38話、狼種ですが犬科扱いでイイですかね?
行動制限。
他人はもちろん、身内であっても本来なら難しく受け入れ辛いモノだろう。そう本来ならば。
「受け入れるとは思ってたよ」
「うん、俺もそれは思ってた。でもさ……」
「「まさか無条件でとは思わんかった」」
さすがの兄貴ズも項垂れている。
一緒に俺も項垂れたい。
そう、“無条件”な所はさすがに予想外だった。
普通ならば大なり小なり不安を抱くなり不満が出るなりする案件だろうに“無条件”とは……。
昔からそうだった。
俺の望む事はどんな些細な事でさえ領主サマは全力で叶えようとする。それこそ自身のコネと頭脳をフル活用してまで。周囲の反対や不平不満などモノともせずにそして大体の事は全力で叶える。
いつも微笑むその緩さに騙される者が殆ど。
けれどもその内面に結構苛烈な本質を抱える領主サマの腹の中はそれこそ漆黒。侮る相手は彼の見た目からは想像出来ない程に叩き潰された。
『泣いた者の数は知るだけで軽く三桁を超える』。
俺らのかつて生きた時代背景が戦国だった事も相まって、知略謀略をまるで息継ぎの如く扱っていたのが領主サマだ。激怒しててもほぼ顔色も表情も変わらず、ただ潰す“作業”に淡々と勤しむ。
知る者は誰も近付けなくなる、それが領主サマ。
知らぬ者はただ首を傾げるのみだが……。
*****
「くぅくぅぅん?!(アル君酷くない?!)』
『俺はちゃんと聞いたも~ん。了解したのは領主サマだも~ん。酷くないも~ん』
俺と同じ色の瞳を潤めて此方を見上げる一匹の犬。
体毛も瞳と同じ色、身体の大きさは最初に来訪した時分よりもやや大きめで髪と同質なふわふわで長め、まさにゴールデンレトリーバー。
金色の瞳をうるりとさせ、しっとりした黒い鼻を突き出して念話で抗議して来るのを明後日の方向を見ながらあしらう。嘘は言ってないしね。
外出する俺の傍らに在る際にはこの姿にする。
それが俺の決めた領主サマの『行動制限』だ。
尚、屋敷内は原則元のままだし外であっても俺の居ない場所でならば本来の姿に戻れる。
これでもかなり緩めな設定にはしてあるのだ。
お母様が“看過”で鑑定した所、種別が何故か犬では無くフェンリルとなっていた、解せぬ。
確かに犬もフェンリルも狼種だけど……?
見なかった事にしてこれからも駄犬扱いでイイか。
この世界にも魔力による契約は存在するが、此方は少々特殊な契約の為神殿は介さなかった。
何せ血の繋がりが濃く、魔力が同質に近い者同士でかつ魔力量が豊かでなければ成立しない代物。
方程式もこの世界とは異なるモノの様だしね。
今はその効果を確かめるべく屋敷の敷地外へと護衛侍女付きでやって来たトコ。まぁ馬車で門から出た途端に姿が変わったから危うく外出の意味ゼロになる所だった。それでは嫌だったので我が儘兼ねてちょっとだけ遠出して郊外の森まで来たけど。
この場所は王家の所有地に程近いから一般人はまず立ち寄らない。貴族でも近寄る者は稀だ。
運が悪くなければ誰とも会わずに済む。なのである意味絶好な散歩コースでもあったりする。
しかしその姿は居るだけでも癒しになる様だ。
俺や護衛の兄貴ズは苦笑で済ませたが、同行したシュリなど手をワキワキさせて目を輝かせて撫でさせて欲しいと全身で訴えている有り様。
もちろん希望はきっちり叶えてあげた。
お腹の毛までモフられた領主サマがもぅお嫁に行けない……などと泣いていたがきっちり流したし。
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ちなみにだが後日、お父様がチラチラと領主サマを代理に仕立てて仕事をサボっていた事実が判明し、笑顔なのに背景が永久凍土なお母様に何故か領主サマも一緒にコッテリと絞られていたのは余談だ。




