよな……。
俺にとって最も大切な血の繋がりを持つ『弟』。
だがその雄々しい魂と魔力からは想像も付かない程に可愛らしい見目を持つ『彼』は、常にその外見に振り回されて悩みながら生きて来た。
その魂に見合った容姿になっていれば此処まで色々とややこしい事態にはならなかっただろうに、と。そう俺が思う事も再三だった。
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一度は死んだ筈なのに、世界の危機を救えだの導けだのと向こうの一点張りで引き戻され、目処が立ち始めた矢先に今度は別の世界に召喚され、と。
……変な呪いにでもかかってんのかね?!
最近は特に他人の尻拭いに駆り出されてるもの。
笑うに笑えない弟の現状に唖然としつつも、再び記憶を宿して巡り会えた事に感謝しつつ過ごして来たある日、突然弟の気配が消え失せた。
まさか、こんな異世界にまで引き抜きされるとは俺らも思いもしなかったけど……。
気配はおろか魔力さえ感じられない。
必死に捜した俺らに届いたのは、俺らの世界の神からもたらされた驚くべき内容のモノだった。
「“容姿を見込まれて”連れて行かれたぁ?!」
「何なの?!意味分かんないんだけどっ!?」
「うん、全くの同感……」
俺と『彼』の兄アドルフや領主サマがその内容に絶叫していたが俺としても全力で同意する。
見込まれたのが実力じゃなくて容姿なのか!?
まず一番に思ったのがそれだったのは当たり前。
だからこそ領主サマの言う通り意味不明の内容になったんだからね、俺らにとっては特に。
「えっと、『魔力も含めて見込まれたそうだから安心しろ』……って出来るかあっ!!」
「だよな、むしろ不安しか無い……」
「手に届く範囲に居れば少しは助けられるけど」
俺らへ情報をもたらした神は弟がお気に入り。
なのでこの際だからと力を貸して貰って異世界へ。
アチラさんにはかなり渋られたそうだが、『彼』を一人で放置したら世界を滅ぼすかもよと知る限りの現実を助言したら一転して快く引き受けたそうな。
……一体ナニを彼の神は言ったのやら?
正に万人が惹かれる見た目とは裏腹な弟。
俺らが色々な理に反して再び生を得たのだってもしかしたら世界その物の意志かも知れない。
そう思う程度には苛烈なのよ、あの子は実は。
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そうして待たされようやっと向かった先で再会した『弟』は、正真正銘の『妹』になっていました。
…………うん、三人で並んで絶叫しましたよ。
ホントのホントに意味不明ーーッ!!てね。
しかもなりたくもないモノにさせられてこれまたかなりなご機嫌ナナメ具合。漏れ出る魔力が殺気に変換されてるのに誰も気付かないのには驚いたが、あんなモンを見せられれば正気を保つのも難しかろうから逆に良かったかも知れない。
俺らですら近寄るの躊躇う程度には凄かったし。
まぁ俺らが来てから少しは落ち着き……いや、別の意味でおいコラ!と叫びたくなる動きを始めた。
コイツの息子の嫁の自重が家出してアチコチでやらかして息子の頭痛が増したとやら現象。その悪夢を充分に存分に完全再現してると思うぞ?お前。
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王族の婚約者なのに同時に筆頭公爵家の一人娘。
その歪さを解消する為に公爵家としての婿が必要なのだとか。……うん、頭腐ってるな?!
そしてだからって俺らを捲き込むな!弟!?
そりゃ死んでも世界で一人になってもお前に欲情する事の皆無な安全牌だけどさ、俺もアド兄も。
気付いたら伯爵家の養子でお前の婿候補で、ついでに護衛に選ばれて同じ家で寝起き出来る立場でと。
……相も変わらず遣り手だなぁ。
俺らと一緒に来たもう一人の保護者、領主サマの辣腕ぶりを引き継いで遺憾なく発揮している。
だからって腹黒まで継承せんでも宜しいんだが?
まぁもうあらゆる意味で手遅れだから諦めるか。
ただ一人だけ両親(仮)に決められた婿候補。
ソイツを排除せんが為にと謀略を練って自ら画策を講じた様だが、兄として一言もの申せば弟は更なる泥沼に足を突っ込んでる気がしてならない。
念のためにとアド兄に確認したら見抜いてはいた。
けどどうせ言っても止まらないのだから、せめて俺らで身近で頑張って未然に防ぐしか無いだろうとの達観返答を貰ったのには頭を抱えたが。
さすがは兄、弟を良く理解してらっしゃる事で。
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そして今がその時なんだろうけど……。
変な女が乱入して来た校門前で、けれども自身で解決する気満々の弟は既に戦闘態勢に入ってる。
止めるべきなのかも知れないが手遅れだろうか?
まぁイイや。
取り敢えず様子見する事にしよう、この際だし。
怖いからってのももちろん有るけど……。




