23.リントン男爵家
あれから、少し時間をかけて落ち着きを取り戻したエレナ様は、アレクシス様へ今までの不敬な態度の謝罪と。
「父は、私にアレクシス殿下の婚約者に選ばれるように、と言いつけました。それだけならまだしも、魔力制御装置を見えない所につけられ、火傷をさせられて、マリアンナ様の仕業だと騒げ、と。……今考えてみれば、父も誰かから命令されている風な言い回しだったように思います」
エレナ様の火傷自体が嘘だったのだと思っていたが、なんと火傷は本物だったらしい。
制御装置よりエレナ様の力が優って、学内夜会の頃には治っていたとはいえ、騒ぎの直後にアレクシス様や他の人に自己治癒が進まないところを見せ、信憑性を持たせる為だけに実の娘に火傷をさせるなんて……。その日のうちに治るから良いってものじゃない。熱くて痛いことには変わりないのに。
そして、エレナ様は、アレクシス様と私に関することを白状したことをきっかけに、今までひた隠しにして男爵に従ってきた全てを話した。
「……父は私に、お金のある貴族や商人たちを家に招いて、私に治療させたり、治癒魔石を作らせて、高い報酬を得ているみたいです……たぶん、国の許可、みたいなものは、取っていないと思います……。どういう伝手で依頼が来ているのかは知らないのですが、元々リントン男爵家は、細々と小さい領地の経営だけで成り立っていた家系らしいので、父の伝手だけではできない事なのではないのかと思います……」
エレナ様は、未熟ではあるものの、こう見えて国随一の治癒魔法の使い手になるべき、国の重要人物だ。
その彼女を、許可なく、喫緊した状況でもないのに、報酬目的で治療に当たらせるなどあってはならないことだ。そもそも、彼女は学生の身分である。色持ちと言えど、学園を卒業し、治癒魔法師試験を受けない限り、正式な治癒魔法師の監督下でしか、基本的に他者に治癒を行ってはならないはず。
この事実が判明した以上、彼女を庇護するに不適当な男爵の元へ帰す訳にもいかないので、一旦王城預かりとなった。一旦、王城に色持ち大集合。
全てを話し終えたエレナ様は、マイク様と近衛騎士に守られながら、城へ連れられて行った。
「……あ、マリアンナ様、念のため伝えておきますが……今日のこの首飾りははもちろん父が勝手に用意したものですし、模擬店のブレスレットは、もちろん私が自分で買い求めたものです」
最後に、私にだけ聞こえるように、傍まで来て小さな声でそう告げて。
さっきまで、幼子のように泣いていたのに、なんて察しの良い子なんでしょう……。
お読みいただきありがとうございます。
今回の分ですが、一話にまとめると少々長ったらしく、二日に分けると納まりが悪いように感じたので、分けて二話連続投稿にします。
後ほど、もう一話投稿します。




