異世界に…来ちゃった?!
思いついた勢いではじめてしまいました。更新は遅くなってしまうと思われます。ご了承ください。
え、なにこれ?異世界転生?異世界転移?よくわかんないけど…
「ここどこー?!?!?!?!」
*****
それはいつも通りの日だった。
早くに両親が亡くなり、母の姉に引き取られた私は、いとこである2個上の双子+同い年の女の子に日々いびられていた。まあちょっとしたことだったし、かわいいいじめ方だったと思うけど、私はへこたれなかった。
むしろきつかったのは、叔母から家事を押し付けられて時間がない上に、高校は特待生で学費免除のところにしか行かせないと言われたことだった。でもさ、絶対に中卒は嫌だよね?!今の時代で中卒なんかどこも雇ってくれるところはないだろうし。
ということで、押し付けられた家事をしながらあいまあいまに必死に勉強して、特待生の授業料免除で高校に入学した。叔母さんはちょっと悔しそうな顔をしてたけど、知らない。私が頑張った結果だ!
そして、次は大学入学についてで…今回も授業料免除のため必死に勉強して、ついにもぎ取った!結構倍率高かったし、怖いなぁと思っていたけど、無事に受かってホッとした。
…そんな矢先。
「珠里ちゃん、今日バイト?」
「ん?違うよ。今日は特にバイトない。なにかあった?」
高校に入学してできた、唯一といってもいい友達である亜衣。今日はもう高校卒業間近で、授業は午前中しかない。しかも今日は義母は友達と旅行に行ってるし、いとこも昼食も夕食も珍しく誰もいらないと言っている日だった。しかもバイトもない。
「あ、本当?なら今日お昼ご飯一緒に食べない?」
「うん!いいよ」
そう言えば、嬉しそうに笑った亜衣。ふふふと笑う仕草は女の子っぽくてすっごくかわいい。正直つらいこともたくさんあったけど、高校3年間頑張って来れたのは、亜衣のおかげだったと思う。しかも大学もたまたま一緒だし、学部は違うけれどおひるご飯は一緒に食べれるだろう。
「もう高校3年間終わっちゃうね~本当にあっという間だった。珠里ちゃんに出会えたおかげかな?」
「私も亜衣に出会えたからすごく楽しかったよ」
「ふふふ、大学も楽しみだね」
「だね」
そんな会話をしながら亜衣が最近見つけたらしいおしゃれなカフェに向かう。高校の正門から出て駅とは逆の方に向かって歩く。
強く風が吹く――
『見つけたぞ』
「え、」
「え?珠里ちゃんどうした?」
「、いや、なんでもないよ」
ずっと亜衣と二人で話してたはずなのに、いつのまにか一瞬意識が飛んでいた。その時に聞こえた声。亜衣は聞こえていないみたいだし、空耳だろうと流す。誰か他の人が話していたのが急に聞こえただけだろう。
ふと隣でニコニコ笑いながら私に話しかけている亜衣の方を見た瞬間、視界の端に大きなトラックが来ているのが見えた。
「待って!危ないよ!!!」
その時、すぐ近くで男の子の声が聞こえた。その声につられるようにそちらの方を見る――
迫りくるトラックと、小3くらいの女の子、その後ろには女の子によく似た弟らしき男の子が走っていて。女の子が飛び出す先にトラックがいると気づいた瞬間。
「、珠里ちゃんっ?!」
もう考えている暇なんてなかった。体が反射的に動いていた。手に持っていたスクールバッグを投げ捨てて、走る。
もう目の前に女の子がいた。私よりもずっとずっと小さいその体をぎゅっと抱き上げて、歩道の方に押し出す。キーッとトラックのブレーキ音が耳につく。
ドンッと体に衝撃が走る。自分の体が宙に浮くのが分かった。すべてがスローモーションに見える。
ふっと亜衣の方へ顔を向ければ、目を見開いて呆然と私を見ていて。あぁ一緒に大学に通えないかもなぁとぼんやり思った。せっかく初めての友達ができて、大学も一緒で、楽しい生活を送れるかもしれないと思ったのに。
ガンッと体が地面にたたきつけられた。全身が沸騰したように熱くなる。温かい液体が私の体を包み込む。
「珠里ちゃんっ?!珠里ちゃん!なんでっ…!」
じわじわと小さくなっていく視界の中で、真っ赤な血が付いている私の手を握って泣いてくれている亜衣が見える。涙が私の頬に落ちて、首筋の方に流れていった。
「亜衣…ご、めん…」
亜衣に聞こえていたのだろうか。自分でも声が出ていたのかわからない。最後に見えたのは、くしゃりと顔を歪めて泣く亜衣の顔だった。
*****
チュンチュンと鳥の鳴く声がする。小さく目を開ければ、ざわざわと風に吹かれている大きな木が見えた
。その木々の葉っぱの隙間から太陽の光が漏れて私の目にあたって眩しいなぁとも思って――
「どこここー?!?!?!?!」
バッと体を起こして辺りを見渡せば、ただ誰もいない森が広がっていた。
え、あれ?私死んだんじゃなかった?たしか亜衣と一緒にご飯食べに行く途中で、女の子を助けようとしてトラックにはねられて…え、てか怪我は?
怪我を確かめるために自分の体を見下ろすと…
「、え…」
さっきまでというか、記憶がある最後の時に着ていた高校の制服を着ていたんだけど…
「何これ…なんか私小さくなってる…?」
私が通っていた高校の制服はブレザーだったからシャツを着てるんだけど、それがちょうどワンピースとして着れるくらいの大きさになっている。だから保育園の年長さんから小学校一年生くらいの歳だと思う。髪の毛を触ってみれば、腰くらいの長さだった黒髪は金髪のふわふわショートになっていた。手もちょっとふにふにして柔らかい小さなおててになっている。
呆然と自分の手を見つめていれば、近くでぱきぱきと小枝を踏みつけるような音が聞こえた。
え…何かが近づいてる???
ここがどこかわからない今、この森?に何が住んでいるのかなんてわからない。もしかしたら人を食べてしまうような肉食の生き物だっているかもしれない。とりあえず、逃げないと。
今、私の周りには何もないから、きょろきょろと見渡して見つけた一番大きな木にひとまず逃げようと立ち上がる。
「わっ!」
でも、その瞬間自分が着ている制服に足を取られて転んだ。体が小さくなっているせいでスカートが脱げて足に絡まっていたらしい。そのスカートを一旦脱いで片手に持つ。歩きにくい落ち葉の中をあんまり音をたてないように進む。そうして大きな木の根元まで来た。見たことがないくらい大きなその木の根元にあるくぼみに座る。
これからどうすればいいんだろう…ここがどこなのかも自分がどうなっているのかもわからない。
そう考えると、すごくすごく心細くなって、涙がじんわりと目に浮かぶ。ぎゅっとスカートを抱きしめて体を丸めた。動くのも怖いし、もうすぐ夜になりそうだからもう今日は動かない方がいい。そう判断して木の根元で身を隠すように丸まっていると、瞼がだんだん重くなってきた。寝てはいけないとはわかっているけど、小さくなった体に引っ張られているのか眠気が抑えられない。自分の体から力が抜けていくのがわかる。
「ねたら…だめ…」
わかっているのに逆らえなくて。気が付いたら眠ってしまっていた。