夏の終わり。
なろうでは、短編しか出していませんでしたが、短編をいくつも繋げた連載小説を書きたいと思います。
夏が、終わろうとしていた。
なんだか、少し悲しい気分だった。
季節の変わり目は憂鬱になる。
夏とのしばしの別れ。
でも、それは今まで生きてきた「過去」がどこか遠くに行ってしまうような。
天気は、快晴だった。
快晴の日よりも、雲が少しある晴れの方が好きだ。
快晴の時は、どこまでも青い空が壁のように自分に迫ってきているようで。
自分が、責められているようで。
すれ違う人々は、皆忙しそうに小走りで駆けて行く。
何かに追われていても、きっと辿り着く場所があるから、疲れていられるんだ。
疲れることは嫌いだ。
社会が押し付けてくる「理想」を体現しているようで。
独りは、好きだ。
一人は、嫌いだ。
なりたい「自分」はいる。
なりたい「誰か」はいない。
見たくもないのに、目を逸らせないほど透明な過去。
見たいのに、何をしても見えない不透明な未来。
何かに憧れることは悪いことだろうか。
誰かを待ち続けるのは悪いことだろうか。
過去を捨てきれないのは悪いことだろうか。
いつも、答えを教えてくれた君は。
もう、いない。
セミが名残惜しそうに鳴いていた。
あの日も、セミはこんな風に鳴いていた。
夏が、終わろうとしていた。
なんだか、少し悲しい気分だった。